3次元別館。

主に観劇の感想です。2.5舞台が多めでその他のミュージカルやストレートプレイも。

【雑記】「2.5次元舞台にようこそ」読みました

告知らしきもののあった2か月くらい前から楽しみにしてた本。

 

!以下、多少本の内容に触れてます!

 

2.5次元舞台とはそもそも何か。様々な解釈があるが、本書においては云々とする」……というような、いわゆる固い内容の本ではないです。去年の美術手帖2.5次元特集みたいなものを想像してたので、最初は「ちょっと軽くないかな?」と戸惑ったけど、過去に著者自身の手掛けたインタビューの内容がどれも興味深く(特にペダステにまつわるエピソード)、シリーズで上演され続けている作品の紹介も少々駆け足気味ながら多岐に渡っており、全体に楽しめる内容でした。

惜しい点は主に2つ。

・写真がとても少ない

テニミュ、ペダステを中心にたくさんの作品が紹介されており、2.5の舞台に多く出演している方々のインタビューも盛りだくさんなのに、それらの舞台や俳優さんの写真がほとんどない。おそらく色々と制約があったのでしょうが、カラーは難しくても、せめてモノクロの写真は欲しかったな、と思わずにはいられなかった。

刀剣乱舞の項が……??

俳優さんの項で刀ステの演技について触れているし、刀ミュ(みほとせ)観劇のために海外まで遠征されているくらいなので、きっと面白いお話が出てくるだろうと期待していたのですが、表面的な解説と、なぜか原作ゲームの展開の説明に終始してしまっておりました。珠海行のコラムはとても面白かったけど、公演の内容自体にはほんの少ししか触れられていなかったし。意図的にそうしたのか、他の理由があるのかはわかりませんが、刀ステと刀ミュ、それぞれの魅力や見どころなどを筆者の解釈で読んでみたかったので、そこは残念。

それと、過去のインタビューが複数引用されているので、それらを読んだことのある人だと既に知ってる内容が多いと感じるかもです。結構有名と思われる俳優さんでも名前が出てこなかったりするし。ただ、本の性格上その辺りについては致し方ないかな、と(有名どころを余すことなく、しかも平等に取り上げる、なんてまず無理だし)。

 

いくつかマイナスな面を上げてしまったけれど、最初にも書いたように、全体的に読んでいてとても楽しい本でした。

その理由は多分、筆者の2.5次元舞台への愛がこれでもかと感じられるから、ではないかと。

例えば、テニミュ、ペダステ、刀ミュ、刀ステ以外にも、現在シリーズ化されている作品がざっくりと紹介されているんですが、時々ちょっとマニアックな観点だったりするんですね(笑)。茶化してる調子では決してないんだけど、薄ミュでピンポイントで挙がってるのが沖田編の「〜兄妹〜似ていないかい」とか……敢えて触れるのがそれ?! と言いつつ、私あのシーン大好きだし、「見所はカッコいい殺陣です!」とあるよりも「演歌調の歌もあって……」の方ががぜん興味をそそられるのもまた事実(※個人の感想です)だったりもするし。

2.5以外にも長年に渡って膨大な数の舞台を観劇されている*1とのことなので、演劇のジャンルとしては低く見られがちなことについてとか、今後の課題とか、プラスではない面も掘り下げようとすればできたのかな、とは思います。

けども、そういう面には(おそらく敢えて)触れておらず、終始一貫していたのは「2.5次元舞台って面白いよ!こんな作品があるんだよ、こんな人たちが演じてるんだよ!」という想い。まるで著者自身が目の前にいて、次々とマシンガントークを繰り広げているようでした。その熱量にちょっと圧倒されつつも、こんなにこのジャンルをよく知っていて、愛している人がこの本を出してくれたんだなー、と考えるとなんというか嬉しくなった。

今まで、「幅広く舞台ジャンルを扱っている」と謳いつつ2.5次元は別枠扱いな紙メディアやネットコラム*2や、他のジャンルの話だけど「今の人たちも頑張ってるとは思うけど、◯◯さんたちの時代には及ばない」「所詮このジャンルは△△(よりメジャーで世間的に「格上」とされる近似ジャンル)には敵わない」といった類の、懐古厨ご意見番と呼ばれる人たちの「この人ほんとにこのジャンル好きなのかな? そういうのは自分のブログでやってください、てか何でこんなライターに記事書かせたよ編集部……」てなあれこれを散々見てきたからさあ……。

「このジャンルを徹底的に総括する!」というような仰々しいものではないし、もの足りなかった部分もあるけれど、ひとりの2.5次元舞台ファンとしては、「はじまりの一冊*3」がこの本で良かったな、と思えたのでした。

*1:年間300近いこともあったとか。マチソワしまくってフェスやコンクールの短い演目を続けて鑑賞したりすれば可能だろうけど、それにしてもものすごい数

*2:ムカつきはしないけどもやっとはする。自分自身去年までは似たようなものだったけど

*3:※冒頭の「はじめに」より