3次元別館。

主に観劇の感想です。2.5舞台が多めでその他のミュージカルやストレートプレイも。

【観劇記録】2/21 浪漫活劇譚『艶漢』第四夜

 

  • 舞台シリーズ観劇は今回初、原作6巻まで読んでる状態での感想です
  • 演出など多少のネタバレあり

 

以前から存在は知っていたものの、機会を逸していた艶漢舞台。やっと観ることが叶いました。

シアターサンモールは記憶が確かなら十数年ぶりに訪れたので、客席こんなだったっけ?ってなったけど、ロビーの雰囲気はちょっと覚えてました。この規模だと後ろの方でもオペラいらないくらいステージがよく見えるなー、なんて思ってたら開演5分前に客席通路からいきなり安里が現れてびっくりした。音の鳴る機器の電源は切れよーみたいな一般的な注意事項が述べられてた気はするが、正直バナナのアレとかセクシーポーズ決めてたりしか覚えてねえ……この時点ですごく解釈一致。そう、まさに自分がイメージしてた安里だよ! ビジュアルが完璧なのはもちろん、登場しただけで周りが明るくなるような華やかさがあり、なおかつ妖しい色香も醸し出していて、開幕前なのに早くも期待値が上昇しまくり。

本編はこれまでの回想を交えながら始まったんですが、詩郎もまた、姿形も動作もそのまんま過ぎて驚愕。表情や姿勢、振り返った後ろ姿、ユルさ全開の着付け、着物から覗く脚のライン等々、まさに360度詩郎だよ……! 安里との絡みに至っては、どの瞬間を切り取っても二次元が降臨してた。独特の台詞回しは最初は多少違和感があったんですが、進んでくるにつれて気にならなくなった。役者さん、先月まで刀ステ維伝の肥前だったとか信じられないどっちもそのものじゃん?! てか詩郎が客席通路を歩いてる時、めっちゃフローラルな匂いがした*1んだけど、あれオフィシャルグッズのフレグランスかな? 通路から少し離れた席でもしっかり香ってきたので、こういう演出を楽しめるのは小規模の劇場ならではだよね。詩郎の友人で数少ない常識人*2の光路郎もまた「バカがつくほどのお人好しで正義感にあふれた天然無自覚タラシの好青年with筋肉美」が三次元に存在しておりました。メイン3人、写真や映像で見た以上に再現率が高過ぎた……。

変顔満載下ネタ上等なギャグ場面はやり過ぎない範囲で、しかしノーフン*3なアレは冒頭でしっかり再現されてました(笑) 男同士いちゃついてる(ように見える)シーンの登場人物の反応など、コミックスの最初の方は2020年現在の観点からするとちょっと危うい所もあるんですが*4、舞台ではその辺多少マイルドにはなってたかと。客席数300弱の劇場という空間もまた、どこか仄暗く猥雑な作品世界にぴったりと合っていました。今回は劇団のお話だったので尚更。

ストーリーは3巻の「人魚の望むもの」を主軸に、4巻以降の展開も交えたもので、三郎太の役回りが一平になってたり、オリジナルキャラクターが出てきて「組」も絡んで来たりとかなり大胆にアレンジされてた。と言っても「人魚~」の根幹の部分はちゃんと残っており、虹海や花魚の内面も元の話より掘り下げつつ、おそらく鏡湖さんにとってより救いのある結末になっていたので安心しました。今回観劇を決めたのは、あの話が好きだということも大きいのでね。まあ「組」が入ってくる分、元の話よりだいぶ凄惨にはなってしまってるんだけども。

オリジナルキャラクターのメンズ劇団員3人は、変に女性陣との恋愛エピソードとか追加されてたらちょっとイヤかもと危惧してましたが、あのくらいなら許容範囲かな。そして、特に重要な位置を占める劇作家の漁火がですね……詳細はネタバレになるので避けますが、能力使う方法がソレって何というかいちいち動揺してしまう……。漁火の他、役者の水稚と団長の潮見もまた、妖しく時に醜悪で美しいアンダーグラウンドな世界の住人として、違和感なく存在しておりました。本来ならもう少し後の登場となる一平(光路郎の幼馴染)もまた然り。

気になっていた水劇*5のシーンは、照明と二階建ての舞台装置、キャストの動き等々により、本当に水中で舞っているようで美しかったです。映像を使わなくてもここまで再現できるんだなあ、と心で感嘆してました。アクション的な見せ場も複数あり、特に体の至る所に短刀を隠し持った詩郎の殺陣はめちゃめちゃ速いし身軽さもあって格好いい! 終盤の詩郎と安里の一騎打ちは視覚的にも美しく、見ごたえありでした。両者とも戦闘服の露出度がかなり高めなのでいろんな意味でハラハラしたけどな……!

 

帰宅してコミックスを棚から引っ張り出して読み返したら、記憶していた以上に元の話はあっさりしており、かつ、舞台でやるにはわかりづらいであろう部分*6もあるので、これを膨らませた上で今後のエピソードも織り込みつつ、世界観を壊さずに舞台として成立されられるって凄いな……と、劇作家の方の手腕に改めて驚かされました。シリーズが4作も続いているのも納得。ってか2016年当時、舞台化が決まったことは公式のお知らせで知ってたのに、何故今までスルーしてた私*7?!

それと、原作ファンとして嬉しかったのはパンフレットもですね。表紙が原作者の尚月地さん描きおろしの、舞台の登場人物全員集合絵というだけでも素晴らしいのに、更に劇団員6人+一平の設定画まで描いてくださっているとか……ありがとうございますまじで(最敬礼)。一般的な冊子の形ではなく、1ページずつ独立したリーフレットになっているパンフは多分劇場では初めて見た。

続きがあることを見越しているような構成になっていたので、第五夜?の発表があるまで、コミックスをおさらい&読んでいない分も読み進めながら待とうと思います。

 

*1:安里もかも…後半くらいまで匂いの元に気づいてなかったので

*2:あくまで作中比

*3:ノーフンドシ。褌締めたくない主義

*4:初出が10年以上前の作品なので……

*5:巨大な水槽の中で人魚の格好をした役者がパフォーマンスをする、みたいなの

*6:虹海もまた親友に憎しみを抱いていた事は鏡湖の夢の中でだけ語られており、現実でもそれを示唆する描写はあるものの、あくまで推測の域を出ない

*7:一作目が発表された頃は2.5自体に興味がなかったんだよう……