3次元別館。

主に観劇の感想です。2.5舞台が多めでその他のミュージカルやストレートプレイも。

【観劇記録】7/6 舞台「紅葉鬼」

 

  • 2.5次元含む舞台好き、かつ原作ファンの感想です
  • ストーリーなど多少のネタバレあり

 

この『紅葉鬼』は通常の2.5舞台とは少し違っており、『抱かれたい男1位に脅されています。』(以下、だかいち)というBLマンガの「登場人物が出演する舞台作品」が原作となっています*1。コミックスで出てきた時、面白そうだからこれだけ別にマンガ化しないかなー、などと思っていたら、まさかの舞台化。舞台上でお姿を拝見したことのある役者さんが何名か出演しているのもあって興味を惹かれつつも、迷ってるうちに気づいたらチケット発売日を過ぎてしまい……。今からじゃ取れないよなーと諦めてたら当日引換券があるということだったので、ゲットして観劇して参りました。

ちなみにこちらが原作のコミックス。自分は未視聴ですが、アニメ化もされてます。

 

抱かれたい男1位に脅されています。 (ビーボーイコミックスデラックス) (ビーボーイコミックスDX)

メイン2人だけでなく脇キャラも立っており、芸能界モノとしても面白いんだけど、かなりしっかりBがLしてるので苦手な方はご注意。

※紅葉鬼は作中作なので、BLではないです

 

だかいちの作中で描かれる紅葉鬼の内容は、稽古場でのワンシーンとビジュアル撮影風景、カテコの様子くらい*2で、コミックスを読んだだけではストーリーの全容はわからず*3、登場人物もキービジュアルの経若(つねわか)と繁貞以外は不明という状態。なので、2.5次元舞台というよりオリジナルの作品を観ている感覚でした。

クラブeXは今回初めて訪れた劇場(?)で、奥に小さめのステージがあり、そこから少し低くなった所に円形の大きめのステージが広がっている、という構造でした。観劇した席は注釈付で上手側のかなり端、奥のステージ寄りのブロック。場面によっては後ろ姿しか見えないなんてこともあったんですが、ほぼ360度から見られることが前提になっており、逆に正面からではわからない部分を見ることができたりもしたので、それ程気にならなかった。むしろ、前から3列目以内で舞台との距離がとても近く、役者さんの細かい表情がオペラ無しでも余裕で見えたので、注釈付でこの場所ならかなり良いんでは?というくらいでした。ただ、席によっては前の人の頭でステージのほとんどが遮られてしまった、ということもあったらしいです。注釈付ではない席の話のようで、流石にそれは何とかならなかったんだろうか……。

ストーリーはぶっちゃけ割とよくある話で、どこかで見たような設定のキャラクターが多かったのは否めないです。鬼と人間の対立がある中で、人間として育てられているけど実は鬼と人のダブルとか、我が子と引き裂かれ、愛する人に裏切られて怨霊化した鬼女とか、帝を意のままに操る陰陽師(黒幕)とか、血の気の多いオネエ言葉の鬼とか、長年オタクやってればどこかしらで目にしてるよね*4……。話自体はすっきりとまとまっているし、見せ方が工夫されていて飽きることはなかったけど「誰がどの時点でその事を知ったのか」がわかりづらかったり、含みを持たせていると思われた事が単に言葉通りの意味でしかなかったりと、首を傾げてしまう点はちょいちょいあった。

それらを補って余りあったのが、迫力のある殺陣と巧みな演出、役者さんたちの演技でした。

殺陣は薄ミュや刀ステ並に多い上に速さと勢いもあり、広いとは言えない舞台をいっぱいまで使いつつ複数名入り乱れての乱戦もあったりして、見応え十分。オーソドックスな刀の他に、槍、三日月のような形の湾刀、更に素手や呪術で戦う場面があるなど、バリエーションも様々だった。演出も工夫が凝らされており、客席通路にあたる場所を普通の通路並に出入りに使ったり、暗転を効果的に使用して舞台上にいきなり人が現れたように見せたりと、大掛かりな装置やセットがなくてもこれだけ色々なことができるんだなあと感心しきりでした。

役者さんはアンサンブルも含めどの方も身体能力抜群。特に準主役*5の繁貞の殺陣は速さと大きさのあるもので、人間でいる時も見事でしたが、鬼として覚醒してからのそれは更に力を増していて驚くしかなかった。後で確認したら、ハイステで白鳥沢チームのメンバーを演じてた人なのね。道理で。

今回の舞台で主役になっている経若は、作中作では準主役なので、だかいちの主人公が「経若を演じる俳優の、西條高人」だということに合わせてるのかな*6。人間の身でありながら鬼として育てられている関係上、辛いことも多く、複雑な感情が渦巻いているのを抑え目の演技で表されておりました。二幕の衣装もそこはかとなく色っぽくて◎。そして、すごく思ったのが「舞台にいるのは経若を演じている高人」だということ。俳優としての場面は全く出てこないのに、「高人さん」が確かに存在していた。ただ『紅葉鬼』を舞台化するだけでなく、だかいちという作品の一部であるということがちゃんと踏まえられていて、実際に演じている俳優さん(陣内さん)の力量を感じました。

てか繁貞があんなに真っ直ぐでいい奴だなんて思ってなかったよ!作中で繁貞を演じている俳優、綾木はいわゆる当て馬ポジションで、役者としてのセンスはあるものの、裏では結構ゲスい奴なのでね……。とは言え、「初舞台で主演に抜擢された俳優」であることを裏付けるだけの華々しい存在感はちゃんとあった。表に出る時は裏の顔は当然封印してくるだろうし。

あと、「どこかで見たような設定のキャラクター」なんて書いちゃったけどさ、帝を陰で操る陰陽師こと摩爬(するは)、すごく良かった!登場しただけでどことなく不穏な気配を漂わせながら、帝の忠臣かつ陰で実権を握る者として台詞回しや立ち居振る舞いに整然とした美しさがあり、出てくる度にわくわくしてました。派手な出で立ちで血の気の多いオネエ言葉の鬼、すなわち伊賀も嫌いな訳ないし!湾刀の二刀流が力強く豪快で、良いギャップがあった。

それから、怪力少女で経若に憧れる子鬼のおまんが可愛くてね……。カテコの挨拶がこの子だったんですが、まだ9歳という事にも驚きなのに、見事なボケまでかましてくれて恐ろしい子!経若の育ての親で、繁貞の実の母である鬼女の呉葉も、どこかあどけなさを残しつつ美しかったです。

