3次元別館。

主に観劇の感想です。2.5舞台が多めでその他のミュージカルやストレートプレイも。

【観劇記録】3/21 アナスタシア

 

  • ネタバレ多少ありの感想です

 

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目に映るもの、耳に飛び込んでくる歌声や旋律、何もかもが美しくて目と耳が幸せでいっぱいでした……!

装置や衣装、役者さんのビジュアルはもちろんだけど、特筆したいのは映像。ロシアやパリの街並みや電車の車窓を流れる風景など、どのシーンの背景もこれまで見たことがないくらい鮮やかで美しかった。音楽は、ディズニー映画を彷彿とさせる力強さと開放感にあふれた耳に心地よい曲揃いで、特にアーニャが一幕ラストで歌う曲が好きです。

ストーリーは王道まっしぐらで、こうなるだろうな、こうなって欲しいな、という通りに大部分が進み、盛り上がりに欠ける部分があるのは否めないです。モブを除いて悪人がほぼおらず(グレブは職務に忠実なだけで悪人とはちょっと違うと思う)、革命後の荒んだ状況の描写はあるにはあるんだけど、記憶をなくして天涯孤独で街の掃除などをしながら橋の下で寝る日もあったアーニャも、詐欺師のディミトリとヴラドも、苦労の多い生き方をしてきたであろう割に驚くほど瞳に曇りがないんだよな。楽しめなかったということは決してないんだけど、もっと人や社会の暗い側面が描かれていたり、ハラハラドキドキがあると良かったかなー、とは思う。まあ、この辺は好みの範疇かもです。

それにしてもアーニャとディミトリのちょいツンデレカップルがかわいくて微笑ましくて! 高貴な血筋の女の子と不良青年というザ・王道*1なんだけど、それが良い……いいと感じる人が多いからこその王道なんだよ! はるかーニャもばっちトリ*2も、強さとたくましさを感じさせつつ、まごう事なきプリンセス&(概念的な意味での)プリンスで、ぴったりのキャスティングだった。どちらも舞台上のお姿を拝見したのは初めてでしたが、かたやクリスティーヌやコンスタンツェ、かたやアンジョルラスやアルフレートを演じられていただけあって、歌声の美しさと力強さも素晴らしかったです。

グレブはもっと悪人っぽいのかと思ってたら、血も涙もない冷血漢というよりは、あまりに職務に忠実過ぎて他の生き方を知らない人でした。ロボットみたいだった彼が生命力の塊のようなアーニャに出会い、自分でもよくわからないまま惹かれていきつつも、任務に背くことはできない。「入水しないジャベール」だと聞いていましたが、予想していた以上にそんな雰囲気だった。

ディミトリの詐欺師仲間で年の離れた友人のようなヴラドもまた、宮廷に出入りしながら後ろ暗いことも含めていろいろやってきた(でもって多分、そういうことが原因でリリーに振られた)んだろうけど、ダークな面はほぼ感じられず、歌とダンスで盛り上げてくれました。ビジュアル的にはひげもじゃのおじさんなので、宝塚では誰がどういう風に演じるのか、とても気になる。

宝塚ファンとしてはOGのお二人も見逃せなくて、特にマリア皇太后の麻実さんの貫禄は凄かった。舞台上に現れただけで居住まいを正したくなるような、威厳と気品の漂う皇太后陛下でした。皇太后に仕えるリリーの朝海さんは、貴族なんだけれど俗っぽさもありとてもパワフルでキュート。2幕の序盤で歌い踊る場面がかっこよかった。奇しくもどちらもあさみさん。

 

この大変な中、美しい作品を見せてくださったキャスト、スタッフ、関係者の方々に、ありったけの感謝を送りたいです。観に行けるはずだったいくつかの公演が中止なってしまったこともあり、始まって間もない場面でその美しさにびっくりすると同時に、幕が開いたこと自体が嬉しくて涙が出てきた。しばらく厳しい状況が続くのは間違いなさそうなので、今は家でおとなしく映像を見たり、雑誌やパンフを広げたりして、どの舞台も非難されることなく開演できる時を待ちます。

宝塚版はディミトリが主役になって歌も追加されるので、どんな風になるのかとても楽しみ。どう考えてもぴったりな真風ディミトリ&まどかアーニャにも会いたいよ……!

 

*1:塔の上のラプンツェルとか

*2:この呼び方かわいくていいね