3次元別館。

主に観劇の感想です。2.5舞台が多めでその他のミュージカルやストレートプレイも。

【観劇記録】4/10 カンパニー/BADDY(宝塚・月組)

・自分用メモに近い感想です

・ネタバレあり+所々認識の間違いがあるかもです……

 

(5/8 BADDYについて千秋楽ライビュ後の感想追記) 

 

お芝居の『カンパニー -努力(レッスン)、情熱(パッション)、そして仲間たち(カンパニー)-』は現代の日本の話、ということもあって、正直なところあんまり期待してなかったんですが、バックステージものとして素直に面白かったです。宝塚的な華やかさはあんまりないし、リピートしたいかと聞かれたら考えてしまうんだけど、ストーリーに破綻がなく、涙が出そうになる場面もあったりして、良い意味で安心して観ることができた。

 

・珠城さんのサラリーマンスーツ姿が似合い過ぎ。実直真面目ないい人、という役どころがしっかりハマるなー

ツンデレバレエダンサーな美弥さんありがとうございます無限大

・愛希さんの出番が少なめでちと残念。美波はヒロインのポジションではあっても、役としては紗良や由衣の方がインパクトがあるからなー。ダンスシーンは美しかった。

・今回の公演で退団の早乙女さん。役とご本人の状況を重ねて見てしまうところがあって、最後の方の紗良から美波への台詞でちょっと泣いた

・スポーツトレーナーの由衣はリアルに応援したくなる

・那由多は軽くてチャラい人かと思ってたら、等身大寄りの悩める青年だった

・蒼太@暁さんのバレエシーンが見事!

 

 

で。

『BADDY(バッディ)-悪党(ヤツ)は月からやって来る-』ですよ。

星逢一夜の切なさに涙しまくり、金色の砂漠はマイ嗜好ドストライクで、神々の土地では作品自体のパワーと目を見張る演出の数々に唸らされまくり、最近映像で見た月雲の皇子の世界観と台詞の美しさに感嘆しつつまた泣き……と、つまるところウエクミ作品ファン*1なんですが。

ショー作品に最初から最後までひと続きの明確なストーリーがあるのがそもそも極めて珍しく*2、しかもそのストーリーが、

「全面禁煙の平和な地球に乗り込んできたヘビースモーカーの大悪党・バッディ、対するは正義の捜査官・グッディ!」

……なんぞそれ!?

開幕してみたら海老のかぶり物や銀色フェイスの宇宙人、極め付けは大羽根背負ったトップスターがサングラスに咥えタバコという、予想の遥か斜め上を行くビジュアルと、賛否両論入り乱れる感想の嵐で、期待も不安もパツパツの状態で観劇。 

 

うん。

何だこれ。

めっちゃ面白い。

しかし、口の中に入れてみたもののどう噛み砕けばいいのコレ??

 

無理やり他ジャンルで例えると

「同級生」鉄道少女漫画」の後に「2週間のアバンチュール」の単行本*3を読んだ感じ、というか。

ラクダ使いと王子の夜」収録のアレやソレ*4とか。

「箱の中」「檻の外」の直後にうっかり「鈍色の華*5」読んじゃったとか。

魍魎の匣」と「どすこい。」とか。

それくらいの「えっ、どうしよう」感だと思っていただければと。

 

しかし、最初から最後まで型破りなのに、よくよく考えてみれば見事に宝塚的だったりもするような。禁煙の地球でタバコふかしまくり、性別問わず美人といちゃつき、食い逃げ、パスポート偽造、銀行強盗とやりたい放題だけどどこか憎めない悪党・バッディと、優等生のヒロイン・グッディのあれやこれやに、バッディの相棒の中性的な美人・スイートハートや、グッディの同僚の捜査官・ポッキーも絡んできて……と、ストーリーは王道の少女マンガ的でもある。中詰の盛り上がりも、ロケット(ラインダンス)も、大階段の男役群舞も、トップコンビのデュエットダンスもちゃんとあり、そのどれもが痺れるほどかっこいい。

 

先述の通り、キャラクターは皆魅力的。

バッディは悪党の割にどこか間が抜けていて、もっとオラオラしてるのかと思ったら、グッディの存在に心乱されたりするピュアなところも。

地球の捜査官・グッディは文句なしにキュートでかっこいい。

密かにグッディに想いを寄せるヘタレ捜査官のポッキーは、囮捜査でオマール海老になったり、えっ、それ?!という悪事に手を染めたりと予測不可能だし、公私共にバッディのパートナーで性別不詳の麗人、スイートハートのことが嫌いなオタクなんて果たしているのかしら??

