3次元別館。

主に観劇の感想です。2.5舞台が多めでその他のミュージカルやストレートプレイも。

【観劇記録】12/2 髑髏城の七人 Season月 下弦の月

・記事の後半あたりからネタバレありの感想です

  

【前置き】

劇団☆新感線の舞台は何度か観ていて、髑髏城の七人もサンシャイン劇場でやってた頃のをかなり昔に映像で、ワカドクロをゲキシネで、今回のもSeason鳥を8月に観ておりましたが。天魔王の人外じみた存在感と、蘭兵衛の艶やかさと殺陣の技術等々に圧倒されまくった鳥髑髏の観劇から約一週間後、衝撃の発表が。

 

「Season月は2チーム制で、うち1チームは捨之介が宮野真守さん、天魔王は鈴木拡樹さん*1で、木村了さんと松岡広大さんも出るよ」

( ゚д゚)

 

ちょうどお昼時で社食でスマホ見てたんですが、周りに普通に人いたのに「はい?」って声出たよね……いや待って新感線、それも髑髏城に鈴木さんってまじですかしかも主演がマモとかうわあああチケット取れるのそれ、ねえ?!と、午後も気づくとそのことばかり考えまくっていたことをここに告白します。元々好きな劇団の好きな演目に、刀ステと帝一舞台とナルステの、それも三日月宗近と帝一とナルト役の人が出ると知って落ち着いてなんていられる筈ないじゃんよ*2!普段はあまり読まないインタビューの類にも目を通しまくったりして、期待度が上がりまくったまま観劇日を迎えたのでした。

 

【ここから本題】

公式のあらすじだとちょっと固い内容に感じるかもですが、お話自体は王道の少年マンガ的。お叱り覚悟で超大雑把に言えば「天魔王という悪い奴がいて、主人公の捨之介と仲間たちでそいつを倒しに行く」ってことさえ押さえておけば取り敢えずOKです。

衣装や舞台セットがおそろしく豪華、一対一はもちろん大人数の殺陣も迫力があり、笑っちゃうシーンも多く、座席エリアが回り舞台みたいに回り、幕の役目も果たす巨大スクリーンの映像と連動した演出は見たことのないダイナミックさ*3で、額面だけ見ると高価なチケットも、そりゃこのくらいするよね!と納得。終始圧倒的に華やか、かつアクションシーンも盛りだくさんなので、特に殺陣の多い2.5次元の舞台をよく観る人なら、ほぼ確実に楽しめる演目じゃないかな。シーズンごとの違いや劇場自体の特色などについては、公式サイトなどを参照いただければ幸いでございます。

 

で、今回の「下弦の月」がどうだったのかというと、

端的に言ってすっっっごく面白かった。

脚本演出とキャストが自分のツボに完璧にハマったようで、1幕終了の直後「こういうのが観たかったのーーー!!」と内心で叫びまくっておりました。

サイド席だったものの前回観劇時よりかなり前の方で、オペラグラスなしでも役者の表情がわかる距離だったのもあるかもですが、髑髏城でちょっと泣きそうになるなんて思わなかったよ。

 

以下、キャストや場面ごとに。

 

※ここからネタバレ有りです

 

・捨之介には、その場にいるだけで周りが明るくなるような華やかさがありました。立ち回りも長身が映えてかっこよかった。前半、台詞回しがちょっとクサいかな?という箇所はあったけど、ただ明るいだけじゃなく、過去には並の人間には耐えられないような地獄も経験してきたんじゃないか、と思わせる何かを感じた。天魔王を殺す!と息巻く霧丸を止めようとした時の真剣さはそれ故で、かつて自分自身が通った道だからこそ、あの状況の霧丸にもちゃんと伝わったのかなー、などと想像が広がる広がる。霧丸と一緒にいる時のお兄ちゃんっぽさが微笑ましかった。

・天魔王はすごく人間くさかったです。今まで見てきた天魔王は道を踏み外して人を超越しちゃった存在、というイメージが強かったんだけど、オープニングに「天魔王」と呼ばれるようになった時のエピソードが加わったこともあり、彼もまた、野心家で計算高く、それでいて嫉妬に狂ったりもする一人の人間なんだなあ、と。と言っても全身からみなぎる威圧感や、2幕の最初の方で蘭兵衛に斬りかかられた時の心底嬉しそうな悪い顔、殺戮シーンでの残酷さ、などなどの迫力は凄まじかった。殺陣は大きさと勢いがありつつも正確無比で美しく、一方で遊び心のようなものがカケラもないあたり、実直真面目で超有能だけど遊ぶことは上手くなさそうだなー、捨之介みたいなタイプは嫌いだろうなー、なんて事も考えたりして。最後の戦いで、身に纏った大きな鎧を次々と剥ぎ取られていく、という演出も良かった。

・蘭兵衛は、男性的な色合いが強かった。こちらも、どこか妖のような気配の漂っていた他のバージョンの蘭兵衛より、生身の人間っぽさを感じました。殺陣は、前半は速さと正確さ、力強い一撃で確実に殺る!といったところ。天魔王もそんな系統(ただ、より動きは大きい)だったから、どちらもかつての主の影響をどこかしら受けてるのかもね。後半の襲撃のところでは、わざわざ相手に恐怖を与えるような凄惨な殺し方を選んでいて怖かった。蘭兵衛は行動原理がいまいちよくわからない人、というイメージだったんだけど、今回思ったのは、その時々の自分の美学に忠実なのかな、ということ。「今自分が美しいと思うこと」だけが重要で、過去どうだったのかとかはどうでもいい、というような……自分で書いててだんだんわかんなくなってきましたすいません。極楽太夫との関係は「強い信頼で結ばれた同士」なのかな?と。太夫の側にはそれ以上の気持ちがありそうだけど、蘭兵衛はわかっていつつ応えてはいないんじゃなかろうか(でも多分まんざらではない)。1幕ラストの、白い花が咲き乱れる中での殺陣は感嘆ものの美しさ。

