3次元別館。

主に観劇の感想です。2.5舞台が多めでその他のミュージカルやストレートプレイも。

【観劇記録】3/30,5/3 舞台『刀剣乱舞』綺伝 いくさ世の徒花(刀ステ)

 

  • 思い切りネタバレありの感想です
  • ところどころ記憶違いなどあるかもです

 

結構長いこと感想はお休みしていたのですが、回数は減ったものの観劇はしっかり続けてます。刀ステ天伝、无伝もステアラで観劇しまして、あの特殊な劇場でしかできない演出の数々が非常にエキサイティングだっただけに、平日だと空席が目立つ状況が悲しかった。それだけに、今回満を持しての上演となった綺伝の明治座公演がほぼ満席だったのは喜ばしいです。

 

前回の「科白劇」の感想はこちら*1

raimu-sakura.hatenablog.com

 

オープニングから、サブタイトルに「綺」の字を頂くにふさわしいものだったことに(声は出さずに)感嘆してました。いつもの疾走感のあるものとはうって変わった、厳かかつ優雅な音楽とともに、刀剣男士と歴史上の人物が扇子を持って舞う様の美しいことといったら。刀ステのオープニングの中で一番好きかも。歌仙とガラシャ様が中心になるところは想定内(嘘です語彙ログアウト状態で見惚れてました)として、長義*2がひとりで中心に立って舞う振りがあってちょっと動揺してましたありがとうございます。

本編はというと、

雅と美と物理的な力強さは全て同時に成立しうるんだね、という事を歌仙を座長に据えた今回の座組で思い知らされましたです。明治座観劇後のツイートより)

今までの刀ステや科白劇でもその片鱗は見えていたけれど、綺伝で見せた姿はそれらを遥かに上回ってた。あの本丸の歌仙*3、とりわけクライマックス付近の殺陣の雅さと力強さには、魅了される以外の選択肢が存在しなかった。持ち主の妻であるガラシャが、見た目の全く異なる刀の付喪神に、文化人としても名高い夫の姿を見出したのも納得でした。そのガラシャ様は美しさはそのままに、心なしか科白劇の時より更に凛としたたたずまいで、力強さを増しているように感じられた。後半の薙刀の殺陣の形がとても綺麗で、どの瞬間を切り取っても絵になってましたね。无伝の高台院様も然りですが、元宝塚の男役の方は美しさと気品に加えて力強さをも兼ね備えた女性の役がハマるよなあ……OGの方々の活躍に退団後も魅せられ続けています。

物語の大筋は科白劇と同じなので、刀剣男士の印象もだいたい同じかと思ったんだけど、二年弱という時間の経過か、いわゆる「個体差」なのか、細かいところでちょいちょい変化はありました。

山姥切長義は高慢かつそれに見合う実力の伴った超エリート*4……なんだけど聚楽第の監査官だったことはバレてるよねおそらく。原作ゲームの声優さんが「嫌味な奴ととられないように、わかりやすく隙を詰め込んで演じた」と言う趣旨の話をされていたことを最近知ったのですが、刀ステでもしっかりそれが踏まえられてて、にやにやしてしまう。慈伝や科白劇はどうだったかよく覚えていないんだけど、本歌なだけあって殺陣の形が写しのまんばちゃんと似てる? 納刀時に一回転させるところもあったし。一度は負けを認めざるを得なかった相手の気配を漂わせた敵(偽物くんの偽物くん)なんて、存在自体が許せないのだろう。ステ長義はどのシーンをとってもやはり理想的な長義でした。

にっかり青江は普段はどこか色っぽさのあるおっとりとした年長刀なのに、戦闘時は鋭い刀と化していて、そのギャップが大変良いです。ミュの人ならざる者*5っぽい青江とはアプローチが全然異なるけれども、こちらも同じ刀だと無理なく思える役作りでした(この辺は科白劇の感想にも書いてたね)。

放置プレイとか時々ちょっと変なこと言うけど、ノーブルで華やかで機転がきいて、それでいてどこか可愛らしい亀甲貞宗、SPECTER再演の臥萬里なんだよなあ……予め把握してなかったら多分わかんなくて、後からパンフ等を見て叫ぶパターンだったんじゃなかろうか。科白劇の時と比べると、軽快さよりも落ち着きを感じました。ゲーム本編や花丸本丸ではコミカルさの方が印象に残ってたので、異なる一面を見られて嬉しいです。

獅子王。初日の感想をちらっとTwitter検索してみたら何かあるっぽかったので期待して行ったら鵺!確かに真剣必殺の立ち絵では口開けてるけど、動き回って一緒に戦うのか鵺……!!科白劇の感想を読み返したら「年長の刀としての落ち着きが感じられた」とあり、綺伝の獅子王にもしっかりそれは存在しつつ、ムードメーカー的というか元気で賑やかな印象がより強かった。亀甲さん同様、別の本丸ゆえの個体差かな。小烏丸の真似が上手過ぎ。

歌って踊って「すていじ」に立つ日を夢見る篭手切江は、真剣必殺の殺陣がかっこいい。初見の明治座では座席の関係で見えづらかったんですが、二回目の新歌舞伎座ではストリートダンスを思わせる華麗なアクションをしっかり目に焼き付けてきました。刀ステにおける脇差や短刀の殺陣は、全体にアクロバティックなものが多くて楽しいです。

立ち絵ではどこを見ているのかわからない、幽玄な妖しさの古今伝授の太刀と、「姉上」と逃避行を繰り広げ、どこか危ういものを持った地蔵行平は、佇まいといい台詞回しといい、イメージドストライクなんですよね。どちらも西洋のフレグランスよりお香の匂いがしっくりきそうな*6

 

ここまでは良かったことについて書き倒してきましたが、気になったことも。

明治座の座席。ファンサイト先行のA席だったんですが、3階席の最前列で手すりが目線にかかってしまい、見切れ席では?というレベルで舞台の一番低い部分が隠れてしまっていました(当方は身長159センチで女性の平均の範囲かと)。事前に見切れ席と告知された上でなら割り切れるけど、多少見づらいってレベルではなかったよ……。Webアンケートにしっかり書いておいた。新歌舞伎座はサイドシートで少々見えない部分はあったけど最初からサイドシートとして売られてたし、その代わり花道は綺麗に見えて、座席に座布団が置いてあって目線が多少高くなったので、それほどストレスは感じませんでした。