そして、傷を負ったバッディの手下の一人と、その手当てをする地球の王女、という、こっちの方が宝塚の王道では?なカップルのストーリーも同時に進行していたりして。

衣装も良かったな。特に中詰の「悪いことがしたい いい子でいたい」のチーム・バッディの黒と、チーム・地球(ちなみにこの場面のがグッディの衣装で一番好み)の白のコントラストや、バッディ一味のえんじ色のスーツの色合いが美しかった。

ダンスシーンで特に印象的だったのは、ロケットとデュエットダンス。通常、軽やかで華やかなロケットの場面で、よりによって怒りの感情を爆発させる、なんて見たことない。しかも歌詞が「私怒ってる、生きてる」という内容でコーラスは女声のみ。どういう種類のものかまでは掴みきれなかったけども、自分の中で強くざわめくものがあったのは事実。いつもは幸福感あふれるはずのデュエットダンスまでもがストーリーの一部で、「許せないのに、嫌いなはずなのに、でも……!」というせめぎ合いが表現されるって何事なんだろう。ラストはいつも通りの大階段のフィナーレかと思いきやそんなはずなかったね。あのオチは笑った。

 

ここまでほぼ絶賛してるけど、一応人生の半分以上宝塚ファンをやってる身としては「面白いけど、でも宝塚でコレなの??」って思う気持ちが全くないかというとそうとも言い切れず、まだ整理しきれない部分がある。ただ、もう一回くらい観ないと自分の中での落とし所がわかんないかも……なんて考えてる時点で、既にこの超異色なんだかそうでもないんだかわかんないショーに何だかんだ魅せられてしまってるのかも知れない、とも思うのです。 

 

(追記)

上のエントリー書いた以降もBADDYのファンアートにいいねをつけまくったり、感想漁りまくったり、「バディスイとスイポキのどっち派?」という某所でのアンケに「あふれる無敵感のバディスイかなー」などとノリノリで答えたりとなんだかんだBADDYが頭から離れず、前日に映画館の座席を滑り込みでゲットして千秋楽ライビュ見ました。

前回はゆっくり観る余裕のなかった部分を楽しみつつ、気づいたら「悪い事がしたい いい子でいたい」のとこでガチで泣いていた……。

未だにこのショーのことを消化しきれていない自分がいる*6のは確かなんですが。

キメるところはかっこいいんだけど、時に情けなくて憎めないバッディ、怒りに燃えているその時に嬉しくてたまらない!という表情を浮かべるグッディ、「浮気は恋のスパイスだけど、近頃悪事のスケールが小さすぎやしませんか?」なんて不機嫌も露わに歌う、妖しい魅力全開のスイ様、情けないを通り越してダメダメだけどだがそれがいいポッキー、台詞もなく静かに展開するクールと王女の恋、要所要所で登場する銀色フェイス宇宙人で銀行員のヤッティなどなど登場する人々のことや、エネルギーに満ち溢れた怒りのロケット、かっこよ過ぎる男役群舞、鬼気迫るデュエダン、やっぱりバッディはこうでなくては!なラスト等々が、今も頭に残って離れない、というのもまた同様に確かだったりするのです。

*1:ある人びとは未見

*2:知ってる限りではノバ・ボサノバくらい

*3:決して嫌いじゃない

*4:決して嫌いじゃない・その2

*5:初出の短編しか読んでないんだけど今ちょっと調べたら続編もあるのね

*6:それなりに長く宝塚を観てきてるから、戸惑っている部分が多いんだと思う

【雑記】ドルメンX実写ドラマ見たよ

 

※ほぼ自分用の覚書のようなもの

 

2話までリアタイ視聴後の感想を一言でいうと

「残念な部分がないと言えば嘘になるけど、限られまくった尺の中で大健闘してる」

かな。

去年の夏に、原作コミックスの1〜3巻の話がpixivで無料公開されてた時にほぼ一気読みして、直後に出た完結巻は発売日に書店で購入、既刊も全部買い集め、原作者発行の同人誌もコミティアで並んで入手*1、という勢いでハマったドルメンX。

男性アイドル、特に2.5次元ミュージカルがメインに描かれているので、音と動き有りで見たいな、アニメか舞台にならないかなー、と思っていたらまさかの実写化。Twitterで第一報知った時には自宅で朝から叫んだよガチで。

正直、最近では帝一の國や重版出来などの例外を除いて、漫画の実写化にはあまり良い印象がないです。けど、隊長とニイにあの人たちを起用してる*2時点で少なくとも「原作ぶち壊し、設定を借りただけの悪い意味で別物」にはならないんじゃないかということは窺えたのと、本編写真のいくつかがコミックスそのものだったので、期待してもいいかも?と。一方で、冒頭のアドライ*3は普通のアイドルのライブに変わってるっぽいし、実写オリジナルのキャラも出てくる模様で「まあ冒頭だけ出てくるアドライを再現するのは難しいだろうし、脇キャラがちょっと変わるくらいならよくあることだけど……」と、期待半分不安半分で放映日を迎えたのでした。