 

とっくにバレてるとは思いますが、天魔王と蘭兵衛大好きです。夢見酒のくだりとか目玉かっ開いて凝視してたに決まってるじゃないですか。

 

続き。

 

・兵庫がとても良かった。學蘭歌劇の帝一を演じてた人が、あの向こう見ずでなんだかんだいい奴で愛すべき馬鹿の兵庫を?と、ちょっと意外だったんだけど、舞台上にはまさに向こう見ずでなんだかんだいい奴で愛すべき馬鹿の兵庫がおりました。荒武者隊のメンバーが惚れ込むのもわかる。太夫に振られるところで汗のことを言われてたけど、そんなに汗臭くはなさそうかな?台詞回しのテンポが良く、飛んだり跳ねたり飛び蹴り食らわせたりの戦闘場面も見ていて小気味よい。無界屋襲撃の直後のシーンが哀しかったのも、若い分、よりダイレクトに悲痛さが伝わってきたことがあるかも。ラストの太夫とのやりとりが微笑ましかった。

・発表時、少年に変わってて驚いた霧丸*4。想像していたよりは大人びていて、少年と青年の狭間にいる、といった趣きでした。霧丸も、戦闘シーンのアクロバティックな動きが見もの。捨之介との関係は年の離れた兄弟みたいで、少女から少年になったことで、より作品全体が少年マンガっぽくなった気がする。正体を明かすところは少女の方がより劇的だけど、こちらは皆の前で口に出したことで、より強く「自分がそうであること」を自覚したような印象を受けた。

・極楽太夫がかわいい、というのを聞いてどういうこと?と思ってたら、確かにかわいかった。粋で気風が良くて情に厚い、素敵な大人の女性ならではのかわいさ。元々兵庫より遥かに精神年齢高そうだけど、それにしてもかなり年が離れてるよな……などと考えていた私が浅はかでございました。あの太夫になら惚れる。最初の方で兵庫を振るところの台詞回しがいかにも新感線っぽい。後半のカチコミの衣装も綺麗だけど、登場した時の花魁姿が美しかった。

 ・贋鉄斎はそう来たか。笑いっぱなしだったじゃねえか。最初の方でウィッグが取れてしまうアクシデント?があったんですが、すぐに笑いに変えておられて流石。ところで雅って言いだした時に某文系刀が浮かんだ審神者はあの場にどのくらいいたんだろう。

・サラサラストレートロングヘア+眼鏡でうさんくささ全開の渡京。この人の登場シーンも大体笑ってた。髑髏城から逃げてくときのあれはもうすごいとしか。

・お兄ちゃんだったり息子だったり色々の兵庫の身内ポジションはそうなったか。しかし名前がいん平ってどうなんだ。初見だとまさか後半ああ来るとは思うまい、ふふふ。敵の中ボスの爪月のとこ……実はお前もかー!ってなったよね(笑)

・生駒さんがちょっと色っぽい。潔癖らしい。いろいろ大変だった剣布さん(合掌)

・狸穴二郎衛門なあ……何か書こうとすると全部ネタバレになるんだよなあ……

 

正直なところを言うと、他の舞台で素晴らしいお仕事を見せてくれた人たちであっても、新感線初参加、かつ比較的若手の方々ばかりであることは確かなので、観る前はどこかに心配な気持ちがありました。けれども実際に幕が上がってみたら、瞬時にしてお芝居の世界にのめりこんでしまい、純粋にこの演目を最初から最後まで楽しんでた。特に素晴らしいと思えたのは捨之介と天魔王、兵庫、極楽太夫でしたが、他のキャストも文句なしに良かったし。クライマックスの「七人」が揃うところ、ちょっと泣きそうになったよ……。

下弦の月の幕が下りた時*5に自分の中にあったのは、最初に太字で書いたように「すっっっごく面白かった!!!」という気持ちでした。

 

つらつらと書きましたが、もし、この記事をここまで読んでくださって、ちょっと興味はあるし平日ならまだチケットあるみたい(※12月上旬現在)だけど高いしどうしよう、と迷われている方に向けて私が言いたいことはこれに尽きます。

観ないのはあまりに勿体ない。高くても決して損はしないから、是非観て。

 

追記

上弦の月ライビュ感想はこちら

下弦の月ライビュ感想はこちら …ほぼ捨之介と天魔王と蘭兵衛について

 

*1:実際は第一報では役名まで把握できてなくて、この位置に名前出てるってことは蘭兵衛の可能性も?どっち?って動揺してた

*2:廣瀬智紀さんは、この時点では名前だけは知っていましたが、映像含めちゃんとお姿を拝見したことがなかったのでした

*3:座席は『キャッツ』のオープニングみたいな感じで動きます。映像は無理やり例えるとしたら若干マニアック?ですが、国立科学博物館のシアター36◯が近いかな、と。流石に360度映像が映し出されるのではないですが

*4:他のバージョンでは沙霧という少女で、捨之介との間にラブっぽい要素もあったりする

*5:あのスクリーンは下りないから正確には閉じた時だけどまあいいか