先程もちらっと書いたように「ただ作中作を舞台化しただけではない」ということは、劇場の外でも随所に現れていました。パンフレットの表紙がコミックス作者(桜日梯子さん)の描き下ろしイラストなのって、昨今ではかなり珍しいんじゃないかな*7?表紙をめくった裏側のイラストも思い切り笑ったし。だかいちが割とこういうテイストだからね!普通のパンフレットとしての情報はきちんと押さえつつ、マンガのファンに嬉しいコーナーが表紙以外にもありました。ランダムブロマイドもメイン二人だけとは言え、役としてのそれと、役者、すなわち高人と綾木としてのオフショットの両方が用意されてるし、アクスタなどのグッズが表紙とは別の描き下ろしイラストだったり、劇場ロビーの窓際に、登場人物のイラストがピンで描かれた色紙が全員分飾られていたり。ランブロは3枚購入したら、綾木稽古場ショット、摩爬、経若(足チラ)&繁貞のが来てくれた。わーい。

極めつけはロビーのスタンド花。原作者さんからの他に、高人のお相手*8である東谷准太からのものがしれっと……チュン太、抜かりないな!と、現物を目の当たりにして笑いを堪えられなかった(訳:ありがとうございます)。

何だかんだ言いつつ、こういった形での舞台化もなかなか楽しいものですね。

*1:ガラスの仮面紅天女的な

*2:アニメでは他にもっとあるのかも

*3:原作者さんのTwitterであらすじが公開されてはいる

*4:近いところだと、春に紅葉ならぬ桜の鬼の話を観たばっかりです

*5:原作中の『紅葉鬼』では主人公

*6:書いてて非常にややこしい…

*7:私が知らないだけだったらすみません…

*8:そちら界隈で言うところの左側の人

【観劇記録】6/15 ミュージカル『エリザベート』

 

  • 帝国劇場2019年版の感想です

10代の頃に宝塚版を観劇して以来、ずっと魅せられ続けている作品です。帝劇版は初演と2009年版、2015年版を観ていて、今回で4度目の観劇。この日のキャストは写真の方々でした。

 

f:id:raimu_sakura:20190616224049j:image

 

以下、だいたいキャストごとに。

愛希さんの宝塚退団時のエリザはチケットが取れずライブビューイングだったので、今回やっとリアルで拝見できて感無量。愛希シシィは、逃れることの叶わない場所で悩み苦しみながら、懸命に生きようとした等身大の女性でした。1幕ラスト、真っ白なドレスでフランツの前に現れる場面では、いつもなら美しさと堂々としたたたずまいにため息がこぼれてしまいそうになるんだけど、このシシィは観ていて辛くなってしまった。もちろん美しくはあるんだけれど、その表情は苦渋や諦めを抱えながら必死で矜持を保っているようで、あの登場時の天真爛漫な少女だったシシィはもうどこにもいないんだと思うと悲しかったです。昨年の宝塚版では、というより、今まで見たことのあるどのバージョンでもそんな風に感じたことはなかったので、びっくりした。2幕冒頭の「私が踊るとき」ではトート相手に勝ち誇った表情を見せるんだけれど、続く精神病院慰問では「耐えられず狂いそうになる」と苦しい胸の内を吐露する。そして夫に裏切られて旅に出る頃には笑顔は完全に失われて、ハイネの碑の傍らでやっと安らいだ表情を見せたりと、場面が進むごとに辛さが募るばかり。「キッチュ」で「シシィはものすごいエゴイスト」って歌われてたり、精神病院で自らを皇妃エリザベートだと思い込んでいる少女に対して「跪くのはあなたよ」と窘めるような(観客からするとぎょっとする)台詞があったりするのも、そんな風にならなければ生きていけなかったんだろう、って考えるとすんなりと腑に落ちた。歌は総じて安定していて、危うさはなかったかと。花總さん演じるシシィの高貴さ、気高さが大好きなんですが、愛希さんもまったく異なる魅力のシシィを見せてくれて、これからのご活躍が更に楽しみになりました。

ついに来た!感のあった古川トートは、ポスタービジュアルからもそうなのはわかってたけど実際に舞台で観た時の美しさと言ったら……語彙力カモンって感じですよ、ハマってるなんてもんじゃないよもう。天井から降り立ってご登場の時に思ったのは「何て傲慢尊大ナルシストなトート閣下……!」でした。人間なんて下等生物と見下していて、シシィに振られた時も「は? 人間ごときがこの俺を振った?!」と、起こったことが信じられないといったリアクション。で、中盤まではそんな風だったんですが、ルドルフの辺りから変わってきた。「闇が広がる」の後、皇帝への幻想を抱くルドルフをじっと見つめる目は無表情。全てに絶望して死を選ぼうとするルドルフに「死にたいのか」と囁くも勝ち誇ったような色は全くなく、ただそこにある「死」そのもののようでした。それでいて、息子の死を嘆き悲しむシシィの前に現れる時はまた傲慢な顔に戻り、フランツの悪夢に登場した時はそれともまた異なる、圧倒的な力で君臨する黄泉の帝王に。そして、シシィが死を受け入れて旅立つ時には嬉しそうな風ではなく、穏やかな安らぎを与える存在、として静謐ささえ感じる佇まい。場面ごとのこの印象の違いは何なんだろうと考えて、古川トートは「対峙した者の心の在り方によって姿を変える(=その人がイメージする「死」の姿)」トートなのかな、と。宝塚版でも帝劇版でも、トートは特に演じる人によって解釈の異なる役で*1「千年くらい帝王やっていそう」「帝王に就任したばっかり」「割と最近まで人間やってた」「イマジナリーフレンド的」「ドライアイスのような冷たさ」「熱さを感じるが、どこか非現実的でもある」などなど様々なんですが、こういう解釈は意外と今まで見たことがなく、こちらも良い意味で意表を突かれました。

成河ルキーニは生理的な不気味さがあった。台詞や態度がおちゃらけていてもなんかこの人怖い、というか、既に人間をやめて人外のものになりつつある(実際「とっくに死んでる」んだけど)ような雰囲気。重要な単語ですっと声の調子を落としたり、あるいは平坦に呟いてみたりと、観客を翻弄して楽しんでいるようでした。2015年の山崎ルキーニにも種類の違う怖さ(裏社会に身を置く人が醸し出すようなそれ)があったので、「なんか怖い」というのは最近の帝劇版のルキーニの傾向なのかな?*2