以下、とりとめもない感想のようなもの。

 

  • 隊長が物理的にもさることながら概念的な意味でかわいい。一番アイドルの素質がある(byヨイ)って言葉に説得力あり。路上ライブでのダンスが他の面子より「頑張ってる感バリバリでちょっとだけいけてない」のがグッジョブ!
  • ニイが素直にかわいい……ドロドロした面ももっとやってくれるといいな。セーラー服美少年楽しみにしてる!
  • 写真を見た時点ではイチイとサイが明らかに隊長よりもお兄さんだったので、隊長筆頭に兄弟ってことで押し通してるはずでは?とクエスチョンマークが頭に浮かんでたんだけど、純粋にビジュアルと演技を見てみると個人的にはアリだなーと。1話のジャノンボーイでのイチイの苦悩も、2話のヘタレPなサイもリアルに感じられて良かった。
  • ヨイがかわいい……今回のエントリそればっかだけど実際かわいいのでしょうがない。コミックスのあの髪型じゃないのに、存在そのものが顕現してる。「イケメンって、物理じゃなくて概念だから」のとこ好き。欲を言えば「現実になんかお金払ってない(血涙)」も聞きたかったぜ。
  • 2話でちらっと出てきた修吾は、来週以降どう描かれるかが肝だな。宇宙人メンバーより物理的に結構歳上なのは、原作の展開を考えれば納得。
  • 他の脇キャラたちはビジュアルや性別が結構違ってるけど、許容範囲
  • 尺の都合上仕方ないのはわかるんだが、35歳先輩*4、亜実ちゃん、たなしー先輩、遠井君、誰か一人でも描かれてたら……と思わずにはいられない。キラキラのアイドルばっかりじゃないんだよ……!
  • リキミュ、すなわち力士の貴公子ミュージカルは、しっかりやってくれそう、かな……?そりゃあの衣装見たら驚くよね*5
  • まだ2話までの印象ですが、キャラクターたちのリアクションが良い意味でリアル(特にイチイ)。何気ない表情とか台詞回しとか。
  • 路上ライブの1曲目のダンスの振りがコミックス通りで感動。楽しみだった「参上!!ドルメンX」は次回かー

 

思い出したらまた何か付け加えるかもです。かなり端折られてるし、その他の部分でも賛否両論はあるだろうけど、自分としては「悪くない」部類に入る実写化、というのが2話まで見ての感想。

そして、目下一番気になってるのは、リキミュの舞台シーンはどのくらいやってくれるんだ??ってこと。漫画だとそんなもんかと納得しちゃうけど、ビジュアル自体はかなりシュール*6だからなぁぁ……。

そして、この記事のために自宅の本の山から発掘できた分のコミックスをちらっと読み返したら「うおお……」とまた唸らされまくった。ドラマ見た方もそうでない方も、(男性アイドルや2.5次元舞台が好きな方なら特に)共感できる部分がきっとある、ので……原作コミックスも是非!!ドラマ化で重版されて手に入りやすいし、電子もあるよ!!

 

 

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*1:ランダムの名言入り缶バッジもゲット、ヨイちゃんが来てくれた

*2:俳優さんのバックグラウンドも込みで

*3:アドレナライブという、庭球ミュのドリライみたいなもの……ドリライ見たことないので伝聞と想像だけども

*4:ユルいアイドルものだと思って読み始めたら、このエピソードの生々しさと心理描写に驚愕した

*5:上は学ランで下は相撲のマワシ

*6:作中のポスターは強いて例えるなら帝一舞台を彷彿とさせるデザインだった

【観劇記録】2/18 ポーの一族(宝塚・花組)

 

・原作を観劇直前に読んだ宝塚ファン*1の感想です

・ストーリー、演出のネタバレあり

 

はいからさんや日出処の天子摩利と新吾等々、70〜80年代ごろの歴史・ファンタジーものの少女マンガが好きな割にポーの一族は最後まで読んだことがなくて*2、復刻版の全5巻を観劇の前日に読了しました。絵柄もお話もとても美しく、もっと時間をかけて何度も読み返したかったな、と思いつつ劇場へ。

 

まず確かなことは、エドガーという美しくも哀しいバンパネラの少年がまさにそこにいました。現花組トップ・明日海りおさんの本公演の舞台は、月組の準トップ時代から全て観ており、演技も歌も申し分ない実力の持ち主だということはわかっているんですが、今回はいつもと雰囲気が異なっており、バンパネラの少年を演じている明日海さん、じゃなくエドガーそのものだった。最初に公開されたビジュアルを目にした時点で「完璧に二次元、というか私はどこの次元の何を見ているんだろう……」と呆気に取られてたんだけど、そういう、第一印象から寸分の狂いもなし!な時の予感は基本的に当たるもので*3。妖しく美しいのはもちろんのこと、「長い時間を生き続ける、人ではない存在」としての孤独と哀しさに終始満ち溢れておりました。最初に銀橋で「哀しみのバンパネラ」を歌ったところで既に涙目になりかけて、2幕の中盤くらいの、アランに完全に正体を知られてしまった後の銀橋ソロでしっかり涙。