作品については、歴史上の登場人物、ちょっと多過ぎない? 細川ガラシャと忠興夫婦、夫婦とキリシタン大名たちの両方と関わりのある高山右近と、これまでの作品にも登場している黒田孝高は必須として、その他のキリシタン大名が4人、更に綺伝では天正遣欧少年使節まで加わると流石に誰が誰だかわからなくなりかけたし、出番と台詞が増えた分*7、全体がやや冗長になってしまっていたのは否めない。无伝の真田十勇士もそのパターンで、各々のキャラクターが立っていて魅力的でも、この人たち決して嫌いじゃないんだがそれより本筋を先に進めてくれ……と思っちゃったんだよな*8。それと、映像も多用し過ぎかな。背景や演出上の効果はいいんだけど、生身の人間が舞台上で演じるか、いっそモノローグでもよかったのではという箇所に至るまで、出演俳優の演じた映像を使っていた場面がいくつかあり、そこだけ安っぽく見えて残念でした。好みの問題かも知れないけど。

良かった部分とそうでなかった部分を両方述べましたが、全体の満足度は高いです。科白劇と大筋は同じ、と先述しましたが、大人数対少数の殺陣や真剣必殺など、この座組で初めて「完全な形のもの」を見ることの叶ったシーンもあり、夫婦の愛憎の顛末が歌仙のモノローグで語られる終盤では泣きそうになった。明治座でスタオベに加わろうとしたら、危ないからと係の人に止められたのが残念だったくらい。新歌舞伎座では堂々と1階席の人たちと一緒に立ち上がって拍手できたので、その時の無念は回収できた。そして、新歌舞伎座で観劇した5月3日はちょうど刀ステ6周年にあたる日でした。把握していなかったので当日知って驚いた。終演後に歌仙役の和田さんから6周年の挨拶*9もあり、刀ステと知り合って舞台を積極的に見るようになってからそれだけ経ったんだなあ……と、感慨にひたっておりました。

 

(6/2 追記)

大千秋楽もライブビューイングで観ました。刀ステの千秋楽は虚伝初演からずっとライビュもしくは配信で見ていて、今のところ皆勤です。映像だと表情が細かく見えるのが良いね。オープニングでソロで舞うところの長義、最後ににやっと笑ってたのか心拍数やべえとか、地蔵ちゃん科白劇以上に可愛すぎやしないかガラシャ様が姉上って呼ばせたくなったのも納得…と心で頷いたりとか、青江ちゃんの真剣必殺のキメの顔が実に艶っぽくてすてきとか、クライマックスの歌仙とガラシャの戦いのシーンも大画面だとまた違った迫力で瞬きも忘れて見入ってしまったり。エンディングではあー綺伝とうとう終わっちゃうのか寂しいな……と早くもロスに突入してたんですが、曲の最後の方で刀剣男士たちと白い衣装の歴史上の人物たちが眩い光の中に並んでるのを見た時、美しさと、ここまで来られたんだな、という感慨で涙が込み上げそうになりました。挨拶する役者さんたちは清々しい顔をされていたし、特に座長の和田さんは歌を詠まれた後*10、一瞬脱力したような顔をされていて、出演者も舞台には立たないスタッフも、おそらく初日(だけじゃなく稽古など準備期間も)から千秋楽まで、観客には想像もつかないようなプレッシャーと戦って来られたのだろうな、と。

次回以降のあれこれについては、取り敢えずびっくりした。七海さんが歌仙というだけでも幻覚じゃないよね?って我が目を疑ったのに、大倶利伽羅役として彩凪翔さんの名前を見た時には映画館で声出そうになったよ……。自分は宝塚ファンではあるけれど刀ステのファンでもあるので、既に退団されているとは言え、刀ステに元宝塚の男役さんが二人も刀剣男士として出演されるという事は、まだ戸惑いの方が大きいです。女性の役者さんが刀剣男士を演じること自体に異論はないし、更に元宝塚の男役のお二人なら不安要素は少ないけど、どうして刀ステの中でそれをやるの?という(彩凪さんは退団後の活動は把握してないけど宝塚時代結構好きでした)。既にある本丸とは全く別の、新しい本丸の物語を宝塚歌劇団の公演でやるって言われたなら特に抵抗なく受け入れられたと思う*11けど、刀ステとなると今までとあまりに方向性が違い過ぎるので。OGの誰々に出て欲しいなど盛り上がる事が悪いとはまっっったく思いませんが、ヅカファンかつ刀ステのファンでも純粋に喜んでる人間ばかりではないんだよ……。しかも出陣先が源氏物語の世界ってなんなんだ??戸惑いまくりつつも改めてビジュアルを眺めると、禺伝の歌仙さんも伽羅ちゃんも非常に美麗で見とれてしまったし、宝塚ファンではなさそうな人が今回の試みについて好意的にとらえておられると、結構嬉しかったりもします。

今回の件が賛否両論というか、かなり強めの批判も出るだろう事を制作サイドが予想できなかったはずはないので、思い切った方向に打って出ざるを得ない何かがあるんだろうな、以上の事は言えないです。けど、脚本の末満さんは原作のあるゲームを舞台化する事だけでなく、歴史を題材としたフィクションを描くという面においても信頼のおける劇作家なのは確かだし、自分は顔も名前も把握していない人がほとんどだけど、他のスタッフの方々もそうだと思っています。刀剣男士を演じる七海さん、彩凪さんも、反対意見に晒されるのはわかっていただろうし、いい加減な気持ちで引き受けた訳では決してないでしょう。と言うか、彩凪さんを知らない方は6月末にCS放送タカラヅカスカイステージを無料で見られる期間があるので、るろうに剣心の武田観柳の悪役ゲス男っぷりを是非とも見て欲しい……そして個人的にもっとオススメしたいのはルパン3世石川五エ門役だ……。

ごちゃごちゃと書いてしまいましたが、一体どんな内容なのかまだ何もわからないけれど、わからないうちは憶測で批判する事は避けたい、というのが現在の気持ちです。

 

*1:ってこの当時も大千秋楽の日に感想アップしてたんだな……

*2:うちの本丸に顕現して以来の推し刀剣男士ですもので……

*3:本編開始時にはおそらくとっくにカンストしてる

*4:「右の頬を打たれたら…」のくだりが非常に好き

*5:刀だからそりゃそうなんだけど、幽霊とか妖に近い存在のような雰囲気がある

*6:と言いつつ古今さんのアロマキャンドル買った

*7:科白劇でも多いなあとは思ったけどさほど気にはならなかった

*8:一方でミュのむすはじみたいに、歴史上の人物を華やかかつ濃厚に描き過ぎて本来主役なはずの刀剣男士を完全に食っちゃうみたいな事も起こるから、バランスが難しいんだろう

*9:手で何かのマークを作っていたのは「6」の字を表していたんですね

*10:科白劇の千秋楽で、歌を詠むのは綺伝の時まで取っておきたい、という趣旨のことを仰ってた

*11:話は逸れますが「宝塚は絶対恋愛要素を入れなきゃいけない」なんてことは決してないです……。確かに主人公とヒロインの間に恋が芽生えない作品は少数だけど、珍しいと言うほどでもないです。例えばルパン3世やThunderbolt Fantasyは主人公は原作のままで、ヒロイン格の登場人物と主人公は恋愛しません。前者は全体的に恋愛要素はほぼなかったし、後者は脇キャラの恋愛エピソードはあるけどかなり薄いしおそらく原作に沿ったものだし。第一、禺伝は「宝塚OGの二人が刀剣男士を演じる」のであって宝塚の公演じゃないし!!