田代フランツは、終始皇妃への愛にあふれておりました。プロポーズの時から始まって、すれ違いの続く日々の中でも、一夜の過ちを犯してしまったその後も、変わらず妻を愛し続けているのが伝わってきて切なかった。優しく響く歌声が耳に心地よいから更にね……。しかし今回に限ったことではないんだけれど、マダム・ヴォルフの館は王侯貴族も利用する「紳士の社交場」の割に従業員のお姉さんたちの格好がかなりフェティッシュというかそういう意味の女王様っぽいので、あの場所を推薦した重臣のおじ様たち、そしてフランツも結構特殊な嗜好の持ち主では?と遠い目になってはしまう。

出てきたときにやけにピリピリしてるように感じた木村ルドルフでしたが、闇広の「不安で壊れそう」のくだりで納得。不安とプレッシャーに押しつぶされそうになりながら、精一杯虚勢を張って、手探りで進もうとしている青年でした。「死」に狙われつけこまれたというより、自然と呼び寄せてしまった感あり。彼もまた生きることに必死で、そういうところが母親に似ている。まさに「合わせ鏡」というフレーズがぴったり来る親子でした。

シシィからしたら悪者のゾフィも、(子どもへの体罰云々はよろしくないとは言え)自分の勤めに忠実であろうとしただけで、対話を試みることすら無理なくらい立場は異なっていたし、そもそもの価値観が全く合わなかったんだよなあ……とやるせなくなる。脚本自体はほぼ変わらない作品でも、長い事観ていると自分の見方が変化してくる部分もあるんだよね。最初の頃は舞台全体の美しさやトートの妖しさにばかり目が行っていたけれど*3、段々とシシィの苦しさも身に染みるようになってきて、「夜のボート」での夫婦の姿に涙が出るようになったのは30代になってからだし。

*1:宝塚では髪の色や質感まで違ってて、ウェーブがかった銀髪だけでなく黒髪や金髪、ストレートロングといろいろ。

*2:自分が観た回のみの印象ですが

*3:今ももちろんそこに目は行く

【観劇記録】5/18,5/23 『COCOON』星ひとつ編/月の翳り編

 

注意:ネタバレ全開の感想のため、映像を含め観劇予定の方はスルーを強く推奨します

 

COCOONは同時期に「月の翳り(以下、繭月)」と「星ひとつ(以下、繭星)」という二つの違った作品が交互に演じられる*1という変わった形式にも関わらず、発表されたあらすじは短くぼんやりとした内容で、しかも誰がどの役を演じるかすらわからない状態。結局、過去にダリ、ソフィ、クラウスを演じた方々が出ている繭星を劇場で観て*2、繭月はライビュにしました。

どんな作品になるのか想像もつかない状況で繭星から観劇。

 

 

※以下、シリーズの他の作品も含め思い切りネタバレしています(ところどころ記憶違いなどあるかも知れません)

 

 

あらすじには「ウルの慟哭の結末を描く」とあって、でもそれ「TRUMP」で既に描かれてない?と首を傾げていたら、繭星はほぼTRUMPでした。正確には、SPECTERとグランギニョルを踏まえてウルとダリの視点から再構成したリライト版TRUMPといったところ。元の話では描かれていなかった場面も多いため、単純な焼き直しにはなっていなかったように思います。というより繭月と繭星は単体でも完結しているけれど、二作品が同時に上演されることによって完成する作品なのではないかと(これについては後述します)。

舞台上はまたしても美の暴力。ほぼ白一色の、レースやフリルがふんだんにあしらわれたゴシック全開の衣装で、見目麗しい役者さんたちが舞台を所狭しと歩き、走り、時には剣を振るう……下手側の前から4列目というかなり前方の席だったのも手伝って「なにこれ、美死ぬ(うつくしぬ)……」などと頭の中にわけのわからない語彙が渦巻いておりました……特にダリちゃん(14年後長髪バージョン)な!!

「TRUMP」は劇場で観ていないので、まさか客席からの「ダリちゃーん!」コールに参加できるなんて思わなかった。あの椅子になってる人たち、イスビトっていうのな……。過去のバージョンだと「当然」って感じで座ってるんだけど、染谷ダリちゃんはめっちゃドヤ顔でした。しかも、着席した直後に「トイレに行きたくなった」ってハケようとするし、「♪貴族は大変だー、トイレに行けなーい」とかそんなことを歌いながら*3ふにゃふにゃした盆踊りみたいなのを踊ったりとお戯れまくり。ラファエロとウルが去った後の日替わりは、イスビトの一人に「無人島にひとつだけ持って行けるとしたら何だ?」と聞いて「……枕」「ナイーブか!」てなやり取りの後、ティーチャーグスタフに同じ質問→「(グ)……ミケランジェロ」(めっちゃ嬉しそうなミケちゃん)「(ダ)(ミケに対して)お前の恋愛対象はどっちなんだ!?」「(ミ)(口に指を当てて内緒、のジェスチャーwith微笑)」などという、ティーチャーズによる盛大なノロケが繰り広げられておりました。末永くお幸せに。全体的にギャグシーンがカットになってる中*4で暴れまくっておった。

繭星のウルはDステ版よりも快活で、人気者オーラがにじみ出てました。それだけに、顔をぐちゃぐちゃに歪めながらなりふり構わず永遠の命を求める姿が痛ましくて、観ていて辛かった。ソフィは今までのソフィよりもクールで尖っていたけれど、孤高の雰囲気を兼ね備えてもいて、ウルから見た彼はこうだったのかな、と少し新鮮な気持ちに。そしてラファエロとアンジェリコ。前者は映像で見た時よりも重々しく発せられた「弟を守る」誓いに「随分と重いなぁ」と少々戸惑い、後者は最期の「僕たちがなにしたってんだ」に対して「いや、君たち相当やらかしてるから」と心でツッコミを入れてたりしたんだけど……したんだけど……これについても後述。

ガ・バンリとソフィの関係では「姉さんに似ている」っていうガ・バンリの独白が追加されてて、ネブラ村のあの子が大人になった姿なんだよなー、と4月に本多劇場で観たSPECTERを思い返しつつ感慨。そりゃソフィを助けようと必死にもなるよ、姉の忘れ形見で、自ら名前を与えた甥っ子なんだもの。