妹のメリーベルもまた、愛らしくも哀しい存在、かつマンガそのもののビジュアルで、特に義理の両親であるポーツネル男爵夫妻とエドガーの4人で港町を訪れる場面は、公式サイトの写真を見た時点で「写真ってことはこの兄妹は三次元の存在?意味わかんないんですが」と混乱しまくってたんですが、リアルで見ても意味わかんなかったです。エドガーともども、もはや神がかってた。

娘役トップの仙名さんが義理の母親のシーラ、というのは、ポジションだけ見ると意外な気もしますが*4、義母といっても外見は二十歳だし、人形めいた美しさと生々しい色っぽさがバランスよく同居していて、こちらもベストな配役でした。

アランは初見ではちょっと大人っぽ過ぎる?と思ったけど、少々高飛車で生意気、かつ繊細な内面を無理なく表現されていた。そしてエドガーと並んだときのビジュアルのパーフェクト具合ときたら私の貧弱な語彙では語れる気がしないので、公式サイト等々の写真を見てください百聞は一見にしかず*5

ポーツネル男爵も、いかにも貴族の紳士という品格があって良かったです。それと、超絶スタイル抜群のクリフォード先生と、笑顔の眩しいバイク・ブラウン(と、4世)の出番が思ったより多くて嬉しい。マーゴットもかわいかったな。

 

舞台全体の美しさについては全く心配してなかったけども、冒頭でバンパネラの一族が揃うところは想像の遥か上を行っており、口なんて当然半開きになりましたよね……。一幕が終わった後、「なにこれすごいいみわかんないすごい」って口パクで声に出さずに思わずつぶやいてたものね。

お話の方は、「ポーの一族」のストーリーをメインとして、マルグリット・ヘッセンやドン・マーシャルたちを語り手に据え、その前後のエピソードを語らせていく、という形で進行。舞台オリジナルの場面を盛り込むなど、多少大胆なアレンジやカットも施しつつ、限られた時間のなかでうまくまとめられているのではないかなと。さすがにオズワルドとユーシスのくだりが紗幕の向こう側でさらっと語られるだけで終わっちゃったのは「そんなにあっさり?」と驚いたけど。あと降霊会のとこがずいぶん長かったような。

他にも、展開や演出に多少のツッコミどころはあるんですが*6、見た目にお話に、全体的にすごく満足できた舞台でした。

チケットは全席完売していますが当日券はあるので、気になる人は是非。早朝から並ぶ必要はあるけど、その価値は十二分にあるっていうかむしろ安いから!あと千秋楽のライビュもあるから!

それから、今回は公演プログラムがいつにもまして豪華な仕様なのに、お値段据え置きの1000円なので、こちらの購入も強くおすすめいたします。

*1:全組ゆるーく箱推しのDD

*2:文庫版の1巻?をかなり前に読んだきり

*3:生執事サーカス編のジョーカーとか、文ステの太宰さんとか

*4:実際舞台でも、メリーベルの方がヒロインに近い位置ではある

*5:言うまでもないがリアルで動いてる姿は以下略

*6:エドガーの影ダンサー、数多過ぎ!とか、それだけの証拠でシーラを殺しちゃうのか?とか、アランを迎えに来たところで涙腺決壊してたのに直後のあのクレーンは……とか、エピローグにあたる学校の場面がちょい明る過ぎでは?とか

【観劇記録・ほぼメモ】2/3 舞台「文豪ストレイドッグス」

 

 

注意:この舞台が大好き!すべてに大満足!という方は回避を推奨します

 

 

 

 

先に書いておくと、出演者の演技には全くストレスを感じませんでした。特に、後述の何名かの方々は素晴らしく、この方たちを拝見できただけでも価値はあったってくらい。期待していた演出も映像とアナログを組み合わせた面白いもので、こちらも素直に楽しめました。

 

ただ、脚本が純粋につまらなかった……。

 