【観劇記録】2020年9〜12月のまとめ+α

 

すごく久しぶりの更新になってしまいました。あれやこれやで劇場に足を運ぶ回数は減ったものの、ライブ配信も活用しつつ月1〜2回くらいのペースで観劇しています。昨年5月に出会い、今も沼真っ只中の魔道祖師は、アニメ字幕版をWOWOW*1で全話視聴&先日地上波でオンエア開始された吹替版1話は1日でWOWOWと東京MXとBS11の3回リアタイし、実写ドラマ版の陳情令も前回の更新後に50話完走しました。初中華ドラマでしたが最初から最後まで全くダレることなく、非常に面白かったです。Blu-rayBOX全3巻もしっかり手元にあったりする。ラジオドラマは二期制作中の報、そして一日千秋ってこういうことなのかと待ちに待った原作小説の日本語版は、今年の春に発売するとの告知がありました! わーい!!

 

以下、9月以降に観た舞台の感想です。配信も含め、だいたい見た順に。

※多少のネタバレあり

 

宝塚星組『眩耀(げんよう)の谷 ~舞い降りた新星~』『Ray -星の光線-』

8ヶ月ぶりの東京宝塚劇場星組からでした。劇場に入った時、来られたことが嬉しくてマスクの下で表情筋が緩みっぱなしだった。先に配信で見てたのでストーリーはわかってたんですが、眩耀〜は幕開き直後のダンスのシーンから画面越しに見るそれとは桁違いに美しくて、早くも泣きそうになってました。配信の画面だと舞台の奥行きとか、セットや照明のキラキラ具合が全然わかんなかった。生で観ることにして良かった。お話は初見ではちょっと長く感じられてしまったんだけど、展開を知ってから見ると、クライマックスの主人公達のシーンで涙が止まらなくなりました。宝塚で演じられる「虐げられた民達の抵抗を描く物語」で、主人公と仲間たちがああいう選択をするのは珍しいけど、私はとても好きです。どうかみんな、頑張って生き抜くんだよおお!と心で叫んでました。ヒロインは自分の兄や同胞を殺した将軍に愛人にされた上、子どもまで産まされるという悲惨な目に遭ってるんだけど、当事者の間にどんな感情があったのかは一切描かれずに「彼女はそういう事をされた」と、侍女の口から一言語られただけで、主人公も以降触れなかったのも良かった*2。ラストに「そうだったんだ!」と驚く仕掛けもあり、苦しみを乗り越えた主人公達の姿が眩しかった。新トップの礼真琴さんは芝居、歌、ダンスとも安定の実力に加えてフレッシュなパワーが感じられ、2019年冬のロクモで私の心臓を見事に撃ち抜いた新娘役トップの舞空瞳さんは、とてつもなく可愛くてダンスのキレが抜群! お気に入りの瀬央さんと有沙さんもそれぞれの持ち味を発揮できる素敵なお役でした(嬉)

 

THE MUSICAL CONCERT at IMPERIAL THEATRE(帝劇コン)

ProgramAを配信で見ました。朝夏さんはいつかCHICAGOに出て欲しい。ロキシーでもヴェルマでも。新妻さんの「命をあげよう」「100万のキャンドル」で泣きそうになる。城田・古川組の闇広、劇場で観たのはもう5年前なんだよなあ。今や古川さんもトート閣下だし。井上トートも一度観てみたい。そして花總さんの「秘めた想い(レディ・ベス)」でぼろぼろに泣く。やっぱりミュージカル好きだー!

 

音楽朗読劇『黑世界 ~リリーの永遠記憶探訪記、或いは、終わりなき繭期にまつわる寥々たる考察について~』

雨下の章は劇場、日和の章は配信にて。円盤で見たLILIUMのあのリリーが確かに舞台上にいました。リアルで見てもすごく華奢で、裏腹に眼差しは鋭かった。朗読劇と銘打たれてはいるものの、役者さんたちは動きまくるし歌もたくさんありました。歌手やレミゼ出演経験のあるミュージカル俳優が複数名参加されており、歌のクオリティがガチ。雨下の松岡さん、日和の上原さんの迫力は特に凄かった。好きだったのは、日和のラッカとノクとの話(「家族ごっこ」「血と記憶」「百年の孤独」)。ラッカ役の朴璐美さんの、幼い少女、大人の女性、年老いてからの演じ分けが見事でした。お笑い芸人の方が脚本を担当していた3話「静かな村の賑やかなふたり」もユーモラスかつ楽しいお話で、良い意味で予想を大きく裏切られました。雨下では5話「馬車の日」。仕掛けが秀逸で、ミステリ作家さんの脚本と知って納得でした。それと3話「求めろ、捧げろ、待っていろ」の強烈なインパクトよ……。今回中止になってしまったキルバーンも、いつか上演されるといいな。

 

ミュージカル『ローマの休日

帝国劇場にて。配信のクオリティも満足のいく物だったけど、劇場に行けるのはやはり嬉しい。朝夏さんのアン王女は美しく気品があって、その上すんごく可愛らしかった。新聞記者・ジョー役は加藤さんで、やさぐれつつも王女に向ける視線は優しくてめちゃくちゃハマり役だったし、アーヴィングの太田さんは軽やかかつ華やかで、登場すると周りが明るくなるようでした。お話自体は映画とほぼ同じ。歌も演出も特別派手ではないし、いわゆるハッピーエンドとは少し違うのにとても爽やかで、見終わった後は涙をふきつつも自然と笑顔になってました。

 

