3次元別館。

主に観劇の感想です。2.5舞台が多めでその他のミュージカルやストレートプレイも。

【観劇記録】4/30 ミュージカル『薄桜鬼 志譚』土方歳三 篇

 

・演出面のネタバレ含む感想です

・配信、円盤等で見る予定の方は回避推奨。できる限り前情報ナシで見ることをお勧めします

 

薄ミュは沖田篇を映像で+その後ライブCD聴き倒し→左之助篇をリアルで観劇→斎藤篇を配信で、という順で、今回の観劇は実質4作目。演出家が交代ということで、よく名前を聞く人だけどガラッと変わり過ぎたり、特にヤイサがなくなっちゃったら寂しいな、と、期待半分、不安半分でチケットをゲット。明治座戦国鍋TV忠臣蔵パロの舞台以来なので、約6年半ぶりでした。月日が経つのは早いね……。

 

で、1幕終了後の第一声*1

めっっっっちゃ格好いい。

以前の土方篇を観ていないので他の篇との比較になりますが、余計な部分が削ぎ落とされて、見せ場が際立った印象。ひとつひとつの場面が美しく、どこを切り取っても絵になる。歌える人は歌唱力で聴かせ、身体能力の高い人は殺陣やアクションで魅せまくり、ベテラン勢は芝居で存在感を放ち、と、適材適所の見せ場が主役だけでなく、一人一人に用意されてる。シーンの流れもスムーズでテンポよく進む。

……なんだけど、何かが足りないような気がする。それは、前作までに感じられた「がむしゃらなまでの勢い」かも知れない。それこそ良くも悪くも、とつくんだけれど、「時間の許す限り全部見せてやる!」というような、演じる側、作る側のある種暑苦しいまでのごちゃっとした熱意の塊みたいなものが従来の薄ミュにはあって、それが魅力の一つだった。もちろん、今回の薄ミュに勢いや熱意が感じられない、という事では決してないのですが、スタイリッシュかつスマートになったことが少し寂しく感じられたのも事実。

とは言え、沖田篇や斎藤篇の曲が歌われたり、左之助と不知火の一騎打ちなど、前作を思わせるシーンが随所にあり、BGMには耳慣れた曲も多くて、これまでの薄ミュを大切にしてくれているんだな、とも。

などとつらつら考えていたのも1幕までで、2幕からは怒涛の見せ場の連続に息つく間もなく、終演後はどこを切り取っても「かっこよかった……」以外の感想が出てこないくらい、骨抜かれまくってました……。

 

以下、箇条書きで。

  • 幕開きすぐの全員揃っての歌はヤイサではないんだけど、曲も振付も華やかで美しく、最初から拍手しまくった。公式ツイッターによると【志譚 水鏡】というタイトルなのね。音源欲しい。ここで既にばんばん桜が舞い散ってて、最初から?!とちょっとびっくりした。
  • キャスティング発表の時から合っていそうな気がしていた土方さん。観劇直前に原作ゲームの土方ルートを一通りプレイしてみた。意外だったのは、もっと正統派に素敵なのかと思いきや、このルートの土方さんは敗軍の将で、色々なものを次々と失い、仲間に対しても終始情けないところを見せまくってる。なのにその生き様に強く惹かれるものがある、という人物として描かれているんだよね。舞台ではどう演じられるのか全く予想がつかなかったんですが、こちらもしっかり格好悪くて、そして、最高に格好いい土方さんでした。何度も無様に倒れそうになるんだけど、その度に自分の足で立ち上がって、この人なら千鶴ちゃんも北の最果てまでついて行って支えたくなるよなあ、と納得。あと(若干失礼ながら……)思ってたより歌が良かったです。殺陣も安定。
  • 刀で斬った時に血飛沫の代わりに桜の花が飛ぶ場面があったりと、美しい演出も多かったのですが、特に息を飲んだのは、吸血のシーン。血を吸う前には禍々しい狂気を感じたのに、吸血後に暗転になった時、なんとも言えない悲しい気持ちになって、涙がこみ上げそうになった。それと、綱道さんが千鶴ちゃんを迎えに来たところ。取り囲む新選組の面々が殺気を放ちまくっており、これは怖い……と慄いた。
  • 今回の千鶴ちゃんも歌唱力で聴かせてくれる。左之助篇の千鶴ちゃんは芯は強くても守ってあげたくなる感じだったけど、こちらは土方さんの支えで有り続けた小姓として、凛とした佇まい。篇ごとに性格が少しずつ違ってくるんだな、と改めて認識。2幕の後半くらいになっても着物のままで、洋装はまだかなーと思ってたら、そこでそう来るかー!あれは泣く……。
  • 斎藤一が見違えるくらいに良くなってた。前回は殺陣上手いなー、くらいだったんだけど、殺陣はもちろん、歌も芝居も存在感が格段に増している。この一君で斎藤篇を観てみたい*2
  • 総司、平助、新八、左之助は初めて拝見した人たち。四人とも、特に総司と左之助は去年の左之助篇のイメージがかなり強く、自分の中で違和感が生じないかと危惧してたんですが、演出とメインになるキャラクターが違うからか、すんなり馴染みました。歌はもっと声が出るといいな、という人もいましたが、殺陣は皆さん良かった。あと総司のPAINT IN BLOODのとこが好き。平助の身軽なアクションも大健闘。
  • 山崎さんの配役を聞いた時は意外な気がしたんだけど、観て納得。めっちゃ隠密、というより最早忍び。舞台袖から大きく跳んで現れ、客席通路へとハケていったり、舞台の上段から飛び降りまくりバク宙連発しまくりと、実のところここまで動ける方だとは知らなかったので、すごっっっ…と、ひたすら心で唸っておりました。
  • 山南さんがさ……ほんと良かったです。特に見せ場である変若水の場面の妖しさ、最期の立ち回りが素晴らしく、歌唱力でもお芝居でも安定した、確かな実力を見せていただいた。
  • 近藤さんが出て来るとなんだかほっとする。沖田篇からずっといらっしゃってくれているからかな。
  • 鬼一族は流石の存在感と安定感。彼らがしっかり構えていることにより、新選組が「まがい物、寄せ集めの武士の集団」と評されているということの説得力が増してくる。風間千景の抜群の歌の上手さ、不知火の身軽な体術に、天霧の威圧感。それから父様の、静かな禍々しさと娘への愛情。いずれも見事でした。
  • 1幕ラストとあともう1箇所、新選組と鬼一族が別の旋律を同時に歌うところにゾクゾクした。
  • クライマックスでヤイサの音楽が一部流れて、ここだけなのかな?と思ったら、最後の最後で来た!薄ミュライブ1のバージョンに近いアレンジでした。薄ミュ歴は短い身ではありますが、やっぱり薄ミュと言えばこの曲だなあ、と嬉しくなりました。主に進行役だった大鳥さんが、後ろの方でノリノリで拳を振り上げてたのが微笑ましかった。

 日替わりの挨拶は山南さんでした。昨年の薄ミュでも1回目は山南さんの回だったな(2回目は天霧&不知火)。前回はトレブロにまでしっかり山南さんが入ってたので、今回ももしかして……と購入したトレブロを開封したら、残念ながらいらっしゃいませんでした(笑)。と言いつつ、山崎さん和装、総司和装、ちー様洋装のいずれも麗しくて満足!

*1:基本ぼっち観劇なので心の声です

*2:脚本は大幅にリライトの方向で……