3次元別館。

主に観劇の感想です。2.5舞台が多めでその他のミュージカルやストレートプレイも。

【観劇記録】3/30,5/3 舞台『刀剣乱舞』綺伝 いくさ世の徒花(刀ステ)

 

  • 思い切りネタバレありの感想です
  • ところどころ記憶違いなどあるかもです

 

結構長いこと感想はお休みしていたのですが、回数は減ったものの観劇はしっかり続けてます。刀ステ天伝、无伝もステアラで観劇しまして、あの特殊な劇場でしかできない演出の数々が非常にエキサイティングだっただけに、平日だと空席が目立つ状況が悲しかった。それだけに、今回満を持しての上演となった綺伝の明治座公演がほぼ満席だったのは喜ばしいです。

 

前回の「科白劇」の感想はこちら*1

raimu-sakura.hatenablog.com

 

オープニングから、サブタイトルに「綺」の字を頂くにふさわしいものだったことに(声は出さずに)感嘆してました。いつもの疾走感のあるものとはうって変わった、厳かかつ優雅な音楽とともに、刀剣男士と歴史上の人物が扇子を持って舞う様の美しいことといったら。刀ステのオープニングの中で一番好きかも。歌仙とガラシャ様が中心になるところは想定内(嘘です語彙ログアウト状態で見惚れてました)として、長義*2がひとりで中心に立って舞う振りがあってちょっと動揺してましたありがとうございます。

本編はというと、

雅と美と物理的な力強さは全て同時に成立しうるんだね、という事を歌仙を座長に据えた今回の座組で思い知らされましたです。明治座観劇後のツイートより)

今までの刀ステや科白劇でもその片鱗は見えていたけれど、綺伝で見せた姿はそれらを遥かに上回ってた。あの本丸の歌仙*3、とりわけクライマックス付近の殺陣の雅さと力強さには、魅了される以外の選択肢が存在しなかった。持ち主の妻であるガラシャが、見た目の全く異なる刀の付喪神に、文化人としても名高い夫の姿を見出したのも納得でした。そのガラシャ様は美しさはそのままに、心なしか科白劇の時より更に凛としたたたずまいで、力強さを増しているように感じられた。後半の薙刀の殺陣の形がとても綺麗で、どの瞬間を切り取っても絵になってましたね。无伝の高台院様も然りですが、元宝塚の男役の方は美しさと気品に加えて力強さをも兼ね備えた女性の役がハマるよなあ……OGの方々の活躍に退団後も魅せられ続けています。

物語の大筋は科白劇と同じなので、刀剣男士の印象もだいたい同じかと思ったんだけど、二年弱という時間の経過か、いわゆる「個体差」なのか、細かいところでちょいちょい変化はありました。

山姥切長義は高慢かつそれに見合う実力の伴った超エリート*4……なんだけど聚楽第の監査官だったことはバレてるよねおそらく。原作ゲームの声優さんが「嫌味な奴ととられないように、わかりやすく隙を詰め込んで演じた」と言う趣旨の話をされていたことを最近知ったのですが、刀ステでもしっかりそれが踏まえられてて、にやにやしてしまう。慈伝や科白劇はどうだったかよく覚えていないんだけど、本歌なだけあって殺陣の形が写しのまんばちゃんと似てる? 納刀時に一回転させるところもあったし。一度は負けを認めざるを得なかった相手の気配を漂わせた敵(偽物くんの偽物くん)なんて、存在自体が許せないのだろう。ステ長義はどのシーンをとってもやはり理想的な長義でした。

にっかり青江は普段はどこか色っぽさのあるおっとりとした年長刀なのに、戦闘時は鋭い刀と化していて、そのギャップが大変良いです。ミュの人ならざる者*5っぽい青江とはアプローチが全然異なるけれども、こちらも同じ刀だと無理なく思える役作りでした(この辺は科白劇の感想にも書いてたね)。

放置プレイとか時々ちょっと変なこと言うけど、ノーブルで華やかで機転がきいて、それでいてどこか可愛らしい亀甲貞宗、SPECTER再演の臥萬里なんだよなあ……予め把握してなかったら多分わかんなくて、後からパンフ等を見て叫ぶパターンだったんじゃなかろうか。科白劇の時と比べると、軽快さよりも落ち着きを感じました。ゲーム本編や花丸本丸ではコミカルさの方が印象に残ってたので、異なる一面を見られて嬉しいです。