ティーチャークラウスの正体は最初から明かされてて、現在の時間におけるアレンのことも早々に判明する。繭星のクラウスは、誰かと会話していてもいつもどこか虚ろで、ひとりだけ別の世界に魂が飛んで行ってしまっているようでした。以前とあるお芝居で、不死の肉体を持った登場人物による「そりゃ狂うわ!」という台詞があって、それを思い出した。しかし、伝説だと信じて疑わなかったTRUMPが実在したどころか、我が子の在籍するクランのティーチャーをしている、ってことを知ったダリちゃんの衝撃はいかなるものだったんだろう。その上更に「(実の父親から受けた呪いに)負けるな」と願ったウルに、自らの誕生を否定するような事を目の前で言われてしまうし。辛いのはわからなくはないけど、それを育ての親の前で言っちゃうのはあんまりだよ、ウル……。全てが終わって、ダリが血の繋がりのない息子の亡骸と対面する場面。周りからめっちゃすすり泣きや嗚咽が聞こえてちょっとびっくりしたけどこれは泣く……私も涙出たし。事前に告知されていたように、今までの作品のような仕掛けや驚きはないものの、一週間以上経った今これを書きながらも、目の前で繰り広げられた情景を脳裏に蘇らせる度に切なくなるお話でした。もちろん殺陣のシーンは複数回あり、役者さんたちの身体能力の高さに目を見張るばかりでした。特にソフィの、相手の攻撃をかわしたりする時の華麗な動きに見惚れた。

 

そして、5日後に繭月をライビュで観劇。

両方に出演してる人は同じ役かな?と予想してたら、繭星でウル役の宮崎さんが演じるのはエミールという別の吸血種でした*5。なんだけど、ラファエロには繭期の症状で弟のウルの姿に見えている、という設定で、配役の絶妙さに唸るしかなかった。

今回新登場のジュリオ*6がかわいい!ストレートロングの黒髪に姫袖のひらひらした衣装で、登場シーンで既に「かわいい子来たー!」と心で喝采してました。「退屈過ぎて涅槃像(by LILIUM)」ありがとう。一人称が「僕ちゃん」で、バルトロメ@SPECTER寄りのエキセントリック君なのかと思いきや、繭期の中で一番冷静な子だった。おっとりしたエミールともども、しんどい話の癒し的存在。ふたりがこちら側にとどまったまま、繭期を越えることができてよかった……。

最初の方の月を見る場面はよくある青春モノっぽいなー……などと若干生暖かい気持ちになってたけど、そんな状態のまま続く訳もなく。息つく間もなく繰り広げられる親愛、憧れ、畏れ、恐怖、執着、愛情と表裏一体の憎しみ等々、登場人物それぞれの強すぎる感情どうしのぶつかり合いの連続に苦しくなって、なのにスクリーンから目が離せなかった。個人的には、上級貴族の跡継ぎという立場を厭うディエゴや、繭期に異常なまでの執着を見せるドナテルロのそれらにちょっと心の琴線に触れる部分があって、それもまた辛かったです……。けれども、ディエゴを否定する特級貴族のアンジェリコも、同じく特級貴族であることの重圧に苦しむラファエロもまた、達観とは程遠い場所にいるのが同時にわかるから、更にしんどい。だって「心の色が見える」というジュリオが見た三人の心の色は「血を流し続けて真っ赤」だったのだし、役者さんたちの舞台上の熱演がそれを裏付けてもいた。

アンジェリコについては、ジョルジュとモローをイニシアチブを用いずに屈服させたシーンは圧巻でした。ふたりが自らの意思でアンジェリコを崇拝していたのなら、それは孤独な彼にとっての(本人はそうはとらえないかもだけど)救いな気がする。いや、わかんないけどな、実は……ってことだったりするかも知れないからな(マリーゴールドのアレを思い出しつつ)!

アンジェリコラファエロも、繭星の時に「ん?」となったあの台詞がこんな経験の上に発せられたと知ってしまったら、もう何も言えないよ。そりゃ弟を守ることに執念を燃やすのも、最期に恨み言めいたことをつぶやくのも当然だよ……。

COCOONは全体に演出が秀逸で美しいんだけれど、繭月ラストシーンのそれは、言葉で表すのが難しいくらいの衝撃でした。白を身に纏う人たちの世界で二人だけ、血に浸したかのような赤を纏ったアンジェリコラファエロ登場人物全員が白の衣装なのは、このためだったんじゃないかと思ったくらい。そして、最後の最後、無数の真っ赤な花びらの塊がアンジェリコの頭上に落ちてくる(降り注ぐではなく)場面でとどめを刺された。

繭月は物語のどこに、誰に惹かれるか(あるいは反感を抱くか)で全く違った感想を抱きそうな作品で、内容にばらつきがあるのも納得。そして、衝撃さめやらぬままの帰り道、繭星のラストでは、舞台の上に真っ赤な花びらが降り注いでいたのを思い出した。ウルにソフィのような友人がいたことが「希望」であっても、息子を立て続けに二人も亡くしてしまって、悲しくないはずがない。ダリちゃんの心は、あの時血を流していたんだ……なんてことに思い至ってまた別の切なさがこみ上げて情緒不安定に陥ってた。

私は星→月の順で観たので、繭星のいくつかの場面が繭月を観ることによって補完された、という印象でした。どちらから観ても問題ないし、冒頭にも書いたようにどちらかだけでも話は通じるけれど、両方を観たことによってはじめて「COCOON」というひとつの作品が「完成」したように感じられた。 

 

これを書いている現在は状況が変わっているかもですが、6月3日(月)の「月の翳り」追加公演分のチケットがまだまだ残っている、とのことで、大阪近辺に住んでいたら!という気持ちでいっぱいです……。もし迷っている方がいらっしゃったら、炸裂する美の暴力、激しい感情のほとばしり、美しく鮮烈などという言葉では言い表せてる気がしない衝撃的な演出の数々を、是非生で観て来て……!

*1:マチネが繭月でソワレが繭星、次の日はその逆、というような感じ

*2:TRUMPシリーズでは、前に演じた役と同じ、もしくは関わりの強い役を同じ役者さんが演じることがよくある

*3:うろ覚えです

*4:めっちゃ貴族でめっちゃすごくてめっちゃえらい、すらなかったりする

*5:他の方々は同じ役

*6:SPECTER再演クラナッハだったのか……びっくり

【観劇記録】4/18 CASANOVA(宝塚・花組)

 

・多少のネタバレを含む感想です

 

楽しかったー!美の極致と言っても過言じゃないのでは?なビジュアルと、これまた素晴らしい曲の数々に終始目と耳が幸福感に包まれておりました。

音楽は「1789 -バスティーユの恋人たち-」と同じ方が手掛けられたということで、好きな曲を挙げたらきりがないくらい*1、期待を裏切らない名曲揃い。カサノヴァが活躍するシーンではカサノヴァの、コンデュルメルたちのそれでは彼らの登場シーンの、というように、それぞれのテーマ曲(?)がインストゥルメンタルで流れるのも良かった。ストーリーは「一体どうしてそうなった??」という場面や急展開な箇所もあり、突っ込んだら負けな気がするのは否めないものの、全体に幸せな空気が漂い、ラストは少し切なかったりして、何よりビジュアルと音楽の満足度が非常に高かったのでまあいいか!となってました。