知っているエピソードが時系列に沿ってただずーーーーっと流れていくだけで、緩も急もあったもんじゃない。オープニングの乱歩のくだりが長かった(コンパクトにまとまってない、という意味で)点で嫌な予感はしたんだけど、前半終了後には既に死んだ魚の目になっていたので、後半は「お腹すいたなー終演後何食べようかなー」が意識の半分以上を占めておりました。空腹なんかすっ飛ぶくらい集中させてよ!隣の人なんて何回も欠伸してたし。原作ぶち壊しの改変が加えられていた、という類のものではないんだけど、だからと言ってそのまんまだらだらとつなげられても退屈なだけ。ところどころはさまれたギャグも演技で何とかカバーできてたけど、正直そんなに面白くなかったです……。以前この脚本家の別の舞台を映像で見た時も似たような感想だったので、あれだ、Not For Meってやつなんだろう。

 

良かったとこも書いておこう。出演者には他の舞台で拝見したことのある方も多く、演技面でのストレスはありませんでした。特に太宰治が素晴らしく、キービジュアルの時点で既に大正解の予感がしていたんだけど、登場の瞬間から「これは!」と惹きつけられ、見た目から立ち居振る舞い、台詞回しまで完璧でした。探偵社だと敦の身軽かつ緩急自在の身のこなしが見ていて気持ち良かったし、与謝野先生の見せ場がかっこよかった。超積極的なナオミも有りだな。ポートマフィア側は梶井基次郎中原中也が良かったんですが、特に中也、出番少なすぎるよ!

演出は、特にアンサンブルの方々のダイナミックな動きが面白く*1、このストーリーをよくここまで見られるものにしたな、と感心してしまったくらい。期待していた異能の表現は、スタイリッシュな映像*2と人力を駆使した見応えあるもので、特に、終盤の羅生門を連発する場面の布を使った演出は見事でした。

まとめると、演技★4~5、演出★4、脚本★0.5*3といったところかな……。観劇前から脚本には不安があったんだけど、演出と演技が良ければカバーできるかな、などと思ってたら見事に的中してしまった。原作に忠実ならそれでいいってもんでもないのね、ということを改めて認識。

 

*1:檸檬爆弾など、一歩間違えたらダダ滑りのギャグになってしまいそうなところもあり、ギリギリのさじ加減が絶妙

*2:シンプルな線で異能の名前と原稿用紙のマス目、場面によっては元ネタの作品と思われる活字が流れるように映し出される、というもの

*3:少なくとも不愉快になるような台詞や改変はなかったという点で

【観劇記録】1/24 髑髏城の七人 Season月 下弦の月 2回目(ライビュ)

上弦を見たらやはり下弦ももう一度見たくなるよね、という訳で翌日下弦の月のライビュも。仕事の都合で30分遅刻してしまったので、おきりが狸穴二郎衛門に見初められた辺りからになってしまったんですが……「いい月夜ですなぁ」には間に合ったから良かったとしよう、うん。

 

以下、しっかりネタバレあり、かつ主観と妄想の入りまくった感想です。

 

初回観劇時に全体については書いているので、今回見て改めて感じたことを中心に。

 

前日の上弦の月ライビュでは、捨之介の爽やかさと曇りのない笑顔に口元を綻ばせ、天魔王の情緒不安定さとリアル中二感にどうしようもなく魅了され、蘭兵衛の格好よさに痺れっぱなしだった訳ですが。

この日は捨之介の笑顔から時折覗く絶望の色に目が釘付けになり、天魔王の人間くささとみなぎる悪役パワーに圧倒され、蘭兵衛の美しさと妖しさに倒れそうになっておりました……。

12月の始めにステアラで観たときも完成度は申し分なかったんですが、1か月半を経てとんでもなく進化してない??

 

下弦捨之介は初見の時も、笑顔の裏に闇、というか暗い何かを抱えていそうな気がしていたんだけど、それが更に顕著になっていた。特に、2幕で霧丸に自分の過去を語るくだりの「天は俺が思っていたよりずっと高かった」という内容の台詞では、顔と声色に深い絶望が浮かんでいて、何かを吹っ切ろうとするように明るい調子で発されていた上弦捨のそれとは全く解釈が異なってました。天魔王が自害した後も、上弦捨からはかつての仲間を止めることができなくて悔しい、という気持ちを一番強く感じたんだけど、下弦捨からは絶望が漂っていた。その源が八年前に殿を救えなかったことなのか、それとも他の何かなのかは定かじゃないけど、霧丸がいてくれて本当に良かったなあ……。そう言えば、剣布が捨之介に服を切られるところ、下弦では焦る声に加えてちょっと色っぽいリアクションも入ってたのね。あの捨は相当女慣れしてそうだもんなあ。*1

 

