3次元別館。

主に観劇の感想です。2.5舞台が多めでその他のミュージカルやストレートプレイも。

【観劇記録】 8/26 ミュージカル『マリーゴールド』

 

  • 大きめのネタバレは背景と同色の字にするなどしますが、これから観劇予定の方は読まずにスルーすることを強く推奨
  • 観劇する方は事前にバージョンは問わないのでTRUMPと、LILIUMを見ておく事を強く強く推奨いたします(特にLILIUM)

 

 

《ネタバレほぼなしの感想》

「圧倒的美」と銘打たれているだけあり、今回も衣装をはじめとするビジュアルがため息ものの美しさでした。グランギニョルがややパンク要素も取り入れたゴシックスタイルなら、マリーゴールドはクラシックでエレガント。ガーベラなど一部の登場人物の衣装はクラシカルロリータっぽくもあり、かつてゴシック寄りのロリータファッションにハマっていた事もあったりする自分の嗜好にまたしてもクリティカルヒットでした*1。開演前に入手してたパンフレットに加え、終演後、2Lのコンビネーションブロマイドも全種類買っちゃったよ。中身を含めたパンフレット全体のデザインも、封印部分も込みでとても綺麗です*2

歌はどの方も聴かせてくれました。台詞からの繋ぎも違和感なし。個人的には特にエリカ、ヘンルーダの歌がすごく良かったのと、ガーベラの歌声が好き。アンサンブルの方々も、歌唱にダンスに縦横無尽に活躍されており、ミュージカル好きとしても満足。

 

 

《以下、繭期をこじらせた感のあるネタバレ含む感想》

 

TRUMP(Dステ版Truth・配信)→グランギニョル(劇場)→LILIUM(円盤)→TRUMP(Dステ版Reverth・配信)→SPECTER(配信)の順で見て*3、通勤中のBGMをLILIUMのサントラにしたりしつつ臨みました。開幕して2日目だったので、なるべくネタバレは見ないようにしていたんですが、観劇前にサンシャインシティで遅めの昼食をとってたら、近くのテーブルの2か所くらいから「繭期」「ウル(ソフィだったかも)」「すえみっさん」とか聞こえてきて焦った焦った……。

マリーゴールドは割とストレートに「LILIUMの前日譚」でした。初っ端からとある名前が出てくるので、おそらくあの辺の話だろうな、とすぐにわかる。冒頭は楽しいナンバーが続いて多少は明るさがあるんだけど、TRUMPシリーズだし、何と言っても「あの」マリーゴールドの名前がタイトルな訳ですよ。

感じ方は様々と思いますが、シリーズの中でも一番苦しくて、哀しいお話でした(って書いてるうちから泣きそう)。主要なキャラクターのほとんどが多かれ少なかれ苦しみや深い哀しみを抱えていて、それぞれが大切な存在を守ろうとした故に起こった悲劇、というところかな。登場人物の何人もが「誰々を守ろうとした」「誰々は自分が守る」という内容を口にするんですが、ことごとく裏目に出てしまう。LILIUMを先に見ていると結末の予想はつくけれども、誰もが自分勝手で愚かしく、同時に哀し過ぎて、何度も泣きそうになったりこらえきれずに涙した。

 