獅子王。初日の感想をちらっとTwitter検索してみたら何かあるっぽかったので期待して行ったら鵺!確かに真剣必殺の立ち絵では口開けてるけど、動き回って一緒に戦うのか鵺……!!科白劇の感想を読み返したら「年長の刀としての落ち着きが感じられた」とあり、綺伝の獅子王にもしっかりそれは存在しつつ、ムードメーカー的というか元気で賑やかな印象がより強かった。亀甲さん同様、別の本丸ゆえの個体差かな。小烏丸の真似が上手過ぎ。

歌って踊って「すていじ」に立つ日を夢見る篭手切江は、真剣必殺の殺陣がかっこいい。初見の明治座では座席の関係で見えづらかったんですが、二回目の新歌舞伎座ではストリートダンスを思わせる華麗なアクションをしっかり目に焼き付けてきました。刀ステにおける脇差や短刀の殺陣は、全体にアクロバティックなものが多くて楽しいです。

立ち絵ではどこを見ているのかわからない、幽玄な妖しさの古今伝授の太刀と、「姉上」と逃避行を繰り広げ、どこか危ういものを持った地蔵行平は、佇まいといい台詞回しといい、イメージドストライクなんですよね。どちらも西洋のフレグランスよりお香の匂いがしっくりきそうな*6

 

ここまでは良かったことについて書き倒してきましたが、気になったことも。

明治座の座席。ファンサイト先行のA席だったんですが、3階席の最前列で手すりが目線にかかってしまい、見切れ席では?というレベルで舞台の一番低い部分が隠れてしまっていました(当方は身長159センチで女性の平均の範囲かと)。事前に見切れ席と告知された上でなら割り切れるけど、多少見づらいってレベルではなかったよ……。Webアンケートにしっかり書いておいた。新歌舞伎座はサイドシートで少々見えない部分はあったけど最初からサイドシートとして売られてたし、その代わり花道は綺麗に見えて、座席に座布団が置いてあって目線が多少高くなったので、それほどストレスは感じませんでした。

作品については、歴史上の登場人物、ちょっと多過ぎない? 細川ガラシャと忠興夫婦、夫婦とキリシタン大名たちの両方と関わりのある高山右近と、これまでの作品にも登場している黒田孝高は必須として、その他のキリシタン大名が4人、更に綺伝では天正遣欧少年使節まで加わると流石に誰が誰だかわからなくなりかけたし、出番と台詞が増えた分*7、全体がやや冗長になってしまっていたのは否めない。无伝の真田十勇士もそのパターンで、各々のキャラクターが立っていて魅力的でも、この人たち決して嫌いじゃないんだがそれより本筋を先に進めてくれ……と思っちゃったんだよな*8。それと、映像も多用し過ぎかな。背景や演出上の効果はいいんだけど、生身の人間が舞台上で演じるか、いっそモノローグでもよかったのではという箇所に至るまで、出演俳優の演じた映像を使っていた場面がいくつかあり、そこだけ安っぽく見えて残念でした。好みの問題かも知れないけど。

良かった部分とそうでなかった部分を両方述べましたが、全体の満足度は高いです。科白劇と大筋は同じ、と先述しましたが、大人数対少数の殺陣や真剣必殺など、この座組で初めて「完全な形のもの」を見ることの叶ったシーンもあり、夫婦の愛憎の顛末が歌仙のモノローグで語られる終盤では泣きそうになった。明治座でスタオベに加わろうとしたら、危ないからと係の人に止められたのが残念だったくらい。新歌舞伎座では堂々と1階席の人たちと一緒に立ち上がって拍手できたので、その時の無念は回収できた。そして、新歌舞伎座で観劇した5月3日はちょうど刀ステ6周年にあたる日でした。把握していなかったので当日知って驚いた。終演後に歌仙役の和田さんから6周年の挨拶*9もあり、刀ステと知り合って舞台を積極的に見るようになってからそれだけ経ったんだなあ……と、感慨にひたっておりました。

 

(6/2 追記)

