3次元別館。

主に観劇の感想です。2.5舞台が多めでその他のミュージカルやストレートプレイも。

【観劇記録】7/6 舞台「紅葉鬼」

 

  • 2.5次元含む舞台好き、かつ原作ファンの感想です
  • ストーリーなど多少のネタバレあり

 

この『紅葉鬼』は通常の2.5舞台とは少し違っており、『抱かれたい男1位に脅されています。』(以下、だかいち)というBLマンガの「登場人物が出演する舞台作品」が原作となっています*1。コミックスで出てきた時、面白そうだからこれだけ別にマンガ化しないかなー、などと思っていたら、まさかの舞台化。舞台上でお姿を拝見したことのある役者さんが何名か出演しているのもあって興味を惹かれつつも、迷ってるうちに気づいたらチケット発売日を過ぎてしまい……。今からじゃ取れないよなーと諦めてたら当日引換券があるということだったので、ゲットして観劇して参りました。

ちなみにこちらが原作のコミックス。自分は未視聴ですが、アニメ化もされてます。

 

抱かれたい男1位に脅されています。 (ビーボーイコミックスデラックス) (ビーボーイコミックスDX)

メイン2人だけでなく脇キャラも立っており、芸能界モノとしても面白いんだけど、かなりしっかりBがLしてるので苦手な方はご注意。

※紅葉鬼は作中作なので、BLではないです

 

だかいちの作中で描かれる紅葉鬼の内容は、稽古場でのワンシーンとビジュアル撮影風景、カテコの様子くらい*2で、コミックスを読んだだけではストーリーの全容はわからず*3、登場人物もキービジュアルの経若(つねわか)と繁貞以外は不明という状態。なので、2.5次元舞台というよりオリジナルの作品を観ている感覚でした。

クラブeXは今回初めて訪れた劇場(?)で、奥に小さめのステージがあり、そこから少し低くなった所に円形の大きめのステージが広がっている、という構造でした。観劇した席は注釈付で上手側のかなり端、奥のステージ寄りのブロック。場面によっては後ろ姿しか見えないなんてこともあったんですが、ほぼ360度から見られることが前提になっており、逆に正面からではわからない部分を見ることができたりもしたので、それ程気にならなかった。むしろ、前から3列目以内で舞台との距離がとても近く、役者さんの細かい表情がオペラ無しでも余裕で見えたので、注釈付でこの場所ならかなり良いんでは?というくらいでした。ただ、席によっては前の人の頭でステージのほとんどが遮られてしまった、ということもあったらしいです。注釈付ではない席の話のようで、流石にそれは何とかならなかったんだろうか……。

ストーリーはぶっちゃけ割とよくある話で、どこかで見たような設定のキャラクターが多かったのは否めないです。鬼と人間の対立がある中で、人間として育てられているけど実は鬼と人のダブルとか、我が子と引き裂かれ、愛する人に裏切られて怨霊化した鬼女とか、帝を意のままに操る陰陽師(黒幕)とか、血の気の多いオネエ言葉の鬼とか、長年オタクやってればどこかしらで目にしてるよね*4……。話自体はすっきりとまとまっているし、見せ方が工夫されていて飽きることはなかったけど「誰がどの時点でその事を知ったのか」がわかりづらかったり、含みを持たせていると思われた事が単に言葉通りの意味でしかなかったりと、首を傾げてしまう点はちょいちょいあった。

それらを補って余りあったのが、迫力のある殺陣と巧みな演出、役者さんたちの演技でした。

殺陣は薄ミュや刀ステ並に多い上に速さと勢いもあり、広いとは言えない舞台をいっぱいまで使いつつ複数名入り乱れての乱戦もあったりして、見応え十分。オーソドックスな刀の他に、槍、三日月のような形の湾刀、更に素手や呪術で戦う場面があるなど、バリエーションも様々だった。演出も工夫が凝らされており、客席通路にあたる場所を普通の通路並に出入りに使ったり、暗転を効果的に使用して舞台上にいきなり人が現れたように見せたりと、大掛かりな装置やセットがなくてもこれだけ色々なことができるんだなあと感心しきりでした。