宝塚花組はいからさんが通る

※初演の感想はこちら

初演の頃から大好きで、柚香光さんがトップに就任したら本公演で再演して欲しいと願ってました。まさかお披露目でやるとは思わなかったけど! 大劇場に遠征する予定が公演自体が初日すら迎えられず、このままお蔵入りになる事だけはどうかありませんように……と祈る心地でした。七月にやっと幕が開き、二日目の公演をライブ配信で見た時、テーマソングのイントロが始まった瞬間に涙腺が決壊した。テーマソング2番で初演では蘭丸、鬼島が一人ずつ順に出てきた所に、環と高屋敷がそれぞれ加わったのも胸熱でした。少尉は外見の麗しさはもちろん、乙女の夢と浪漫な存在そのものが初演より更に磨きがかかって舞台上に顕現していたし、紅緒さんはパワフルさとキュートさが格段にアップしていたし、鬼島は存在感を増してかっこいいし、気弱でたおやかな蘭丸は男子っぽさがより際立ち……と、続投組が皆それぞれに成長を遂げていて感慨深かった。二代目となった編集長は初演とは異なるアプローチで、よりニヒルというか、パイプを咥える姿がとても似合っていた。環はビジュアルこそ原作そのものではないけれど、歌唱力抜群かつ力強いモダンガールで、見ていて気持ち良かった。二幕冒頭は環をセンターにモダンガール(withしれっといる蘭丸)たちが歌い踊る、かっこよくて痺れる場面なんだけど、他の、特に男性の劇作家だったらおそらくこうはしなかった*3と思うんだよね。天河の感想にも書いたように、女性の登場人物を大切に描いてくれる座付き作家さんの存在はとても嬉しい。出番の増えた高屋敷はめっちゃイケメンだし、吉次さんは凛とした大人の女性で素敵でした。その後、10月に東京公演のAパターンを観劇しまして、久しぶりの1階S席で観たはいからさん、特に少尉と紅緒さんはまさに少女漫画そのもの。ときめきをありがとう。話知ってるのに一幕最後とオーラスでは思わず涙が(近頃とても涙脆くなっております)。トップ娘役・華優希さんのお芝居がとても好きなので、次回の本公演で退団してしまうのがすごく寂しいです……。そうそう、自分が劇場で観た回は、公演前半にだけ出演するメンバーの千秋楽だったので、フィナーレの後に柚香さんから挨拶があったんでした。階段上にいるメンバーたちが見えるように、大羽根を背負ったまま膝をついたり腰をかがめたりするトップさんの姿は、多分初めて見た気がします。

 

宝塚月組 『WELCOME TO TAKARAZUKA -雪と月と花と-』『ピガール狂騒曲』

チョンパで始まる和物ショー、ド派手でいいね! 今回は仏像が出てこなくてほっとした。 特に「月」の場面が幻想的で美しかった。ピガールはコミカルかつお話がきれいにまとまっていて、多少の突っ込みどころ(元ネタの作品がそうなってるのでしょうがない)も気にならないくらい面白かったです。衣装デザインがかなり好みだった*4。男装の女性という役どころの珠城さんは爽やかで上品な青年ぶり、かつ柔和な雰囲気も漂わせていて、ガブリエルが一目惚れするのも無理ないよね。お相手役の月城さんはヒゲの似合う紳士で、途中の超ロングトーンに驚いた。その時のジャック(珠城さん演じるジャンヌの男装時の名前)のクールな反応も含めて拍手ものでした。んで鳳月さん、妻にゴーストライターさせてるような奴なのに、あんなイケおじなんて狡い。他にも暁さんの華麗なダンス、風間さん、千海さん、光月さんらのコミカルなお芝居等々、見どころ満載でした。

 

以上、配信含めても4ヶ月で7回*5と、去年に比べてだいぶ減ってしまった感はあるけれど、どれも観ることができて良かったと心から思えた作品です。それと舞台ではないんですが、中華アニメ映画の「羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)」は2回映画館で見ました。アニメのクオリティがとても高くてシャオヘイがとにかくかわいいし、ムゲン、フーシー等々の登場人物(と妖精)もそれぞれ非常に良いのですが、2021年1月現在、円盤が出るかどうか未定なので、映画館でかかってるうちに見ることを強くお勧めします。冒頭に書いた魔道祖師アニメ吹替版も、地上波の他、複数の配信サイトで見られるので是非!!

 

今年は宙組のアナスタシアが観劇初め。昨年シアターオーブで男女キャスト版を観た時以上に優しく美しいお話であることが強く感じられ、観終わった後は幸せな余韻にしみじみと浸っていました。苦労の多い半生を送りながらも純粋な心を失わない真風ディミトリと、生命力にあふれ、聡明さと気品も備えた星風アーニャ、どちらも予想以上に素晴らしかった。いろいろ拗らせまくってる芹香グレブ*6、食えないところがありつつ陽気なおじさんな桜木ヴラドは、どちらも少し前に比べると役の幅が更に広がっており、ますます今後が楽しみ。ダンスシーンが見所の和希リリーは抜群に有能そうかつ健康的で、どこか気だるく色っぽいマダムだった浅海さんとはまた違った魅せ方でした。マリア皇太后は、2017年の神々の土地に続いて組長の寿さんが同じ役を演じており、心を閉ざした頑なな老貴婦人から、孫娘を慈しむ祖母への変化が鮮やかでした。

 

今年もまた、いろいろな事に気をつけながら観劇を楽しんでいきたいです。いつになるかはわからないけど、また客席降りやコール&レスポンスを心置きなく楽しめるようになる日を心待ちにしつつ。

 

*1:このために加入。宝塚や2.5次元舞台、新感線、タイBLドラマ、映画やコンサート等々も見られるのでQOLが上がってます。

*2:彼女と将軍の愛憎劇を見たかった、という意見もあるけど、自分はそんなの見たくない。もちろん将軍役の愛月さんは冷徹かつ堂々とした風格で好演でした。

*3:編集長と冗談社の面々がセンターで、その後ろと脇で環を含めたモボ・モガが踊る、みたいなのじゃないかと

*4:特に美園さんがポスター画で着てるストライプのドレス!

