3次元別館。

主に観劇の感想です。2.5舞台が多めでその他のミュージカルやストレートプレイも。

【観劇記録】7/30 グランギニョル(ピースピット 2017年本公演)

  • 美しいと綺麗と凄いしか言ってない感想
  • 観る予定の人は事前にTRUMPは見といた方がいい(LILIUMは見なかったことを後悔している)
  • グランギニョル・TRUMPの致命的なネタバレは避けるor薄い文字で書きますが、観劇予定の方は回避推奨

 

脚本演出が末満さんだし、お話や雰囲気は好みっぽいし、観たことあるor観てみたい役者さん何人か出てるし、と言う訳でチケットを取得。前から5列目以内のセンターブロック、通路近くなどという自分史上トップクラスでいろいろ近い席に果たして生きて帰れるんだろうかと恐れおののきつつ、シリーズについて軽く調べてみると、予習はしといた方が良さそうだったので、ニコニコチャンネルで配信してるD2版TRUMP(TRUTH)を視聴。

話は王道っちゃ王道だし、イニシアチブとか、ちょっとわかりにくいというかあやふやな部分はある。自分が見たのは2013年上演のもの。経験の浅いメンバーも多かったということで、演技も正直上手いとは言えない。けども作品世界自体にすごく引き込まれて、見終わった後も気づくと登場人物たちのことを考えてたりして、惹かれるものがあったのは事実。そして、こりゃ刀ステで折れる折れる言われまくるわけだわ、ってくらい救いがない……。

未来ああなっちゃうのかよ……と深くため息をつきつつも、Twitterに役者さんたちがアップされていた衣装写真を見て「わーどの方も美しいなーかっこいいなー楽しみ過ぎる(^^)」と、浮かれつつ観劇日を迎えまして。客席は95〜98%くらい女性、6月の銀河劇場よりは若干年齢層高め?チラシと一緒に挟み込まれてた用語集に目を通していたら、近くの席から「この人が鶴丸で、この人が光忠で……」みたいな内容が2か所くらいから聞こえてきたので、自分含め刀ステから来てる人も多いのかな。

 

で、開幕。 

 

美しいとかかっこいいとか目の保養とか目が幸せとかそういうレベルをぶっちぎった圧倒的美の暴力にタコ殴りにされてきました

 

始まってすぐのダリ卿の華麗な殺陣に目を全開まで見開き、その後キャストが次々登場して全員集合するオープニングは端から端まで余すことなく美しくて「ここまでだけで7800円分の価値、あったんじゃね?」なんて思ってたからね……。その空間に2時間半さらされ続けた訳ですよ……5点満点で10点いや100点とかそんなレベルの、もはや暴力的なまでの美しさ*1だった訳ですよ(語彙が美しくないのはご容赦ください)。

あとね、殺陣がおそろしい。あるとは聞いてたけどあんなだなんて聞いてない!数も多いしスピードも速いし、複数名で戦ってるシーンだと目が足りない。あのゴシック全開な衣装で剣やら短剣やら素手でガンガン立ち回っちゃうとかなんだそれ意味わかんない凄い。

その筆頭がダリ・デリコ卿。顔立ちがとんでもなく綺麗なのは周知の通りですが、立ち居振る舞いがまさに傲岸不遜な貴族そのもので、殺陣も群を抜いて優美かつ力強く、カンパニーの中心にあって360度死角なしの美しさで頂点に君臨しておられました。それでいて部下を四つん這いにさせてその上に座ったり、ダリちゃんと呼ばせて面白がったり、なんとなくTRUMPのめっちゃ貴族*2なダリパパの片鱗も伺えたりして。任務中に保護した人間の女性、スーのことを「ドブネズミ」呼ばわりしたり、マルコやヴァンパイアハンターたちにも言いたい放題なんだけど、本質的には嫌なヤツじゃないんだな、きっと。

 

以下、思いついた順に印象を。

※致命的な単語や名詞は伏せつつ、結構ネタバレしてるので閲覧注意

 

ゲルハルト:アンジェリコ(TRUMPに登場)の父親。姿形も立ち居振る舞いも、優美そのものな貴族。殺陣もフェンシングのよう。ダリと並ぶとこの方々マジで同じ次元に存在してます?ってくらいの美的破壊力が。ダリに対しては嫉妬、羨望と友情等々の入り混じった、複雑な感情を抱いている様子。そして、同情の余地はあるけど弱いというかヘタレというか……それはひどいよ。最後でちょっと見直したけどさ。

マルコ:尊敬する上司に「ちゃん」づけで呼べとか無茶振りされるし、椅子にされるし、苦労の絶えない下級貴族君。て言うかてめえ…………だから○○はああなっちゃったのかよ……。ってことは△と××ってそういう関係だったのか……。うわあああああああ…………

