3次元別館。

主に観劇の感想です。2.5舞台が多めでその他のミュージカルやストレートプレイも。

【観劇記録】1/24 髑髏城の七人 Season月 下弦の月 2回目(ライビュ)

上弦を見たらやはり下弦ももう一度見たくなるよね、という訳で翌日下弦の月のライビュも。仕事の都合で30分遅刻してしまったので、おきりが狸穴二郎衛門に見初められた辺りからになってしまったんですが……「いい月夜ですなぁ」には間に合ったから良かったとしよう、うん。

 

以下、しっかりネタバレあり、かつ主観と妄想の入りまくった感想です。

 

初回観劇時に全体については書いているので、今回見て改めて感じたことを中心に。

 

前日の上弦の月ライビュでは、捨之介の爽やかさと曇りのない笑顔に口元を綻ばせ、天魔王の情緒不安定さとリアル中二感にどうしようもなく魅了され、蘭兵衛の格好よさに痺れっぱなしだった訳ですが。

この日は捨之介の笑顔から時折覗く絶望の色に目が釘付けになり、天魔王の人間くささとみなぎる悪役パワーに圧倒され、蘭兵衛の美しさと妖しさに倒れそうになっておりました……。

12月の始めにステアラで観たときも完成度は申し分なかったんですが、1か月半を経てとんでもなく進化してない??

 

下弦捨之介は初見の時も、笑顔の裏に闇、というか暗い何かを抱えていそうな気がしていたんだけど、それが更に顕著になっていた。特に、2幕で霧丸に自分の過去を語るくだりの「天は俺が思っていたよりずっと高かった」という内容の台詞では、顔と声色に深い絶望が浮かんでいて、何かを吹っ切ろうとするように明るい調子で発されていた上弦捨のそれとは全く解釈が異なってました。天魔王が自害した後も、上弦捨からはかつての仲間を止めることができなくて悔しい、という気持ちを一番強く感じたんだけど、下弦捨からは絶望が漂っていた。その源が八年前に殿を救えなかったことなのか、それとも他の何かなのかは定かじゃないけど、霧丸がいてくれて本当に良かったなあ……。そう言えば、剣布が捨之介に服を切られるところ、下弦では焦る声に加えてちょっと色っぽいリアクションも入ってたのね。あの捨は相当女慣れしてそうだもんなあ。*1

 

天魔王はスクリーンでアップで見ると、表情筋の動きが想像以上に大きくて驚愕。サイドシートの10列目くらいからでもオペラグラスなしではっきり表情がわかったくらいだからなあ……。リアルに般若面みたいな顔になってたシーンもあった。やはりとんでもない威圧感と悪役オーラを漂わせ、同時に生身の人間であることも強く感じた天魔王でした。そして、どれだけ自分に酔っているようでも、常に冷静な部分が残っているようで、それが却って怖い。いろいろな人の意見なども拝見しつつ下弦天の印象を一言で表すなら「ザ・こじらせエリート悪役」。終始、悪役としての美学みたいなものが貫かれていて、同情なんてさせてくれない。捨之介に敗れて膝をつくところでも、むしろ見事なまでの負けっぷり!と感服してしまった。

 

で、蘭兵衛が美しかった……。もちろん初見でもそう思ったけど、更に妖艶さも増していて、初見からの&アップで見た時の変化に一番驚いた人かも。1幕では、登場シーンの美しさはもちろんのこと、自分を案ずる太夫を抱きしめるところの笑顔が心底幸せそうで、この後の展開を知ってると切なくてたまらなかった。夢見酒を飲まされた後の姿は、絶妙なカメラワークと照明の効果も相まって、この世ならざる者のようでした。殿の骨(?)に恍惚とした表情で口付けるところなんて、何なのそのおそろしくもうつくしすぎる絵面の破壊力は?!下弦蘭からは最初から最後までずっと、無界屋の主人と森蘭丸の両方の部分が存在している印象を受けました。無界屋襲撃のくだりは、狸穴二郎衛門のことはあくまで口実で、蘭兵衛として過ごした時間への未練を断ち切るために、自ら作り上げた里を滅ぼすことが本当の目的だったんじゃないか、なんて事も(今更だけど)考えたり。「所詮外道だ」ってほんとその通りだよ!

 

あと、これは完全に下弦贔屓の人間の感想なんですが。劇場での観劇の時もライビュでも、下弦の月の無界屋襲撃の場面は、血のにおいと死の気配が漂ってきそうに恐ろしく感じられたんですよね……。見え方がかなり違うはずなのに何でかなーと脳をフル回転させてみて至ったのは、あの惨劇を引き起こしたのが「(人間を超越した、人外じみた存在ではなく)中身が人間であることを常に意識させられる天魔王」と「1幕で太夫達と仲良く幸せそうにしていた無界屋の主人と、紛れもなく同一人物だとわかる蘭兵衛」だからではないかな、と。もちろんあくまで私にとってはこうだった、という話に過ぎないですが。

 

と、ここまでほぼメイン3人のことだけ書いてきましたが、兵庫も「ずら」のところでずらのけ姫*2とかかましつつやっぱりなんだかんだいい奴でかっこよかったし、霧丸はかわいいしアクションシーンはかっこよかったし、極楽太夫は綺麗で心身共に強いのにどこか儚げで笑顔がめちゃくちゃかわいかったし、贋鉄斎はやっぱり暴走気味だしさらっと下ネタかますし、渡京はやっぱり胡散臭いし、生駒は使ったトイレットペーパーの端を三角に折るのをやめて欲しい潔癖症だし……うん、やっぱり皆好き過ぎる。

 

*1:このエントリー全体がそうなんですが、どっちが優れてる、とかじゃなく純粋に解釈や演じ方の違い自体が面白いってことね。念のため!

*2:全然誤魔化せてないから、と捨之介に突っ込まれつつ「お前に太夫が救えるか!」とはけていくという、いろいろアウトなアレ