生田作品は演出が華やかかつダイナミックなので、そこも毎回楽しみにしており、今回も冒頭の裁判のシーンから惹きつけられっ放しだった。ちなみに衣装で一番好みだったのは馬車ラップ*2ベアトリーチェが着てたドレスです。


主人公のカサノヴァは「1000人を超える女と恋人の関係にあった男」という最低野郎。なのに、今まで愛した恋人たちの幻想に囲まれて高らかにテーマソング「人生には恋と冒険が必要だ」を歌い上げる姿を全く嫌味なく、それどころか魅力的に見せることができてしまうのは、女性が男役を演じる宝塚ならではだし、明日海さんのトップスターとしての力量の成せる技なんだろうな。脱獄して逃亡中に出会ったベアトリーチェに運命を感じてしまうのも、屋敷に忍び込んだ時に女官たちを次々骨抜きにしまくってしまう場面も、冷静に考えれば「なんでいきなりそんな心境に?」「その短時間でどうやってその人数をたらしこんだ?!」とハテナマークが飛び交う。なのに「まあそうなっちゃってるんだからそうなんだろう」と納得させられてしまう説得力があったのは、これまで少年から性悪男性、貴族に奴隷と様々な役を演じられてきた経験の賜物なのかも知れません。
仙名さんも溌剌として思い切りの良いヒロイン、ベアトリーチェを活き活きと演じられており、良く通る澄んだ歌声によるソロ曲も複数あって、彼女の退団公演にふさわしい演目だったかと。宝塚の舞台で拝見できなくなってしまうのは寂しいけれど、歌、お芝居、ダンスと申し分ない実力を兼ね備えているのはもちろん、色っぽいのに同時に可憐でもあり、かつパワフルな娘1に出会えたことはとても嬉しいです。
本公演では珍しく、正統派な悪役の柚香さん*3。演じるコンデュルメルは、黒ずくめの衣装と長髪がそれはそれは美しく、妻との関係をこじらせまくりりつつ時にコミカルな役どころがぴったりハマっておりました。が、何よりもフィナーレの仙名さんとのデュエダンや、続く男役群舞で見せた、弾けるようなキラキラの笑顔に射抜かれたことをここに記しておきたい。

それにしても、コンデュルメル夫人役の鳳月さんが予想を遥かに上回っておりまして……登場した時から強い存在感を放ちながらも、普段は男役だということを忘れてしまうくらい妖艶で美しく*4、女声のソロ曲まで切なく、しかも危なげなく聴かせるって一体何事だろう。脇役の子たちにもちゃんと名前があるのに、彼女だけは「夫人」で名前は明かされないのかな……と思ってたら、最後にああ来たか。あの夫婦、結婚当初はどんな様子だったのか、なぜあんなにこじれちゃったのか、などなど気になってしまう。
カサノヴァと行動を共にするもじゃもじゃ神父の水美さんは、結構アレなこともしでかしてるのにどこか憎めない、というより可愛らしさすら感じる三枚目な役どころ。公演ごとの演じる役の幅が広いなあ。悪サイドと思ってた瀬戸さんのコンスタンティンも、後半のバカップルぶりに笑わせていただきました。お幸せにー!

スターだけでなく若手の見せ場もちゃんと用意されていて、原作なしのオリジナル、かつ座付き作家による当て書きだと、こういうところは手厚いね。個人的にはコンデュルメル夫人のしもべのひとり(1匹?)、音さん演じるベネラちゃんがそれはもうかわいくてお気に入りでした*5

ここ数年の本公演では、「うわぁ……(無表情で天を仰ぐ)」というような演目はそんなにないのですが*6、年明けから三本連続で、それぞれの今のトップコンビ・組子の持ち味を生かした作品を観ることができて嬉しいです。ここ半年くらいの劇団の動き(というか人事)に何も思わないと言ったら嘘になるし、次の本公演で退団される明日海さん*7をはじめ、トップや人気スターの退団が続く寂しさもある。けれども新しくなりつつある体制でどんなものが観られるのか、楽しみにしている気持ちももちろんあります。

 

*1:初見のときに耳に残っていたのはカサノヴァの「人生には恋と冒険が必要だ」と、コンデュルメル夫人の曲でした。で、ライビュの時にああーコンデュルメルたちのもベアトリーチェのもカジノに集う若者たちのも、それ以外の曲もいい!ってなった

*2:確かTwitterで見た「タカラヅカディビジョンのユキとアヤカ」というのがとても好き

*3:金色の砂漠のテオドロスや新源氏の六条御息所は悪役とは少し違う気がするし……今回の役に近いのはカリスタのナポレオンかな?

*4:夫婦で並ぶと絵になる……を超越して、なんというか最強

*5:でもってエトワールの歌声がまた綺麗でな……

*6:ないとは言わないんだな……

*7:って書いてる端から寂しくなってきた……

【観劇記録】 1~4月の観劇まとめ(宝塚雪組/星組・薄ミュ風間篇・SPECTERなど)

 

このところ体調を崩したり、別件の書きもので切羽詰ってたりとなかなかまとまった文章を書く時間が取れなかったので、最近観た舞台(ライビュ含む)の感想をまとめて。

 

※多少ネタバレあります 

 

1月

  • 宝塚 雪組『ファントム』

トップコンビの美しい歌声に聴き惚れるばかりでした。こんな見事なお歌を5500円*1で聴けるって何事なんだろう……。特にクリスティーヌを演じた真彩さんはまさに「天使の歌声」で、登場シーンから既にそうなんだけど、エリックのレッスンを受けた後のビストロの場面での歌はそれよりも遥かに素晴らしいもので、その演じ分けに感嘆するしかなかった。後半はあまりにエリックのたどる運命が悲しすぎて辛くなってしまったんですが、全ての元凶のキャリエールも予想以上の好演でした。ベテランどころではコミカルさを前面に出しつつ迫力満点のカルロッタが素敵でした。

 

2月

  • 宝塚 星組『霧深きエルベのほとり』『ESTRELLAS~星たち~』

ストーリーそのものは単純と言えるし、正直古さを感じる部分はある。けれども終盤では涙が止まらなくなった。粗野で無教養だけれど繊細で心優しい船乗り、カールを演じた紅さんがそうそういないんじゃなかろうかというくらいのはまり役だったのはもちろん、カールと恋に落ちる良くも悪くもイノセントな令嬢、マルギット役の綺咲さんもそれはもう文句なしに可愛くて、観ているこちらに全く反感を抱かせなかったのは見事でした。ショーの方はドラマチックな盛り上がりはあまりなかったけど、ひとつひとつのシーンが丁寧に作られていて、飽きることなく楽しめた。この公演で退団の七海さんの見せ場がいくつもあったのも良かったです。二か月連続で、今のトップコンビ(と、各組の組子)だからこその演目を観ることができて嬉しい。