春林:物腰丁寧なヴァンパイアハンターポジティブダンピール。語り部ポジション兼この話の良心その1。美女をお姫様抱っこに加えて美男まで肩に担ぎあげちゃうとか、物理的にも行動的にもザ・イケメン(カンスト済)。戦闘スタイルは素手で割と少年漫画。

歌麿後天的ヴァンプな犬。過去にいろいろあったもののザ・少年漫画(物理的にはイケメン)。良心その2。ハンター師弟コンビが客席通路から登場し、ラストも通路を通って帰っていく(通路近くの席だったので、近過ぎてあわわわわわとなってた……)のは、元いた人間の世界から吸血種の世界へ入っていく(ラストはその逆)ことを暗に示してるのかな。師弟とも、最後まで無事でよかった……。

フリーダ:ダリの妻。夫との間に3歳になる息子(ラファエロ)あり。美しいだけでなく優しく気高くて、正に麗しの貴族。も少しキツい性格かと思ってた。ダリちゃん果報者だな。中の人は黒薔薇館*3の歌姫と二役。とても綺麗な歌声でした。

スー:デリコ家に匿われている人間の女性(妊娠中)。「ドブネズミ」呼ばわりされても「ドブにゃんこ*4」って返す気丈さが小気味よかった。お腹の子どもの父親がダリじゃないことは二人の様子から察しがついたけど、そういうことだったか……って、スーは最初からあいつの正体を知ってたのかな?入れ替わったのは少なくとも3年前だよね?ううむ……

繭期の子たち(アンリ、キキ、オズ):割と元気に情緒不安定。言ってることもやってることも不穏だけど、同時にどこか哀しい。白一色の衣装+不健康メイクに射抜かれた。特に、みんな愛しちゃう戦闘少女・キキ*5には登場したその時から惹きつけられるものがあって、すごく良かったな。人間であるバルラハに従ってたのは、ダミアンその他にイニシアチブを握られてたから、ってことでいいのかな?実験の話はただむごくて辛い。ひとり逃亡したあの子だけでも幸せでいられたら、と祈らずにいられない。 

他にも、全体的にテンション高めな中で淡々とした冷静さが不気味なバルラハとか、どう見てもヤバそうで実際ヤバいダミアンとか、外道以外の何物でもないような悪役に至るまで、どうにも嫌いになれない何かがあったりもして。パンフレット中でキャストの方がおっしゃってるように、登場人物ひとりひとりが、良くも悪くもとても人間くさいからなのかも。

 

お話の方は、考えていたよりはずっと救いのあるものだった。黒執事のサーカス編*6とか、フランケンシュタイン*7とかの辺を予想してたので、最悪ダリとゲルハルト以外全員死亡くらいは覚悟してたけど、亡くなった方々よりも生存者の方が多いし。と言ってもいくらなんでもアレは酷過ぎるわ!「うーーーわーーーーーー」って唸ったさ、もちろん心の中で!! 

公演チラシの煽りは「貴族の、貴族による、貴族のための残酷劇(グランギニョル)」。終わってから見直して初めて、その意味が見えてきた気がする。ダリは父親の犯した罪の報復を受けて、ゲルハルトも妻に対して貴族であるが故の残酷な仕打ちをして、その結果がああなった訳で……他にもあると思うんだけど、今はこのくらいしか浮かばないや。てかシルエットで出てきた「あいつ」さあ……ほんとさあ……。

未来がどうなってしまうのかわかってはいるけど、それでも最後の最後でダリの取った行動にはすごく救われた。

 

ここまでほぼ褒めまくってるけど、よくわかんない部分もあるし、「厳しく禁じられてる割に結構みんな噛みまくってるよなあ」とか「耽美……に見えるけどそうでもない気もする」とか「名前の付け方が時々どうなんだろう」とか、ちょいちょいツッコミどころはある。ただ、終演後もこれだけいろんなことを考え続けさせられてしまうオリジナル作品は、そうそうなかったりもする訳で。手始めにLILIUM見ようかなー、でもD2版のREVERTHも見たいし、SPECTORや2015年版も気になるし……などとなっている辺り、どうも自分も繭期の世界に魅せられてしまっている模様。

 

*1:V系バンド・Versaillesの曲名(Merodic Thorn ~美の暴力~)より。観劇直後にいろいろ考えてこの言葉が一番しっくり来た……ってくらい凄まじかったんだよおおおおお

*2:めっちゃ貴族でめっちゃ凄くてめっちゃ偉い

*3:このコテコテな名称、もう少し何とかならんかったんかいと思わんでもない

*4:後で調べたらここは日替わりだったらしい

*5:名前はモンパルナスのキキからかな?

*6:作中でもトップクラスの鬱エピソード。ゲルハルトの中の人が昨年、ミュージカル版にジョーカー役で出演されてたね。

*7:今年の1~2月に日生劇場等で演ってたミュージカル。血と涙しかない。