天魔王はスクリーンでアップで見ると、表情筋の動きが想像以上に大きくて驚愕。サイドシートの10列目くらいからでもオペラグラスなしではっきり表情がわかったくらいだからなあ……。リアルに般若面みたいな顔になってたシーンもあった。やはりとんでもない威圧感と悪役オーラを漂わせ、同時に生身の人間であることも強く感じた天魔王でした。そして、どれだけ自分に酔っているようでも、常に冷静な部分が残っているようで、それが却って怖い。いろいろな人の意見なども拝見しつつ下弦天の印象を一言で表すなら「ザ・こじらせエリート悪役」。終始、悪役としての美学みたいなものが貫かれていて、同情なんてさせてくれない。捨之介に敗れて膝をつくところでも、むしろ見事なまでの負けっぷり!と感服してしまった。

 

で、蘭兵衛が美しかった……。もちろん初見でもそう思ったけど、更に妖艶さも増していて、初見からの&アップで見た時の変化に一番驚いた人かも。1幕では、登場シーンの美しさはもちろんのこと、自分を案ずる太夫を抱きしめるところの笑顔が心底幸せそうで、この後の展開を知ってると切なくてたまらなかった。夢見酒を飲まされた後の姿は、絶妙なカメラワークと照明の効果も相まって、この世ならざる者のようでした。殿の骨(?)に恍惚とした表情で口付けるところなんて、何なのそのおそろしくもうつくしすぎる絵面の破壊力は?!下弦蘭からは最初から最後までずっと、無界屋の主人と森蘭丸の両方の部分が存在している印象を受けました。無界屋襲撃のくだりは、狸穴二郎衛門のことはあくまで口実で、蘭兵衛として過ごした時間への未練を断ち切るために、自ら作り上げた里を滅ぼすことが本当の目的だったんじゃないか、なんて事も(今更だけど)考えたり。「所詮外道だ」ってほんとその通りだよ!

 

あと、これは完全に下弦贔屓の人間の感想なんですが。劇場での観劇の時もライビュでも、下弦の月の無界屋襲撃の場面は、血のにおいと死の気配が漂ってきそうに恐ろしく感じられたんですよね……。見え方がかなり違うはずなのに何でかなーと脳をフル回転させてみて至ったのは、あの惨劇を引き起こしたのが「(人間を超越した、人外じみた存在ではなく)中身が人間であることを常に意識させられる天魔王」と「1幕で太夫達と仲良く幸せそうにしていた無界屋の主人と、紛れもなく同一人物だとわかる蘭兵衛」だからではないかな、と。もちろんあくまで私にとってはこうだった、という話に過ぎないですが。

 

と、ここまでほぼメイン3人のことだけ書いてきましたが、兵庫も「ずら」のところでずらのけ姫*2とかかましつつやっぱりなんだかんだいい奴でかっこよかったし、霧丸はかわいいしアクションシーンはかっこよかったし、極楽太夫は綺麗で心身共に強いのにどこか儚げで笑顔がめちゃくちゃかわいかったし、贋鉄斎はやっぱり暴走気味だしさらっと下ネタかますし、渡京はやっぱり胡散臭いし、生駒は使ったトイレットペーパーの端を三角に折るのをやめて欲しい潔癖症だし……うん、やっぱり皆好き過ぎる。

 

*1:このエントリー全体がそうなんですが、どっちが優れてる、とかじゃなく純粋に解釈や演じ方の違い自体が面白いってことね。念のため!

*2:全然誤魔化せてないから、と捨之介に突っ込まれつつ「お前に太夫が救えるか!」とはけていくという、いろいろアウトなアレ

【観劇記録】1/23 髑髏城の七人 Season月 上弦の月(ライビュ)

昨年12月に劇場で観た下弦の月が自分の中でどストライク過ぎた訳ですが、他の方の感想などを拝見する度に上弦の月も気になってきて、昼公演をライブビューイングで観劇。

正直に言うと、見る前は主に完成度の面でちょっと不安があったんだけど心配なんて全くする必要なかった!こちらも最初から最後まで心から楽しめました。

 

以下、展開や台詞などのネタバレあり、かつ主観と妄想が入りまくった感想です。

 

細部は少しずつ異なるとは言え基本は同じ脚本と演出なのに、別のシーズンの舞台を見ているんだっけ?ってくらい、上弦と下弦で受ける印象が違う。

特に顕著だったのが天魔王で、同じなのは名前と大まかな外見だけ、と言っても過言ではないくらいでした。だってさあ、2幕の口説きの場面の後、エゲレスからの手紙を読んで崩れ落ちながら「生駒ぁ……」って泣きそうな声で側近のお姉さん*1に縋りついちゃうんだよ?!そんで生駒も慈愛に満ちた微笑みで頭撫でてあげちゃうんだよ?!下弦天は陶酔し切った台詞を吐きながらもどこかに冷静な部分を残してそうだったけど、上弦天は終始自分の一挙手一投足に酔ってる。短くまとめるなら「自己陶酔の激しい中二病(精神年齢込み)」といったところ。なんだけど、その情緒不安定で危ういところが魅力でもある。なので、捨之介に鎧を剥ぎ取られて負けた時、自らの身体を抱きしめて蹲る姿がとても哀れでした。鳥髑髏や下弦の天魔王は自害したというのは見せかけ、もしくはうっかり助かってなんだかんだしぶとく生きていそうな気がしてるんですが、上弦天は本当に命を絶っていそう、というか、あんな姿を晒してしまったらもう生きてはいけないだろうな、なんてことも思った。