*5:はいからさん千秋楽の配信を入れたら8回

*6:1幕のアドリブはヒゲダンスだった

【観劇記録】8/6 科白劇 舞台『刀剣乱舞/灯』綺伝 いくさ世の徒花 改変 いくさ世の徒花の記憶(刀ステ)

 

  • 思い切りネタバレありの感想です
  • ところどころ記憶違いなどあるかもです

 

4ヶ月半ぶりのリアル観劇は刀ステからでした。今もいろいろな公演が中止になったりしている中、劇場で観劇することが叶ったのはすごく嬉しかった。

 

科白劇と聞いた時に朗読劇みたいなものを想像していたら、殺陣もあるとか? 一体どんな風になるんだろうとわくわくしていたら、役者同士距離を保ち、密集を避けながらも動く動く。殺陣も役者の動きと映像の合わせ技に加えて講談師*1の語りで臨場感たっぷりに表現されて、全く飽きることなく最後まで見入ってしまった。もちろん、暗り通路や熊本城内などゲーム本編の内容もしっかり再現されていました。改めて演出のすえみっさん凄い……。講談は初めて聞いたんだけど、あんなにスピード感と迫力のあるものなんだね。本編は「別の本丸の特命調査・慶長熊本の記録を、刀ステ本丸のメンバーが読み解く」という形式になっており、本来の『綺伝』とは異なる話であることが明確に示されていました。ほぼ同じ流れを辿ってはいるけれど、細部(?)が異なっているらしい。

て言うかですね。

長義って、超高慢かつスーパーエリートなんですね、という事をまざまざと見せつけられましたです……。慈伝で布バサされまくったり偽物くん騒ぎがあったりで忘れてかけてたけど『(略)美しいが高慢。 より正確に言えば自分に自信があり、他に臆する事がない。(公式Twitter)』なんだよな。放棄された世界のキリシタン大名の頬をいきなり張って「右の頬を打たれたら〜」とか言い放ってみたり、対峙しつつ威圧感バリバリに醸し出しながら脚組んでみたり*2、それでもって歴史や文学の教養もさらっと示したり、殺陣にもどこか余裕が漂うという……生まれた時から英才教育を受けて、それに伴う実力を備えたいいとこの御曹司のようだった。コミカルなところも捨てがたいが、ある意味俺様な面がクローズアップされた姿も実に良い。あと台詞がとても聞き取りやすかった。

歌仙は流石の安定感。今回の出陣メンバーの中で一番刀ステへの出演が多い事もあり、出て来ると舞台が程よく引き締まる感じが頼もしいです。なんというか安心感がある。歌仙もまた、義伝では少々ヘタれてたけど着実に成長を見せていて、精鋭揃いの第三部隊の隊長を任されるのも納得でした。殺陣も力強くスピードがあり、見応え十分。特に終盤……!

この二振り以外は初登場の刀。

にっかり青江は、衣装自体は割とストイックなのにそこはかとない色気が感じられた。刀ミュの、幽霊の逸話を思わせる掴み所のない雰囲気とはまた異なったアプローチだね。

亀甲貞宗は可愛らしくてポップで華やか。原作通り言動は多少アレなんだけどそれすらクスッと笑えてしまうかわいさと軽快さがありました。

獅子王はムードメーカー。陽気ではあるんだけど、むっちゃんの明るさとはちょっと異なり、年長の刀としての落ち着きが感じられた。

篭手切江は歌と踊りのれっすんに勤しみつつも「それらを実戦にも生かして戦う刀」の側面が強かった。今回の出陣部隊は皆、お仕事に関してスマートかつ優秀なんだな。

もちろんトラブルの火種というか厄介ごとを抱えてる刀もいて、科白劇(綺伝)では地蔵行平がそのポジションでした。ショートパンツから覗く脚が眩…じゃなくて、ガラシャとの束の間の交流が微笑ましくもあり、結末を知っている身としては同時に苦しかった。そして舞台上では特に違和感なく少年なんだけど、役者さんご自身のインタビュー写真を見ると性別という概念がわからなくなってくる。

リアルの人間が演じるとどうなんだろうな、とある意味少し不安だったのが古今伝授の大刀。元のゲームでは幽霊というより西洋のゴーストみたいな不気味さと儚さのあるキャラクターで、衣装も結構独特だしなあ、と。けど、舞台上に現れた古今さんはまるで桜のようにどこか浮世離れした美しさながら刀としての強さも兼ね備えていて、あっという間に不安は払しょくされたのでした。

ゲームで慶長熊本の特命調査をプレイした時、内容が非常に好みだったので、刀ステの次回作が慶長熊本とわかってめちゃくちゃ楽しみにしてました。しかし一番びっくりしたのは、物語の核となるであろう細川ガラシャ役を元宝塚の七海ひろきさんが演じるという事。知った時は職場の休憩スペースで声を上げそうになった。男役としての七海さんのお芝居は宙組時代から観ており、発表されたビジュアルも実に麗しいものだったので、心配はしてませんでした。

しかし。

ガラシャ様、想像以上に素晴らしかった……。

高貴で凛々しく、それでいて男っぽくもなく、時に強い情念を露わにしながらも最期までかっこ良くて、群れずに咲き誇る孤高の花のようでした。男役の経験がフルに生かされた見事な女性役で、宝塚ファンとしても嬉しかった*3。後半のビジュアルは一瞬、トート閣下もしくはオスカル?ってなったけど(笑)

他の歴史上の人物は、細川忠興黒田孝高以外は時々誰が誰だかわかんなくなりかけたけど、高山右近はわかったよ! 利休七哲だし!*4

黒田孝高はつまり黒田勘兵衛な訳ですが、ジョ伝のあの人とは別の存在のようでした。けど、科白劇はあくまで「他の本丸」の話なので、綺伝では違うのかもしれない。

 

エンディングの傘くるくるはなく、男声のオペラみたいな曲と共にスタッフロールが流れた後、出演者のお辞儀のみでした。そして、最後に刀剣男士八振りだけで舞台上に揃って一礼した時、あまりの美しさにスタオベで拍手しながら涙が出そうになった。刀ステでそんな気持ちになったのは悲伝のまんばちゃんの真剣必殺のシーン以来だよ……。

科白劇もまた刀ステの一作品であり、大満足といっていい舞台だったけれども、終わる頃には「あの本丸の慶長熊本の物語」、すなわち綺伝も観たいという気持ちが更に高まりました。このエントリーを書いてる今日は大千秋楽配信の日なのですが、ここまで誰一人欠けることなくこの日を迎えることができて本当に良かった。配信を見たらまた加筆するかもです。

 

*1:刀装だそうです。あと「だんし」繋がり。

*2:酒は「飲めない」。

*3:数年前に風共のスカーレットを見た時、女性役にしてはガサツ過ぎて頭を抱えたのが嘘のよう……

*4:♪コールミー利休七哲ー(by戦国鍋) 戦国炒飯も見てます。

【観劇記録】3/21 アナスタシア

 

  • ネタバレ多少ありの感想です

 

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目に映るもの、耳に飛び込んでくる歌声や旋律、何もかもが美しくて目と耳が幸せでいっぱいでした……!