 

3月

  • ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』

  感想はこちら

 

  • ミュージカル『刀剣乱舞』 三百年の子守唄(再演)/ライブビューイング

村正と蜻蛉切の歌の力が半端なかった!演技の方も村正のエキセントリックさはやり過ぎにならない絶妙なバランスだったし、蜻蛉切もこれまたイメージ通りでした。元気いっぱいな物吉貞宗*2と、やさぐれ大倶利伽羅が予想以上にハマってた。刀ステの大倶利伽羅とはまた違ったアプローチでどちらも伽羅ちゃん、という説得力あり。青江はビジュアルのバランスや仕草、台詞回しは良かったけど、ちょっと大人しかったかな?石切丸は阿津賀志山*3の頃よりも落ち着いており、役をきちんと掴めてきている印象でした。初演を見ていないので、ライブパートで「歓喜の華」を聴けるのを楽しみにしてたんですが、今回は別の曲になっててそこは少し残念。ライブでは刀剣男士はもちろん、人間キャストの和太鼓がかっこよかった。ミュージカルパートは……曲はいいものもあったな。物語についてはいろんなところで言われてる通りだと思いましたので割愛します……。時間が経つのが遅すぎて映画館で何度もアナログ時計の針を確認しちゃったよ……。

 

4月

  • ミュージカル『薄桜鬼 志譚』風間千景 篇

薄桜鬼という作品自体のメインは新選組なので、オリジナルキャラクターで隊士ではない風間千景の話を、彼を主役としてそれだけで成立させるのは難しいんだな、と。前半は隊士との場面も少ないし、隊士それぞれのエピソードも他の篇と違って断片的で繋がりがあまりないので、物語に入り込みにくかったのは否めません。ゲーム前半で随所にある風間との絡みは軒並み削られてたもんな……。一幕終盤の山崎の羅刹化あたりからは盛り上がり出し、後半は怒涛の見せ場の連続だったので、そこで不安は払しょくされたけども。しかし新選組好きとしては、隊士が一人また一人といなくなっていく上に、千鶴ちゃんが隊士の誰かと一緒にいて心の支えになっている訳ではないことが、思ってた以上にしんどかった……。もちろんそれぞれの最期はどの隊士もしっかり魅せてくれたし、左之助と不知火の戦いで二年前の左之助篇の音楽が流れて懐かしくなったりもした。一幕に謎の演出*4があったりもしたものの、メインのちー様は文句ナシに格好良く、特にクライマックスの土方との一騎打ちは圧巻でした。

 

  • 宝塚 花組『CASANOVA』

長くなったので別にまとめました。楽しかったー!

 

  • Patch×TRUMP series 10th ANNIVERSARY『SPECTER』

初演は去年の夏の「はじめての繭期*5」で見て、ストーリーは把握した上で、今回の再演版を観劇。物語の根幹である「とある人物が無軌道に突っ走った挙句に多大な犠牲を出す」という部分は、「理由はわからんでもないが何故ああまでめちゃくちゃな方に行っちゃったんだろう?」という疑問を拭いきれないんですが、やはり臥萬里はかっこいいですね。Patchの舞台は初めてリアルで拝見しました。身体能力の高い人揃いなので、特に殺陣の場面は視覚的に見応えがあった。サトクリフとグレコの性格が初演と変わっていて(サトクリフは仲間に対して敬語で話していて一人称が「僕」、グレコは情緒不安定さが増してワンちゃん好き?になってた)、繭期四人組の個性がよりはっきりしたのは良かった。クラウスが冒頭から出てくるようになってたのも、話がすっきりしてわかりやすくなったと思う。グランギニョル好きとしては、萬里と石舟のやりとりに「アホの歌麿」「あの犬っころ」「春林師匠」といった内容が加わってたことにニヤニヤしておりました。TRUMPシリーズでは、前に出演した時の役と関係のある登場人物(もしくは同一人物)を別の作品で演じる、ということがよくありますが、ロダン役がTRUMP再演のオールフィメールバージョンでガ・バンリにあたる役を演じていた人だというのは後で知って二重に驚いた*6

 

*1:東京宝塚劇場A席のお値段

*2:しかし衣装のアンバランスさはもうちょい何とかならんかったんだろうか

*3:本公演を映像で鑑賞

*4:鬼の角の暗示なんだろうけど舞台の左右上方に斜めに刺さった木の板みたいなのが中央に向かってにゅーっと伸びてきたり、ソロの場面でバックダンサーと同じ振りをちー様が途中から踊りだしたり

*5:TRUMPシリーズの過去作品の何本かを日時を決めてYouTubeで無料配信するという何とも贅沢な企画

*6:登場時の声が女性のものっぽかったことにまず驚いた

【観劇記録】 3/2 ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』

 

  • 演出などのネタバレありの感想です

 

ロミジュリは宝塚版*1の印象が強くて、正直なところホリプロ版は2013年版観劇時に「キャストは申し分ないしダンスシーンとかはかっこいいんだけど、演出と一部の衣装がちょい微妙なんだよな……」と思って前回のはスルーしてました。しかし、気になる役者さんが複数出ているし、演出がリニューアルされてるなら、と、チケットをゲット。

この回のキャストは写真の方々でした。

 

f:id:raimu_sakura:20190302224616j:image

 

最初に思ったのは、演出も衣装も格段に好みになってた!