蘭兵衛は漢くさくてかっこ良かった!ヤンキーっぽいと聞いてたけど、任侠という方がしっくり来るような、どこか陰のある頼もしいお兄さんでした。鳥→下弦の月、と見てきた中で一番、生身の人間の男性っぽさがあった。と言っても蘭兵衛としての姿は、本来の蘭丸の人格を封じ込めて新しい人間として生きるために、意識して作り上げた別の人格のように見えました。1幕ラスト、髑髏城に乗り込む時点では、本気で無界の里を救うつもりだったんじゃないかな。けれども天魔王の前では結局蘭丸としての自分を押さえておくことができず、完全にそっちに取って代わられてしまった。それで、かつて守ろうとしていた無界屋への襲撃が容赦ないものになっていたように思えました。蘭丸にとっては何の未練もない場所だからね。すると最後の「所詮は外道だ」はどういう気持ちで言ったんだろう、無界屋としての自分が少しだけ表に出てきたとか?などと考え込んでしまう。本当によくわかんない奴!*2

捨之介は爽やかで清涼感あふれる好青年。独特の台詞回しが少し言いにくそうに感じられてしまったのは否めないんですが、初舞台であれだけ存在感を出せるのは見事。立ち回りも、身のこなしの軽快さと抜群のスタイルの相乗効果で見栄えが良い。無界の里を訪れるシーンでの女性陣との絡みもどこか初々しく、確かにこの捨之介なら、かつての仲間を「止め」ようとはしても、「倒す(殺す)」という発想には至らないだろうな。

兵庫もまた、ピュア100パーセントのキラキラ青年。それでも兵庫のイメージは全く崩れておらず、良い意味で意表を突かれた。ハイステで座長を勤め続けてるだけあって、身体能力を生かした身軽なアクションも見応えあり。ラストの太夫へのプロポーズの場面では、下弦の方にはなかった「あんたの綺麗な背中に追いついて、追い越して、正面から受け止める」という内容の台詞が加わっていて、最後の最後でときめかせ殺す気かてめえ!と悶えさせられたよ畜生。

その極楽太夫も懐の広さと情の深さを感じさせつつ、最高にかっこいい姐さんでした。下弦の太夫は年齢不詳かつどこかお姫様めいた雰囲気があったけど、こちらはちょっと蓮っ葉で陽気な、みんなのお姉ちゃんといったところ。でも、花魁としての格もちゃんと備わってる。さすがは新感線の看板俳優のひとり。ワカドクロの贋鉄斎はゲキシネで見たけど、沙霧も演じたことがあるというのはびっくり。蘭兵衛との関係は年の離れた姉と弟のようで、恋愛ムードは皆無。太夫と蘭兵衛の関係については、今まで見たことのあるバージョンも「太夫の片想いっぽい」もしくは「憎からず想いあってはいるけど恋仲には至ってなさそう」くらいだったと記憶してるので、明らかにデキてるっぽい二人もちょっと見てみたい*3

霧丸は役者さんの年齢も相まって、下弦よりも大人びたイメージ。パンフでは「17、8の役作りだと無理がある」というような事を言ってたけど、こちらもちゃんとその年齢っぽかった。上弦の方が隠していた出自について、より自覚的だったように思えました。捨之介との年齢差はあまり感じなかったので、兄弟っぽいというよりは濃い友情?のような。今回初めて意識して見た役者さんだったんですが、ミュージカルにも多数出演している方なのね。

Season月自体は実質2回目の観劇だったので、初回は見逃してたり記憶がすっ飛んでた部分もしっかり確認。と言っても「百人斬りって天魔王と対決する前のあのシーンのことなのか。確かに斬る度に贋鉄斎が研いで、霧丸がサポートしてる!」とか「暫鎧剣の仕掛けってそういうことか!」とかそんな超基本事項だけど……初見では圧倒されまくっててついてくだけで精一杯だったんだってば!

