3次元別館。

主に観劇の感想です。2.5舞台が多めでその他のミュージカルやストレートプレイも。

【観劇記録】 3/2 ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』

 

  • 演出などのネタバレありの感想です

 

ロミジュリは宝塚版*1の印象が強くて、正直なところホリプロ版は2013年版観劇時に「キャストは申し分ないしダンスシーンとかはかっこいいんだけど、演出と一部の衣装がちょい微妙なんだよな……」と思って前回のはスルーしてました。しかし、気になる役者さんが複数出ているし、演出がリニューアルされてるなら、と、チケットをゲット。

この回のキャストは写真の方々でした。

 

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最初に思ったのは、演出も衣装も格段に好みになってた!

まず衣装について。大人組のそれが若者組に近い現代寄りのデザインになってました。子供たちがデニムとか着てるのに、母親たちは何でドレスなんだろう?と、違いを楽しむより先に奇妙だったからね……。キャピュレット家の若者たちの衣装が、男女とも赤を基調にしたワイルドかつセクシーなものになってたのも良かった(前回は確か、男子は赤のトップス+豹柄パンツ、女子は豹柄のミニワンピみたいなので、一昔前のヤンキー&マンモス狩ってる人たちみたいだった……)。

演出は冒頭からちょいちょい変わってました。モンタギューとキャピュレットの抗争を制しにくる黒づくめ特殊部隊みたいのがいなくなったり、ロミオが登場時、元カノたち?からの留守録をスルーしまくるシーンがカットされてたり*2、「死」が主張し過ぎずそれでいて静かに存在感を放っていたりと、前回「えー……」と困惑した場面がなくなったり変わっていたりしたので、より作品世界に集中することができました。まあ、スマホに関するあれこれは観劇2回目で慣れたという部分も大きいだろうし、2幕でふたりが別れの一夜を過ごした朝、ベッドがずずずーっと舞台正面に進み出てきて、布団から出たロミオがパンイチっていうのは変わっておらず、今回もそこだけ露骨過ぎて笑いそうになったけど。あと、緑に発光する毒薬の瓶。あれ前回はなかったよね?3階席からもわかるくらい存在感放たなくてもいいから瓶!ってなりました……。

以下、キャストの雑感など。 

  •  大野ロミオはキラキラ王子様でした。遊び人というより、女の子たちから遠巻きにキャーキャー言われつつ、たまにその中の一人とちょっと仲良くなる、くらいのイメージ。2013年に観た城田ロミオより更にその印象が強かったです。生田ジュリエットは純粋培養のお嬢様で、恋に恋する夢見がちな少女そのもの(なんだけど結構肝は据わってるし、突っ走り始めると止まらなかったりもする)。存在そのものが可憐でめっちゃ可愛かった……!二人とも恋に落ちた瞬間から互いのことしか見ておらず、その様子が眩しいくらいにきらめいておりました。「バルコニー」や「エメ」も、歌の技術は申し分ない上で純粋さが際立っており、何度も泣きそうになってしまった。
  • 「恋人って呼んで。それが僕の名前(ニュアンス)」「愛の花だわ!」等々いかにも芝居掛かった歌詞や台詞が多いので、パリスのことを「キザ野郎」と評するロミオに「いやいや、あなたもなかなかですから」と心で突っ込みつつ、これだけ浮かれてたらしょうがないよな、と納得させられてしまうものがあった。箱入り娘のジュリエットはともかく、なんでロミオはキャピュレットへの憎しみが薄い、というより元々抱いていないようにすら見えるんだろう?とか、娘が部屋で倒れて息してなかったらまず医者呼ぶだろうし、その時点で仮死状態ってバレるんじゃ……とか、ツッコミ出すときりがないけどね(苦笑)。歌曲は言わずと知れた名曲揃い。宝塚版のCDを何度もリピートしてます。男女混合バージョンもCD欲しいんですが、どのバージョンも出てない、ということは権利の関係とかで難しいのかな。
  • 渡辺ティボルトからは昏い色気と共に、自分でもどうしようもない憎しみに囚われて苦悩している面が強くにじみ出ていました。今までティボルトは「かっこいいけどぶっちゃけ中二病全開で時に痛々しい」人*3だとずっと思ってたんだけど、ちょっと見方が変わった。歌声の声量も見事でした。
  • 新鮮だったのが黒羽マーキューシオ。イキってはいても育ちのいいお坊ちゃん(大公の甥だからね)な面がしっかりと現れてた印象。宝塚の壱城さんが演じていた雰囲気に近いかな。予想以上に歌唱も安定して聴かせてくれました。三浦ベンヴォーリオは、リーダーとしては少し頼りなさそうなんだけど、「しょうがねーな、俺たちが助けてやるよ」てな調子で皆に慕われてそう。こちらも育ちの良さが感じられて、ロミオと親友というのも納得。「どうやって伝えよう」では、友人二人を一度に失って、急に大人にならなくてはいけなくなった(もう無邪気な子供ではいられない)切なさがこれまでの演出よりも明確だった気がします。
  • ロミジュリはアクロバティックなアンサンブルのダンスも見どころ。「チーム・悪ガキ」なモンタギューの若者たちの「世界の王*4」「綺麗は汚い」などの明るいナンバーと、「チーム・不良青年」なキャピュレットの、舞踏会シーンやティボルトの「今日こそその日」に乗せて踊る、色香の漂うダンスの対比も面白かった。
  • 台詞なし、ダンスのみの象徴的な存在の「死」。前半は全身黒ずくめ+黒の帽子でマントを翻し、影法師のようにひっそりとしたイメージで、後半から徐々に存在感を増していく。2013年のバージョンでは、ロミオとジュリエットが一夜を過ごしたシーンで上半身裸で逆さづりの状態で天井からぶら下がってたりするなど、インパクトが強すぎてポカーンだったんですが、今回は、前に出過ぎず、後ろに下がり過ぎずのバランスがちょうどよかったように思います。
  • 大人たちはベテランぞろいで、どの人の歌声にも聞き惚れていました。特に好きだったのはジュリエットの乳母で、お嬢様への深い愛情もさることながら、「綺麗は汚い」で、からかってくる若造たちを鼻であしらいつつ高らかに歌い上げる様がかっこ良かった。彼女がいたから、ジュリエットはあんなに清らか、かつ、信念を貫く強さのある子に育ったんだろうなという説得力あり。キャピュレット夫人も、娘にパリスとの結婚を促す場面で「高貴な家に生まれた女性の苦しみ・娘への愛情と表裏一体の呪い」を情念たっぷりに表現されていて、ゾッとするくらいの迫力があった。

数年前の観劇時と見方や印象が変わった部分が多くて、そういう意味でも楽しめました。この日がマイ初日&マイ楽だったんですが、他のバージョンと観比べてみたかったなー……って日替わりありの舞台で毎回言ってる気がする(笑)

*1:雪組月組(明日海ロミオ)、星組本公演(A・Bバージョン)を観劇

*2:「遊びなら何人かとつきあった」と歌ってはいるんだけど、あの場面にはモヤっとしたので……

*3:でもそこがイイ

*4:この曲、すごく好きなのです