まず衣装について。大人組のそれが若者組に近い現代寄りのデザインになってました。子供たちがデニムとか着てるのに、母親たちは何でドレスなんだろう?と、違いを楽しむより先に奇妙だったからね……。キャピュレット家の若者たちの衣装が、男女とも赤を基調にしたワイルドかつセクシーなものになってたのも良かった(前回は確か、男子は赤のトップス+豹柄パンツ、女子は豹柄のミニワンピみたいなので、一昔前のヤンキー&マンモス狩ってる人たちみたいだった……)。

演出は冒頭からちょいちょい変わってました。モンタギューとキャピュレットの抗争を制しにくる黒づくめ特殊部隊みたいのがいなくなったり、ロミオが登場時、元カノたち?からの留守録をスルーしまくるシーンがカットされてたり*2、「死」が主張し過ぎずそれでいて静かに存在感を放っていたりと、前回「えー……」と困惑した場面がなくなったり変わっていたりしたので、より作品世界に集中することができました。まあ、スマホに関するあれこれは観劇2回目で慣れたという部分も大きいだろうし、2幕でふたりが別れの一夜を過ごした朝、ベッドがずずずーっと舞台正面に進み出てきて、布団から出たロミオがパンイチっていうのは変わっておらず、今回もそこだけ露骨過ぎて笑いそうになったけど。あと、緑に発光する毒薬の瓶。あれ前回はなかったよね?3階席からもわかるくらい存在感放たなくてもいいから瓶!ってなりました……。

以下、キャストの雑感など。 

  •  大野ロミオはキラキラ王子様でした。遊び人というより、女の子たちから遠巻きにキャーキャー言われつつ、たまにその中の一人とちょっと仲良くなる、くらいのイメージ。2013年に観た城田ロミオより更にその印象が強かったです。生田ジュリエットは純粋培養のお嬢様で、恋に恋する夢見がちな少女そのもの(なんだけど結構肝は据わってるし、突っ走り始めると止まらなかったりもする)。存在そのものが可憐でめっちゃ可愛かった……!二人とも恋に落ちた瞬間から互いのことしか見ておらず、その様子が眩しいくらいにきらめいておりました。「バルコニー」や「エメ」も、歌の技術は申し分ない上で純粋さが際立っており、何度も泣きそうになってしまった。
  • 「恋人って呼んで。それが僕の名前(ニュアンス)」「愛の花だわ!」等々いかにも芝居掛かった歌詞や台詞が多いので、パリスのことを「キザ野郎」と評するロミオに「いやいや、あなたもなかなかですから」と心で突っ込みつつ、これだけ浮かれてたらしょうがないよな、と納得させられてしまうものがあった。箱入り娘のジュリエットはともかく、なんでロミオはキャピュレットへの憎しみが薄い、というより元々抱いていないようにすら見えるんだろう?とか、娘が部屋で倒れて息してなかったらまず医者呼ぶだろうし、その時点で仮死状態ってバレるんじゃ……とか、ツッコミ出すときりがないけどね(苦笑)。歌曲は言わずと知れた名曲揃い。宝塚版のCDを何度もリピートしてます。男女混合バージョンもCD欲しいんですが、どのバージョンも出てない、ということは権利の関係とかで難しいのかな。
  • 渡辺ティボルトからは昏い色気と共に、自分でもどうしようもない憎しみに囚われて苦悩している面が強くにじみ出ていました。今までティボルトは「かっこいいけどぶっちゃけ中二病全開で時に痛々しい」人*3だとずっと思ってたんだけど、ちょっと見方が変わった。歌声の声量も見事でした。
  • 新鮮だったのが黒羽マーキューシオ。イキってはいても育ちのいいお坊ちゃん(大公の甥だからね)な面がしっかりと現れてた印象。宝塚の壱城さんが演じていた雰囲気に近いかな。予想以上に歌唱も安定して聴かせてくれました。三浦ベンヴォーリオは、リーダーとしては少し頼りなさそうなんだけど、「しょうがねーな、俺たちが助けてやるよ」てな調子で皆に慕われてそう。こちらも育ちの良さが感じられて、ロミオと親友というのも納得。「どうやって伝えよう」では、友人二人を一度に失って、急に大人にならなくてはいけなくなった(もう無邪気な子供ではいられない)切なさがこれまでの演出よりも明確だった気がします。
  • ロミジュリはアクロバティックなアンサンブルのダンスも見どころ。「チーム・悪ガキ」なモンタギューの若者たちの「世界の王*4」「綺麗は汚い」などの明るいナンバーと、「チーム・不良青年」なキャピュレットの、舞踏会シーンやティボルトの「今日こそその日」に乗せて踊る、色香の漂うダンスの対比も面白かった。
  • 台詞なし、ダンスのみの象徴的な存在の「死」。前半は全身黒ずくめ+黒の帽子でマントを翻し、影法師のようにひっそりとしたイメージで、後半から徐々に存在感を増していく。2013年のバージョンでは、ロミオとジュリエットが一夜を過ごしたシーンで上半身裸で逆さづりの状態で天井からぶら下がってたりするなど、インパクトが強すぎてポカーンだったんですが、今回は、前に出過ぎず、後ろに下がり過ぎずのバランスがちょうどよかったように思います。
  • 大人たちはベテランぞろいで、どの人の歌声にも聞き惚れていました。特に好きだったのはジュリエットの乳母で、お嬢様への深い愛情もさることながら、「綺麗は汚い」で、からかってくる若造たちを鼻であしらいつつ高らかに歌い上げる様がかっこ良かった。彼女がいたから、ジュリエットはあんなに清らか、かつ、信念を貫く強さのある子に育ったんだろうなという説得力あり。キャピュレット夫人も、娘にパリスとの結婚を促す場面で「高貴な家に生まれた女性の苦しみ・娘への愛情と表裏一体の呪い」を情念たっぷりに表現されていて、ゾッとするくらいの迫力があった。

数年前の観劇時と見方や印象が変わった部分が多くて、そういう意味でも楽しめました。この日がマイ初日&マイ楽だったんですが、他のバージョンと観比べてみたかったなー……って日替わりありの舞台で毎回言ってる気がする(笑)

*1:雪組月組(明日海ロミオ)、星組本公演(A・Bバージョン)を観劇

*2:「遊びなら何人かとつきあった」と歌ってはいるんだけど、あの場面にはモヤっとしたので……

*3:でもそこがイイ

*4:この曲、すごく好きなのです

【映画鑑賞記録】1/20 映画刀剣乱舞

 

【注意】鑑賞予定の方はもちろん、見ようかどうしようか迷っている方も、一切ネタバレ無しで速やかに映画館へ向かわれることを強くお勧めします(この感想エントリーも回避推奨)

 

昨年実写映画の上映が発表された時は「刀剣男士キャストの半分以上は刀ステの人たちだし、脚本も評判のいい人みたいだから悪いことにはならなそうだけど……実写映画か、うーん……」と、戸惑う気持ちの方が大きかったです*1。けれども主題歌の公開をきっかけに恐る恐る予告編を見てみたら、予想以上に違和感がなく普通に面白そうだったので、初めてムビチケ*2を購入したついでに映画館でチラシもゲット、Web配信の番組もチェックし始めたりしているうちに公開日が待ち遠しくなってきた。初日にちらっと探ってみたら、ネタバレを見てしまわないうちに映画館へ行け!というツイートを見たので、公開3日目のうちに行ってきました。

 

やー、面白かった!!