他にも、いん平(病気の猿)がじん平(ド○えもん…どっちにしても息子酷い)だったり、贋鉄斎が1ミクロンくらいマトモ寄りだったり、兵庫の「くんろ」の後の「〜ずら」が「〜っぺ」だったりとか、細かい点のいろいろな違いも楽しかったです。

月髑髏については「若気の至り」ということがオフィシャルでも言われていて、上弦はより強くそれを感じました。捨之介は爽やかでまっすぐ、兵庫はピュアでキラキラ、霧丸も清々しい青年で、「青春の煌めき」がそこにあったような*4

*1:というより最早保護者

*2:だがそこが良い

*3:確か花髑髏がそんな感じなんだっけ?ゲキシネ待ってる

*4:天魔王はリアル中二で、蘭兵衛は……なんだろう

【観劇記録】1/7 ピカレスク◆セブン(少年社中)

 

  • 多少ネタバレありの感想です

 

観ようかどうしようか迷ってるうちに公演日を迎え、気になる気持ちを抑えきれずに当日券にて観劇。

終わった後の印象はというと、

マクベスが美しい。

そして、非常に感想が書き辛い。

どういうお話だったのか?と聞かれると説明に困ってしまう。キャラクターはなんだかんだ魅力的だし、ちゃんとオチもあるんだけど……別の演目についてどなたかが書かれていた「広げた風呂敷は一応畳まれるけど畳み方が強引」というのがしっくり来るような。と言いつつ、面白かったかと聞かれれば素直にイエスだったりもする。ううむ。

主人公の一人マクベスは、「実はいい奴」という描かれ方は全くされておらず、召喚された直後に裏切るし、数が合わないからというだけで一緒に召喚された面子の一人をあっさり殺すし、気に入った女は力ずくでモノにするしで救いようのない悪役。その他の面子もすぐに裏切ったり寝返ったり、悪い奴じゃなさそうだけど自分のことしか考えてなかったりとそんなんばっかり。感情移入できるとしたら、もう一人の主人公のイエミツくらい……かと言うとそうでもなく、悪役?たちの心情に共感できる部分もちょいちょいあったりして。マクベスを筆頭に「うわーこいつ最低」と何度かツッコミたくはなるけども、暗いイメージのあるリチャードIII世なども含め陰湿さはなく、どいつもこいつもカラッとした悪。

 

以下雑感を箇条書きで。

 

  • ビジュアル最高。衣装とヘアメイクが全体的に好み過ぎる。公式サイトの写真は黒メインですが、舞台上で実際に着用されているものはもっとカラフルでポップ。全然こんなんじゃなかったよ?!って人も半分以上いるけど、マクベスやイエヤス、ノブナガあたりはほぼそのまんまのイメージ。
  • メイン二人を筆頭に殺陣が多い。どの場面のも速い上に力強く、迫力に目を見張るしかない。
  • マクベスがとにかく美しい*1。ザ・悪人だけどあの美しさは正義。3人の魔女とかマクダフとか出てくるので、ざっくりでも元ネタを知ってた方がわかりやすいかも?
  • トクガワイエミツが、一応江戸時代にも関わらず「ピカレスク・セブン」なんて中二全開な単語を普通に使ってることについては、突っ込んだら多分負け。ヘタレだけど根は善人。白一色の衣装に逆に鮮やかなインパクトあり。○○食べたいんだ。
  • ピーターパンが悪役?と思ったけど、召喚された理由を聞けばそんな気もしないでもない*2。改めて身体能力の高い役者さんだなあと。フック船長と何だかんだ息ぴったり。コンビで清涼剤的存在のような、そうでもないような。
  • ジャックはいろいろと訳アリとは言え、××された相手についてっちゃうって展開はちょっとどうなんだ(汗)両手の獲物を駆使した殺陣がカッコいい
  • シリアスかつホラーっぽく見えるけどギャグも多い。黒い全身タイツの男とか昔の戦隊物によくいたアレだしそもそも黒くないし。
  • 冒頭のナレーションが何気に神谷浩史さん
  • 名前の出てこないあの人やその人にも実は◯◯でした!があるのかと思ってたら特に何もなかった
  • 人物紹介に思いっきり出てるのでわかってはいたんだけど、最近個人的な観劇歴において第六天魔王&太閤殿下が続いてる*3
  • 織田ノブナガめっちゃ美しかったけどな!

 

エンタテインメント性は十分だけど、好みは分かれると思う*4ので全力でのおススメはしづらい、というのが正直なところではあります。ただ、ビジュアルと殺陣はストレートに素晴らしいし、好き勝手しまくり、やりたい放題のキャラクター達は強烈に生き生きと描かれてて、ある意味清々しい。オフィシャルサイトのあらすじとビジュアルを見て、面白そう、と思う人ならおそらく楽しめるのではないかと*5

*1:重要なので二回書いた

*2:調べてみたら少年社中の過去作品つながりらしい

*3:関東荒野とか、小田原攻めとか

*4:NOT二次元オタク+ほとんど観劇しない友人にチラシを見せたら引いてた

*5:このエントリーを書いてる現在、まだ当日券もあるそうですよ……と地味にダイレクトマーケティングしてみる