3次元別館。

主に観劇の感想です。2.5舞台が多めでその他のミュージカルやストレートプレイも。

【観劇記録】1/23 髑髏城の七人 Season月 上弦の月(ライビュ)

昨年12月に劇場で観た下弦の月が自分の中でどストライク過ぎた訳ですが、他の方の感想などを拝見する度に上弦の月も気になってきて、昼公演をライブビューイングで観劇。

正直に言うと、見る前は主に完成度の面でちょっと不安があったんだけど心配なんて全くする必要なかった!こちらも最初から最後まで心から楽しめました。

 

以下、展開や台詞などのネタバレあり、かつ主観と妄想が入りまくった感想です。

 

細部は少しずつ異なるとは言え基本は同じ脚本と演出なのに、別のシーズンの舞台を見ているんだっけ?ってくらい、上弦と下弦で受ける印象が違う。

特に顕著だったのが天魔王で、同じなのは名前と大まかな外見だけ、と言っても過言ではないくらいでした。だってさあ、2幕の口説きの場面の後、エゲレスからの手紙を読んで崩れ落ちながら「生駒ぁ……」って泣きそうな声で側近のお姉さん*1に縋りついちゃうんだよ?!そんで生駒も慈愛に満ちた微笑みで頭撫でてあげちゃうんだよ?!下弦天は陶酔し切った台詞を吐きながらもどこかに冷静な部分を残してそうだったけど、上弦天は終始自分の一挙手一投足に酔ってる。短くまとめるなら「自己陶酔の激しい中二病(精神年齢込み)」といったところ。なんだけど、その情緒不安定で危ういところが魅力でもある。なので、捨之介に鎧を剥ぎ取られて負けた時、自らの身体を抱きしめて蹲る姿がとても哀れでした。鳥髑髏や下弦の天魔王は自害したというのは見せかけ、もしくはうっかり助かってなんだかんだしぶとく生きていそうな気がしてるんですが、上弦天は本当に命を絶っていそう、というか、あんな姿を晒してしまったらもう生きてはいけないだろうな、なんてことも思った。

蘭兵衛は漢くさくてかっこ良かった!ヤンキーっぽいと聞いてたけど、任侠という方がしっくり来るような、どこか陰のある頼もしいお兄さんでした。鳥→下弦の月、と見てきた中で一番、生身の人間の男性っぽさがあった。と言っても蘭兵衛としての姿は、本来の蘭丸の人格を封じ込めて新しい人間として生きるために、意識して作り上げた別の人格のように見えました。1幕ラスト、髑髏城に乗り込む時点では、本気で無界の里を救うつもりだったんじゃないかな。けれども天魔王の前では結局蘭丸としての自分を押さえておくことができず、完全にそっちに取って代わられてしまった。それで、かつて守ろうとしていた無界屋への襲撃が容赦ないものになっていたように思えました。蘭丸にとっては何の未練もない場所だからね。すると最後の「所詮は外道だ」はどういう気持ちで言ったんだろう、無界屋としての自分が少しだけ表に出てきたとか?などと考え込んでしまう。本当によくわかんない奴!*2

捨之介は爽やかで清涼感あふれる好青年。独特の台詞回しが少し言いにくそうに感じられてしまったのは否めないんですが、初舞台であれだけ存在感を出せるのは見事。立ち回りも、身のこなしの軽快さと抜群のスタイルの相乗効果で見栄えが良い。無界の里を訪れるシーンでの女性陣との絡みもどこか初々しく、確かにこの捨之介なら、かつての仲間を「止め」ようとはしても、「倒す(殺す)」という発想には至らないだろうな。

兵庫もまた、ピュア100パーセントのキラキラ青年。それでも兵庫のイメージは全く崩れておらず、良い意味で意表を突かれた。ハイステで座長を勤め続けてるだけあって、身体能力を生かした身軽なアクションも見応えあり。ラストの太夫へのプロポーズの場面では、下弦の方にはなかった「あんたの綺麗な背中に追いついて、追い越して、正面から受け止める」という内容の台詞が加わっていて、最後の最後でときめかせ殺す気かてめえ!と悶えさせられたよ畜生。

その極楽太夫も懐の広さと情の深さを感じさせつつ、最高にかっこいい姐さんでした。下弦の太夫は年齢不詳かつどこかお姫様めいた雰囲気があったけど、こちらはちょっと蓮っ葉で陽気な、みんなのお姉ちゃんといったところ。でも、花魁としての格もちゃんと備わってる。さすがは新感線の看板俳優のひとり。ワカドクロの贋鉄斎はゲキシネで見たけど、沙霧も演じたことがあるというのはびっくり。蘭兵衛との関係は年の離れた姉と弟のようで、恋愛ムードは皆無。太夫と蘭兵衛の関係については、今まで見たことのあるバージョンも「太夫の片想いっぽい」もしくは「憎からず想いあってはいるけど恋仲には至ってなさそう」くらいだったと記憶してるので、明らかにデキてるっぽい二人もちょっと見てみたい*3

霧丸は役者さんの年齢も相まって、下弦よりも大人びたイメージ。パンフでは「17、8の役作りだと無理がある」というような事を言ってたけど、こちらもちゃんとその年齢っぽかった。上弦の方が隠していた出自について、より自覚的だったように思えました。捨之介との年齢差はあまり感じなかったので、兄弟っぽいというよりは濃い友情?のような。今回初めて意識して見た役者さんだったんですが、ミュージカルにも多数出演している方なのね。

Season月自体は実質2回目の観劇だったので、初回は見逃してたり記憶がすっ飛んでた部分もしっかり確認。と言っても「百人斬りって天魔王と対決する前のあのシーンのことなのか。確かに斬る度に贋鉄斎が研いで、霧丸がサポートしてる!」とか「暫鎧剣の仕掛けってそういうことか!」とかそんな超基本事項だけど……初見では圧倒されまくっててついてくだけで精一杯だったんだってば!

他にも、いん平(病気の猿)がじん平(ド○えもん…どっちにしても息子酷い)だったり、贋鉄斎が1ミクロンくらいマトモ寄りだったり、兵庫の「くんろ」の後の「〜ずら」が「〜っぺ」だったりとか、細かい点のいろいろな違いも楽しかったです。

月髑髏については「若気の至り」ということがオフィシャルでも言われていて、上弦はより強くそれを感じました。捨之介は爽やかでまっすぐ、兵庫はピュアでキラキラ、霧丸も清々しい青年で、「青春の煌めき」がそこにあったような*4

*1:というより最早保護者

*2:だがそこが良い

*3:確か花髑髏がそんな感じなんだっけ?ゲキシネ待ってる

*4:天魔王はリアル中二で、蘭兵衛は……なんだろう