装置や衣装、役者さんのビジュアルはもちろんだけど、特筆したいのは映像。ロシアやパリの街並みや電車の車窓を流れる風景など、どのシーンの背景もこれまで見たことがないくらい鮮やかで美しかった。音楽は、ディズニー映画を彷彿とさせる力強さと開放感にあふれた耳に心地よい曲揃いで、特にアーニャが一幕ラストで歌う曲が好きです。

ストーリーは王道まっしぐらで、こうなるだろうな、こうなって欲しいな、という通りに大部分が進み、盛り上がりに欠ける部分があるのは否めないです。モブを除いて悪人がほぼおらず(グレブは職務に忠実なだけで悪人とはちょっと違うと思う)、革命後の荒んだ状況の描写はあるにはあるんだけど、記憶をなくして天涯孤独で街の掃除などをしながら橋の下で寝る日もあったアーニャも、詐欺師のディミトリとヴラドも、苦労の多い生き方をしてきたであろう割に驚くほど瞳に曇りがないんだよな。楽しめなかったということは決してないんだけど、もっと人や社会の暗い側面が描かれていたり、ハラハラドキドキがあると良かったかなー、とは思う。まあ、この辺は好みの範疇かもです。

それにしてもアーニャとディミトリのちょいツンデレカップルがかわいくて微笑ましくて! 高貴な血筋の女の子と不良青年というザ・王道*1なんだけど、それが良い……いいと感じる人が多いからこその王道なんだよ! はるかーニャもばっちトリ*2も、強さとたくましさを感じさせつつ、まごう事なきプリンセス&(概念的な意味での)プリンスで、ぴったりのキャスティングだった。どちらも舞台上のお姿を拝見したのは初めてでしたが、かたやクリスティーヌやコンスタンツェ、かたやアンジョルラスやアルフレートを演じられていただけあって、歌声の美しさと力強さも素晴らしかったです。

グレブはもっと悪人っぽいのかと思ってたら、血も涙もない冷血漢というよりは、あまりに職務に忠実過ぎて他の生き方を知らない人でした。ロボットみたいだった彼が生命力の塊のようなアーニャに出会い、自分でもよくわからないまま惹かれていきつつも、任務に背くことはできない。「入水しないジャベール」だと聞いていましたが、予想していた以上にそんな雰囲気だった。

ディミトリの詐欺師仲間で年の離れた友人のようなヴラドもまた、宮廷に出入りしながら後ろ暗いことも含めていろいろやってきた(でもって多分、そういうことが原因でリリーに振られた)んだろうけど、ダークな面はほぼ感じられず、歌とダンスで盛り上げてくれました。ビジュアル的にはひげもじゃのおじさんなので、宝塚では誰がどういう風に演じるのか、とても気になる。

宝塚ファンとしてはOGのお二人も見逃せなくて、特にマリア皇太后の麻実さんの貫禄は凄かった。舞台上に現れただけで居住まいを正したくなるような、威厳と気品の漂う皇太后陛下でした。皇太后に仕えるリリーの朝海さんは、貴族なんだけれど俗っぽさもありとてもパワフルでキュート。2幕の序盤で歌い踊る場面がかっこよかった。奇しくもどちらもあさみさん。

 

この大変な中、美しい作品を見せてくださったキャスト、スタッフ、関係者の方々に、ありったけの感謝を送りたいです。観に行けるはずだったいくつかの公演が中止なってしまったこともあり、始まって間もない場面でその美しさにびっくりすると同時に、幕が開いたこと自体が嬉しくて涙が出てきた。しばらく厳しい状況が続くのは間違いなさそうなので、今は家でおとなしく映像を見たり、雑誌やパンフを広げたりして、どの舞台も非難されることなく開演できる時を待ちます。

宝塚版はディミトリが主役になって歌も追加されるので、どんな風になるのかとても楽しみ。どう考えてもぴったりな真風ディミトリ&まどかアーニャにも会いたいよ……!

 

*1:塔の上のラプンツェルとか

*2:この呼び方かわいくていいね

【観劇記録】2/21 浪漫活劇譚『艶漢』第四夜

 

  • 舞台シリーズ観劇は今回初、原作6巻まで読んでる状態での感想です
  • 演出など多少のネタバレあり

 

以前から存在は知っていたものの、機会を逸していた艶漢舞台。やっと観ることが叶いました。

シアターサンモールは記憶が確かなら十数年ぶりに訪れたので、客席こんなだったっけ?ってなったけど、ロビーの雰囲気はちょっと覚えてました。この規模だと後ろの方でもオペラいらないくらいステージがよく見えるなー、なんて思ってたら開演5分前に客席通路からいきなり安里が現れてびっくりした。音の鳴る機器の電源は切れよーみたいな一般的な注意事項が述べられてた気はするが、正直バナナのアレとかセクシーポーズ決めてたりしか覚えてねえ……この時点ですごく解釈一致。そう、まさに自分がイメージしてた安里だよ! ビジュアルが完璧なのはもちろん、登場しただけで周りが明るくなるような華やかさがあり、なおかつ妖しい色香も醸し出していて、開幕前なのに早くも期待値が上昇しまくり。

本編はこれまでの回想を交えながら始まったんですが、詩郎もまた、姿形も動作もそのまんま過ぎて驚愕。表情や姿勢、振り返った後ろ姿、ユルさ全開の着付け、着物から覗く脚のライン等々、まさに360度詩郎だよ……! 安里との絡みに至っては、どの瞬間を切り取っても二次元が降臨してた。独特の台詞回しは最初は多少違和感があったんですが、進んでくるにつれて気にならなくなった。役者さん、先月まで刀ステ維伝の肥前だったとか信じられないどっちもそのものじゃん?! てか詩郎が客席通路を歩いてる時、めっちゃフローラルな匂いがした*1んだけど、あれオフィシャルグッズのフレグランスかな? 通路から少し離れた席でもしっかり香ってきたので、こういう演出を楽しめるのは小規模の劇場ならではだよね。詩郎の友人で数少ない常識人*2の光路郎もまた「バカがつくほどのお人好しで正義感にあふれた天然無自覚タラシの好青年with筋肉美」が三次元に存在しておりました。メイン3人、写真や映像で見た以上に再現率が高過ぎた……。

変顔満載下ネタ上等なギャグ場面はやり過ぎない範囲で、しかしノーフン*3なアレは冒頭でしっかり再現されてました(笑) 男同士いちゃついてる(ように見える)シーンの登場人物の反応など、コミックスの最初の方は2020年現在の観点からするとちょっと危うい所もあるんですが*4、舞台ではその辺多少マイルドにはなってたかと。客席数300弱の劇場という空間もまた、どこか仄暗く猥雑な作品世界にぴったりと合っていました。今回は劇団のお話だったので尚更。