 

当方はゲーム歴そろそろ4年の審神者で刀ステ沼に浸かっており、ミュの方は今のところ映像で2作目まで、アニメも一通り視聴している身です。最初は三日月宗近をはじめ、舞台でおなじみのキャストがスクリーン上で刀を振るっているのが不思議な気がしていたんですが、すぐに慣れました。別の本丸の話として、抵抗なく受け入れることができた。

全体の見せ方はアニメの「活撃」に近い印象を受けました。ただ、大きく違うのは「かつての主を救えるかも知れない局面に立たされて、今の自分の使命との狭間で苦しむ」ことが、メインもしくはクライマックスの要素にはなっていない点。これによって、刀ステとも花丸とも違う「本能寺の変とその周辺の歴史改変に立ち向かう刀剣男士」の姿を見ることができたのは良かった。三日月宗近を中心に据えて、いくつかの、そして多方面からの意外な展開も含みつつ、百分強という時間の中で最大限に楽しませていただきました。

 

以下、思い出した順に箇条書き。全くまとまってません。

呼び名や設定、展開など、核心はぼかしたり薄い色にしつつも思いっきりネタバレしているので注意!!

 

  • 時間を移動する場面がキレイ。個々専用の透明な玉に時間を移動する力があるということなんだろうか?
  • 不動と日本号が「号ちゃん」「不動ちゃん」って呼び合ってて仲良しで和む。酒飲み仲間なのねー。
  • ここの薬研は骨喰のことを「骨喰兄さん」と呼ぶのか*3
  • かつての主、森蘭丸の最期の時を思う不動。短い場面でも張り詰めた表情から様々な葛藤が感じられて、辛かった*4
  • 序盤から審神者ががっつり出てきてびっくり。顔ははっきりとは見えなかったけど、壮年男性の模様。三日月とは長い付き合いで、信頼関係もある様子でした。
  • 三日月を除く面子が戦装束のままで武装を解いてくつろぐ姿が新鮮。不動、事情が事情とは言え甘酒飲み過ぎ!そして日本号の、内番衣装ですらないただの部屋着ジャージ(多分寝間着兼)……良い……
  • ばみちゃんお人形さんみたい……お肌キレイ……真っ白イノセンス……(語彙力が来い)
  • 鶯丸が、登場したその瞬間から鶯丸だった
  • 映画本丸の長谷部は終始仏頂面。よりによって主と三日月が隠し事をしている様子なんだから、むべなるかな。頼もしいアニキな日本号との漫才、ありがとうございます。
  • クールビューティまんばちゃん。三日月のことを訝しみながらも信頼はしている様子。割と古くから居そうな雰囲気だったけれど、映画本丸の初期刀なんだろうか?日の光の下だと綺麗さがいっそう際立っておりました。
  • おみ足に定評のある薬研ですが、当方は白シャツ姿の眩しさにやられた模様です。まんばちゃんとばみちゃんも一緒の川辺のシーン、なんなんだこのきらめく空間は……。
  • 銀幕の三日月宗近もまた、刀の付喪神そのものでした。ふとした表情にも老成を感じる。なのに戦闘時には華麗な中にも無機質さがあって、刀であるということを強く意識した。刀ステとはまた違う解釈・見せ方だったように思います*5織田信長に対しても「自分の方がじじい」みたいな事を言ってて、そう言えばそうなんだよなー、と改めて認識。 
  • 三日月だけじゃなく、刀ステに出演している方々は役作りを多少変えておられました。それでも尚、(本丸は異なっていても)同じ刀剣男士という軸がぶれないのは凄い……。
  • 複数の方が仰っているように、刀剣男士それぞれの個性はあまり詳しくは描かれず、三日月を中心にした歴史ミステリー+特撮、という趣でした。山姥切の写しコンプレックスや長谷部の「主命とあらば」な部分はほとんど、あるいは全く描かれていなかったりする。ゲーム中の台詞も大部分が普通の台詞に交じってさりげなく発されており「足元がお留守だぜ(日本号)」も「命が惜しければ引け!(鶯丸)」も随分あっさり言うなあ、と思っていたんですが、そういった部分もより広い客層を意識しての描き方なのではないかという趣旨の感想を拝見して、目から鱗だった。
  • 殺陣もまた、映画ならではの撮られ方をされており、城壁を垂直に駆け上がる薬研とか、レスリングのような格闘術の不動などを見ることができて興味深かった。欲を言えば、殺陣はもうちょっと引きで見せて欲しかったかも……。
  • 歴史ミステリーとしても楽しめる、というような事が告知にあったけれどそう来たか……三日月の口から語られる真相に痺れた。
  • 無銘の正体はもしかしたらとは思ったものの、てっきり鯰尾とか宗三とか、誰かしらと接点のある実装済みの男士かと……新しい子が来るとは完全に予想外だった。しかも、見覚えのある顔のような気がしてエンディングのクレジットを確認したら、ウル@マリーゴールドを演じてた方だった。そして森蘭丸役はDステTRUMPのREVERTHのウル(もしくはTRUTHのソフィ)。繭期の審神者をさくっと刺しにくるキャスティング。
  • キャスティングと言えば最後の方の本丸。後ろ姿だけ映ったとき、「あれ? 皆刀ステ本丸にいる男士だなー」と思ったらさあ……映画館じゃなかったら声上げてたよ!豪華なサプライズをありがとうございます。
  • まさかの女児審神者に面食らう。しかし、審神者と戯れる男士たちいつかpixivで見た光景や、幼女を背負って幸せそうな三日月がいといたく微笑ましかったのでよきかなよきかな。
  • エンディングテーマは映画館で初めてフルで聴いた。格好いい!

まだ書きたいことがある気がするんだけど、このあたりで区切ります……。

本編前の映画泥棒ムービーは、不動、鶯丸、長谷部でした。例のあいつの出現に客席で驚く不動→捕獲する鶯丸だけで既にシュールなのに、その上更に、お部屋でいそいそと違法ダウンロードを試みる敵大太刀&捕まえに来た長谷部とか、爆笑するしかなかったわ!

感想や考察、出演者やスタッフへのインタビューなどを漁っていたら、あれはそういう意味だったのか!という場面や、見返したいところがたくさん出てきたし、映画泥棒の2週目も気になるので、再度の鑑賞を真剣に検討中です……。

 

*1:発表直後に映画の公式Twitterをフォローしてはいたんだけれど

*2:全員集合ビジュアルの

*3:確か活撃では「骨喰兄(にい)」だったので

*4:隣のお姉さんがハンカチで目の辺り押さえてた

*5:このエントリ全体がそうなんだけれど、どの媒体の見せ方が優れている、とかじゃなく単純に異なっているというだけ