登場人物ごとの雑感。

  • 出演者が発表された時、一番びっくりしたのがアナベル役の壮さん。宝塚在団中に何度か舞台を観ていたものの、退団後の舞台は今回が初めてだったんですが、娘や妹に、時に重苦しくありながらも深い愛情を注ぐ女性を見事に演じられておりました。歪んでしまってはいるけれど、こんなにも娘を愛している人が、LILIUMで触れられていたような事を言うとは思い難い、と考えてたらそう来ましたか……あぁぁ。しかしアナベルは、エリカにはもうちょっと早くガーベラの出生にまつわるあれこれを話しといてもよかったんじゃないかな……。
  • 母親からは十分すぎるほど愛されていても、生まれた時から屋敷に閉じ込められ、叔母のエリカには疎まれ、外の人間たちから「窓際の化け物」呼ばわりされる*4ガーベラ。終始うつむき加減で姿勢も悪く、暗い言葉ばかり口にする彼女が、初めて外の世界を見せられた時の目の輝きに涙が出そうになった。けれども幸せに近づいたと思ったのはほんの一瞬で、それからは惨い事態の連続で辛かった。ラストシーンの後、彼女がどういう運命をたどるのかがわかっているだけに、ますますやるせない。力強い歌声に圧倒されるばかりでした。
  • そこはかとなくきもちわるさの漂う登場人物紹介とおかっぱ頭に丸眼鏡のビジュアルに、あの東さんがこの役ってマジかーめっちゃ楽しみ、と、わくわくしてたコリウス。彼は良くも悪くも「普通」の青年でした。途中、ちょっと危うい感じになるんだけど、最後の方は素直に格好良かった。キモそうとかのたまっててごめん。いろいろと重い登場人物陣の中では、唯一の良心的存在……はさすがに言い過ぎか?刀ステなどアクションの多い2.5次元舞台への出演経験が豊富なだけあって、ダンスや立ち回りが華麗。
  • エリカはとても気の毒な人だった。母親代わりでもあった姉にいきなり遠ざけられたら、そりゃ原因となったガーベラを簡単には愛せないだろうし、それでもがんばって歩み寄ろうとしている姿が痛々しかったです。めちゃくちゃ難しそうな歌を綺麗に歌い上げておられた。濃いピンク色のドレスがとても似合っており、アナベルと並ぶとそれはそれは美しい姉妹でした。宝塚を退団したトップコンビが他の舞台で共演することはとても珍しいので、その意味でも感慨深い。
  • ソフィはやはりあのソフィで、と言うことはウルは……そうだったのか……。LILIUMでは「てめぇ何て事してくれやがるんだぁぁぁ(怒泣)」だったけど、今回はより心情が掘り下げられており、怒る気持ちは湧いてこなかった。ガーベラへの仕打ちは残酷極まりないものだけど、彼女、というか彼女たち母娘は、今のソフィがどんなに渇望しても得ることのできないものを持っていて、それを見せつけられて苦悩し、絶望する様子が哀しかったです。序盤は明るい少年なのに、正体が明らかになるにつれて妖しさが漂ってきてゾクゾクした。踊っているかのような身体の動かし方が、人外じみた様子に拍車をかけていたのも良かったです。
  • 悪役だと思っていたベンジャミンもまた辛い過去を抱えており……この作品、辛い人(と吸血種とダンピール)が多過ぎるよ!
  • ヘンルーダは、某フランス革命のミュージカルで「私は神だ〜」とか宣ってた某王弟*5と同じ役者さんが演じてるなんて信じられないくらい、気弱だけれど優しいおじ様でした。歌も素晴らしい。けどさぁ……そういう事はもっと早く打ち明けとけよおぉぉぉ!!そうできない事情があったのはわかるけど、打ち明けられさえしていれば、こんなどうしようもない事態にはならなかったのかも、と想像せずにはいられない……。
  • コリウスが務めるケリトン出版社の編集長・クロッカスと編集部の社員の場面が賑やかで楽しい。特に赤いお下げ髪のポーチュラカがかわいかった。まあ最終的には……だけどもさ……。
  • まさかあの子たちがガチで出てくるとは。特に後半で正体が明らかになるあの子は……切ない。

 

歌について補足。アナベルコリウスの「口外無用!」、ヘンルーダがガーベラに歌いかける「花には言葉がある」、「ケリトン出版社」は良い意味でミュージカル感があって楽しかったです。まあ当然、明るめのナンバーは序盤だけなんですが。BGMにはこれまでのTRUMPシリーズでお馴染みの曲に加え、LILIUMの歌がインストゥルメンタルで使われてもいるので、繭期がますます深刻化します(ソース:自分)。

Twitter上で「グランギニョルよりグランギニョル」という感想を見かけて深く頷きまくったほど、誰も救われないし、皆勝手すぎるとすら思う。けれども同時に誰の事も憎むことができなくて、そういう意味では確かに「愛」の物語なのかも知れません。

*1:ポスターを見た宝塚ファンの母曰く『球体関節人形の世界みたい』との事

*2:シリーズの他の作品のものも含むネタバレだらけなので、未見の話がある場合は要注意

*3:後の2つは8月の始めにあった「はじめての繭期」にて

*4:自分がそう呼ばれていることを知っているのは、家の中で誰かが話しているのを聞いたんだろうか

*5:大好きだけどね!