ストーリーは3巻の「人魚の望むもの」を主軸に、4巻以降の展開も交えたもので、三郎太の役回りが一平になってたり、オリジナルキャラクターが出てきて「組」も絡んで来たりとかなり大胆にアレンジされてた。と言っても「人魚~」の根幹の部分はちゃんと残っており、虹海や花魚の内面も元の話より掘り下げつつ、おそらく鏡湖さんにとってより救いのある結末になっていたので安心しました。今回観劇を決めたのは、あの話が好きだということも大きいのでね。まあ「組」が入ってくる分、元の話よりだいぶ凄惨にはなってしまってるんだけども。

オリジナルキャラクターのメンズ劇団員3人は、変に女性陣との恋愛エピソードとか追加されてたらちょっとイヤかもと危惧してましたが、あのくらいなら許容範囲かな。そして、特に重要な位置を占める劇作家の漁火がですね……詳細はネタバレになるので避けますが、能力使う方法がソレって何というかいちいち動揺してしまう……。漁火の他、役者の水稚と団長の潮見もまた、妖しく時に醜悪で美しいアンダーグラウンドな世界の住人として、違和感なく存在しておりました。本来ならもう少し後の登場となる一平(光路郎の幼馴染)もまた然り。

気になっていた水劇*5のシーンは、照明と二階建ての舞台装置、キャストの動き等々により、本当に水中で舞っているようで美しかったです。映像を使わなくてもここまで再現できるんだなあ、と心で感嘆してました。アクション的な見せ場も複数あり、特に体の至る所に短刀を隠し持った詩郎の殺陣はめちゃめちゃ速いし身軽さもあって格好いい! 終盤の詩郎と安里の一騎打ちは視覚的にも美しく、見ごたえありでした。両者とも戦闘服の露出度がかなり高めなのでいろんな意味でハラハラしたけどな……!

 

帰宅してコミックスを棚から引っ張り出して読み返したら、記憶していた以上に元の話はあっさりしており、かつ、舞台でやるにはわかりづらいであろう部分*6もあるので、これを膨らませた上で今後のエピソードも織り込みつつ、世界観を壊さずに舞台として成立されられるって凄いな……と、劇作家の方の手腕に改めて驚かされました。シリーズが4作も続いているのも納得。ってか2016年当時、舞台化が決まったことは公式のお知らせで知ってたのに、何故今までスルーしてた私*7?!

それと、原作ファンとして嬉しかったのはパンフレットもですね。表紙が原作者の尚月地さん描きおろしの、舞台の登場人物全員集合絵というだけでも素晴らしいのに、更に劇団員6人+一平の設定画まで描いてくださっているとか……ありがとうございますまじで(最敬礼)。一般的な冊子の形ではなく、1ページずつ独立したリーフレットになっているパンフは多分劇場では初めて見た。

続きがあることを見越しているような構成になっていたので、第五夜?の発表があるまで、コミックスをおさらい&読んでいない分も読み進めながら待とうと思います。

 

*1:安里もかも…後半くらいまで匂いの元に気づいてなかったので

*2:あくまで作中比

*3:ノーフンドシ。褌締めたくない主義

*4:初出が10年以上前の作品なので……

*5:巨大な水槽の中で人魚の格好をした役者がパフォーマンスをする、みたいなの

*6:虹海もまた親友に憎しみを抱いていた事は鏡湖の夢の中でだけ語られており、現実でもそれを示唆する描写はあるものの、あくまで推測の域を出ない

*7:一作目が発表された頃は2.5自体に興味がなかったんだよう……

【観劇記録】1/9 舞台『刀剣乱舞』維伝 朧の志士たち(刀ステ) (2回目)

 

  • いつものごとくネタバレ全開の感想です
  • 台詞などはすべてうろ覚えなので記憶違いがあるかもです……

 

 

注意:ライビュ・配信などを含め観劇予定の方は、一切ネタバレ無しで臨むことをお勧めします(このエントリーも回避推奨)

 

1回目の観劇感想はこちら。

 

raimu-sakura.hatenablog.com

 

先日、赤坂ACTシアターの東京凱旋公演を観て来ました。普段一般席で申し込んでるので、前から10列目前後+ドセンというマイ刀ステ観劇史上かつてない良席*1に、開演前から戦慄してた。で、1幕終了後、というかオープニングくらいで既に思ってたのは、

 

何、この超怒涛のエンタテインメント……。

 

昨年TDCで観た時は3バルのサイドシートで「見切れ席程ではないものの下手側の端の方で、高いところにいる人&スクリーンはほぼ見えなかった」のと、初回はストーリーを追うだけで精一杯だったのは大きいだろう。けれど、初日から1か月半経過した刀ステ維伝は、更にとんでもない進化を遂げていました。

 

  • 最初に目を見張ったのは照明の美しさ。悲伝の時も思ったんだけど、暗いところと明るいところの対比とか、光の色合いやグラデーションとか、これはBlu-rayの映像?いや、リアルで見てるのか、意味わからんレベルで美しい……と、語彙が追い付かずに頭が混乱してた。
  • てか、殺陣も序盤からクライマックスかってくらい飛ばしまくってる……一度観たはずの話なのに、開始15分くらいでポカーンとなってた。
  • 殺陣のみに留まらず、舞台全体から発せられる熱気、迫力が桁違いだった。座席の違いだけではなかったと思う。
  • 鶴丸は小芝居が多くて、視線をいとも簡単に盗んでいく。「驚きの濃い顔だ」と志士の顔を撫でた後、兼さんの羽織で手を拭いて嫌がられたり、罠初号機を触ろうとして肥前に止められる→肥前の足の間から手を出してまで触ろうとしたり、南海先生(?)の「政府の権限で顕現」て台詞にウケてたり、つっさんと呼んでもらえなくて頬を膨らまして拗ねてたり(そして小烏丸も一緒に頬を膨らませてたり)と、布団に横たわる以蔵を興味深そうに束で小突いてたりと気が付くと何かやってるんですよね……。あと、2幕の「ちょっとちょっと刀剣男士ー」の言い方が、TDCの時よりあっさりしてたかも。残骸くんの場面は、「ザーン」「ガーイ」ソングのコーレス要求(でも一応乗ってあげる肥前&南海先生)でした。やりたい放題が加速している……。それでいて、 戦闘時は華麗かつ威風堂々。あの鶴丸はおそらくとっくの昔にカンストしてる。
  • 時に茶目っ気も披露する小烏丸に至っては更に人外感が増していて、レベルという概念すら意味を持たないのでは……少なくとも怒らせたら間違いなく祟られる。
  • TDC観劇時の感想では堀川君を「高校入学を機にキャラチェンジした元ヤン」と評していましたが、今回の印象は「にっこり笑ってざっくり斬る、曇りなきキラッキラの優等生」でした。それもまた良い。
  • 兼さんが吹っ切れた後に語る想い。最高にかっこ良すぎやしませんか。
  • 以蔵はますます人間離れしていた。何なのあのえげつない速さの殺陣。坂本龍馬の人たらしオーラとか、武市先生の焦燥に満ちた雰囲気とか、吉田東洋の、人の上に立つ者としての傲慢さと圧倒的な存在感*2とか……人間キャストの厚さよ。
  • 東京凱旋では龍馬も結構アドリブを飛ばしてて、序盤で土佐勤皇党に囲まれたとき「騒ぐから2階席のお客さんが『喧嘩? 嫌ねえ』って席を立たれてしまった。(2階席に向かって)もう大丈夫だから!」といった意味のことを土佐弁で言ってたり、2幕の逃亡シーンではお客さんのコートで敵の攻撃を防いで「人のぬくもりは最強ぜよ!」とのたまったり。それだけに、クライマックスの陸奥守との対決シーンで見せた容赦ない視線にぞくぞくした。
  • 肥前は首の布引っ張られたり、むっちゃんと立場が逆だったらのif妄想を繰り広げられたり*3と主に鶴丸にいじられまくりつつも、やはり間違いなく「あの以蔵」の「刀」だった。
  • 前回も書いたように、南海先生は飄々とした演技のバランスが絶妙でした。残骸くん劇場で「ゴキゲンヨウ(裏声)」に「…………ごきげんよう」と思いっきり溜めまくりつつ律儀に返してたのがすごくよいです。そして真剣必殺が格好良すぎ。
  • 陸奥守は更に「あの坂本龍馬の」「刀」でした。複数の面から説得力が増していた。堀川君とはまた種類の異なるキラッキラ、というか、明るさと同時に熱さも感じるのに、暑苦しさはなくてカラっとした明るさ。まんばちゃんは「煤けた太陽」だけれど、むっちゃんもまた、あの本丸の太陽なのかな。