役者さんはアンサンブルも含めどの方も身体能力抜群。特に準主役*5の繁貞の殺陣は速さと大きさのあるもので、人間でいる時も見事でしたが、鬼として覚醒してからのそれは更に力を増していて驚くしかなかった。後で確認したら、ハイステで白鳥沢チームのメンバーを演じてた人なのね。道理で。

今回の舞台で主役になっている経若は、作中作では準主役なので、だかいちの主人公が「経若を演じる俳優の、西條高人」だということに合わせてるのかな*6。人間の身でありながら鬼として育てられている関係上、辛いことも多く、複雑な感情が渦巻いているのを抑え目の演技で表されておりました。二幕の衣装もそこはかとなく色っぽくて◎。そして、すごく思ったのが「舞台にいるのは経若を演じている高人」だということ。俳優としての場面は全く出てこないのに、「高人さん」が確かに存在していた。ただ『紅葉鬼』を舞台化するだけでなく、だかいちという作品の一部であるということがちゃんと踏まえられていて、実際に演じている俳優さん(陣内さん)の力量を感じました。

てか繁貞があんなに真っ直ぐでいい奴だなんて思ってなかったよ!作中で繁貞を演じている俳優、綾木はいわゆる当て馬ポジションで、役者としてのセンスはあるものの、裏では結構ゲスい奴なのでね……。とは言え、「初舞台で主演に抜擢された俳優」であることを裏付けるだけの華々しい存在感はちゃんとあった。表に出る時は裏の顔は当然封印してくるだろうし。

あと、「どこかで見たような設定のキャラクター」なんて書いちゃったけどさ、帝を陰で操る陰陽師こと摩爬(するは)、すごく良かった!登場しただけでどことなく不穏な気配を漂わせながら、帝の忠臣かつ陰で実権を握る者として台詞回しや立ち居振る舞いに整然とした美しさがあり、出てくる度にわくわくしてました。派手な出で立ちで血の気の多いオネエ言葉の鬼、すなわち伊賀も嫌いな訳ないし!湾刀の二刀流が力強く豪快で、良いギャップがあった。

それから、怪力少女で経若に憧れる子鬼のおまんが可愛くてね……。カテコの挨拶がこの子だったんですが、まだ9歳という事にも驚きなのに、見事なボケまでかましてくれて恐ろしい子!経若の育ての親で、繁貞の実の母である鬼女の呉葉も、どこかあどけなさを残しつつ美しかったです。

先程もちらっと書いたように「ただ作中作を舞台化しただけではない」ということは、劇場の外でも随所に現れていました。パンフレットの表紙がコミックス作者(桜日梯子さん)の描き下ろしイラストなのって、昨今ではかなり珍しいんじゃないかな*7?表紙をめくった裏側のイラストも思い切り笑ったし。だかいちが割とこういうテイストだからね!普通のパンフレットとしての情報はきちんと押さえつつ、マンガのファンに嬉しいコーナーが表紙以外にもありました。ランダムブロマイドもメイン二人だけとは言え、役としてのそれと、役者、すなわち高人と綾木としてのオフショットの両方が用意されてるし、アクスタなどのグッズが表紙とは別の描き下ろしイラストだったり、劇場ロビーの窓際に、登場人物のイラストがピンで描かれた色紙が全員分飾られていたり。ランブロは3枚購入したら、綾木稽古場ショット、摩爬、経若(足チラ)&繁貞のが来てくれた。わーい。

極めつけはロビーのスタンド花。原作者さんからの他に、高人のお相手*8である東谷准太からのものがしれっと……チュン太、抜かりないな!と、現物を目の当たりにして笑いを堪えられなかった(訳:ありがとうございます)。

何だかんだ言いつつ、こういった形での舞台化もなかなか楽しいものですね。

*1:ガラスの仮面紅天女的な

*2:アニメでは他にもっとあるのかも

*3:原作者さんのTwitterであらすじが公開されてはいる

*4:近いところだと、春に紅葉ならぬ桜の鬼の話を観たばっかりです

*5:原作中の『紅葉鬼』では主人公

*6:書いてて非常にややこしい…

*7:私が知らないだけだったらすみません…

*8:そちら界隈で言うところの左側の人