 

この日はカテコでスタオベが。刀ステでのスタオベは自分が観劇した日では初めて*4 だったので、おおー!と周りを見渡しながら拍手してました。こちらのエントリーを書いてる今日は大千秋楽。最後まで怪我や事故などないよう、祈ってます。

 

*1:てか赤坂ACTでこんなに前方で観たことなかった……

*2:しかしカリスマというよりは大会社の重役を思わせるそれで、上に更に社長や会長がいる感じ。上士といっても家臣だからね

*3:前回はスクリーン見切れてたので今回初めてちゃんと見た……ありがとう

*4:ちらほら立ってる人がいたことはあったけど、ほぼ総立ちは今までなかった

【観劇記録】1/7 『家庭教師ヒットマンREBORN!』the STAGE -vs VARIA partⅡ-(リボステ)

 

  • 多少のネタバレあり

 

2020年の観劇はリボステからでした。ヴァリアー戦前半はちょうど観劇が重なっていた時期で「骸*1もまだ出ないしなー」とスルーしていたので、初演ぶりのリボステ。

結論から言うと非常に面白かったです。てか前半戦も舞台で観ればよかった……。

 

以下箇条書きで思い出した順に雑感

  • 前説はルッスーリアとマーモン。写真撮影タイムがあり、しっかり携帯に収めました。ルッス姐さん楽しかった&マーモンかわいいじゃん
  • 前半戦をダイジェストで見せてくれる親切仕様。そうそう、嵐戦はこういう展開だったね、雨戦はスクアーロが大変なことになったんだよな……などとコミックスを読んでた当時の記憶が蘇る。何でスルーしたの私?
  • ローム髑髏ちゃんはそのまんま過ぎるというか、二次元から束の間抜け出てきたようであった……ブロマイド買った
  • 幻術バトルは初演同様映像で。マーモンが宙に浮くところがしっかり人力*2だったり、ボール入れが蔦に巻かれてる所とかは頑張ったな…て感想ではあるけど、演出の不自然な箇所は初演に比べて少なくなってた
  • 回想シーンは演技と映像の合わせ技で、違和感なく見ることができました
  • 多分初めてジャンプを自腹で買って読んだ、骸の再登場シーン。ついに来たー!という存在感と迫力に内心で拍手。槍捌きも見事でした。もちろんブロマイド買った
  • 原作をリアルタイムで追ってた時はそれ程意識してなかったんだけど、ボンゴレファミリーってやはりマフィアというか、結構残酷で時にエグいとこあるよね。それを意図した演出なのか、自分の捉え方が当時と変わったのかはわからないけど、命の扱いがめちゃくちゃ軽い事に少々戦慄を覚えました。チェルベッロ怖いよ……
  • 雲雀のマイペース加減がまさに雲を思わせるそれでした。元々の設定に加えて、役者さんの演技でより説得力が増してた感
  • ランボが相変わらず5歳児でウザ可愛すぎて最早神がかってる……
  • 大きなパーティションと幕の中間のような舞台装置が効果的に使われており、早変わりや急な場面転換が可能になってた。凄い。あれ、内側で動く人も大変なんじゃなかろうか
  • ツナとXANXASのバトルもまた、音と映像と光と役者さんの動きその他諸々によって最大限に再現されており、観てるだけでもハードなのが伝わってきました。あんなん1日2公演もやるってどういうことだ……
  • 犬、柿ピー、ランチア、京子&ハルは役者さんが映像出演(ありがとう)。本音を言うと特にランチアはリアルに登場いただきたかったけど、出番少ないから仕方ないか
  • コミックス通りのあのラストからすると、続編あるのかな?
  • カテコ挨拶はボンゴレ九代目とスクアーロ。九代目のブロマイドは「魔除けにしてもらいたい」そうです(笑…ランブロで1枚来たのでもご利益あるかな)。スクアーロは客席(2・3階席と1階席に分けて1回ずつ)&舞台上それぞれでの「ゔぉ゛ぉい!」コール要請。お辞儀の時、ひとり頭を下げずにくねくねしてたランボの頭を押さえて下げさせてた了平先輩がすごく了平先輩でした。骸のお辞儀さあ……あのフォームは狡い。

 

初演が「面白かった」なら、今回の3作目は「とても面白かった!!」。連載やコミックスを追いかけてたのはもう10年以上前ですが、読んでた当時の記憶が蘇ってきて懐かしくなりました。それなりに長丁場のヴァリアー戦を1つの舞台に収めず前後編に分けたのも*3、各バトルやその背景が時系列でひとつづつ再現されていたので、よかったと思います。脚本、演出、演技その他の全てを駆使した再現の度合いの高さが想像以上で、原作ファンとしても嬉しいステージでした。

 

*1:二次元の推しのひとりです

*2:慣れると気にならなくなってきた

*3:出演者のスケジュールとかいろいろな事情があるんだろうけど