大千秋楽もライブビューイングで観ました。刀ステの千秋楽は虚伝初演からずっとライビュもしくは配信で見ていて、今のところ皆勤です。映像だと表情が細かく見えるのが良いね。オープニングでソロで舞うところの長義、最後ににやっと笑ってたのか心拍数やべえとか、地蔵ちゃん科白劇以上に可愛すぎやしないかガラシャ様が姉上って呼ばせたくなったのも納得…と心で頷いたりとか、青江ちゃんの真剣必殺のキメの顔が実に艶っぽくてすてきとか、クライマックスの歌仙とガラシャの戦いのシーンも大画面だとまた違った迫力で瞬きも忘れて見入ってしまったり。エンディングではあー綺伝とうとう終わっちゃうのか寂しいな……と早くもロスに突入してたんですが、曲の最後の方で刀剣男士たちと白い衣装の歴史上の人物たちが眩い光の中に並んでるのを見た時、美しさと、ここまで来られたんだな、という感慨で涙が込み上げそうになりました。挨拶する役者さんたちは清々しい顔をされていたし、特に座長の和田さんは歌を詠まれた後*10、一瞬脱力したような顔をされていて、出演者も舞台には立たないスタッフも、おそらく初日(だけじゃなく稽古など準備期間も)から千秋楽まで、観客には想像もつかないようなプレッシャーと戦って来られたのだろうな、と。

次回以降のあれこれについては、取り敢えずびっくりした。七海さんが歌仙というだけでも幻覚じゃないよね?って我が目を疑ったのに、大倶利伽羅役として彩凪翔さんの名前を見た時には映画館で声出そうになったよ……。自分は宝塚ファンではあるけれど刀ステのファンでもあるので、既に退団されているとは言え、刀ステに元宝塚の男役さんが二人も刀剣男士として出演されるという事は、まだ戸惑いの方が大きいです。女性の役者さんが刀剣男士を演じること自体に異論はないし、更に元宝塚の男役のお二人なら不安要素は少ないけど、どうして刀ステの中でそれをやるの?という(彩凪さんは退団後の活動は把握してないけど宝塚時代結構好きでした)。既にある本丸とは全く別の、新しい本丸の物語を宝塚歌劇団の公演でやるって言われたなら特に抵抗なく受け入れられたと思う*11けど、刀ステとなると今までとあまりに方向性が違い過ぎるので。OGの誰々に出て欲しいなど盛り上がる事が悪いとはまっっったく思いませんが、ヅカファンかつ刀ステのファンでも純粋に喜んでる人間ばかりではないんだよ……。しかも出陣先が源氏物語の世界ってなんなんだ??戸惑いまくりつつも改めてビジュアルを眺めると、禺伝の歌仙さんも伽羅ちゃんも非常に美麗で見とれてしまったし、宝塚ファンではなさそうな人が今回の試みについて好意的にとらえておられると、結構嬉しかったりもします。

今回の件が賛否両論というか、かなり強めの批判も出るだろう事を制作サイドが予想できなかったはずはないので、思い切った方向に打って出ざるを得ない何かがあるんだろうな、以上の事は言えないです。けど、脚本の末満さんは原作のあるゲームを舞台化する事だけでなく、歴史を題材としたフィクションを描くという面においても信頼のおける劇作家なのは確かだし、自分は顔も名前も把握していない人がほとんどだけど、他のスタッフの方々もそうだと思っています。刀剣男士を演じる七海さん、彩凪さんも、反対意見に晒されるのはわかっていただろうし、いい加減な気持ちで引き受けた訳では決してないでしょう。と言うか、彩凪さんを知らない方は6月末にCS放送タカラヅカスカイステージを無料で見られる期間があるので、るろうに剣心の武田観柳の悪役ゲス男っぷりを是非とも見て欲しい……そして個人的にもっとオススメしたいのはルパン3世石川五エ門役だ……。

ごちゃごちゃと書いてしまいましたが、一体どんな内容なのかまだ何もわからないけれど、わからないうちは憶測で批判する事は避けたい、というのが現在の気持ちです。

 

*1:ってこの当時も大千秋楽の日に感想アップしてたんだな……

*2:うちの本丸に顕現して以来の推し刀剣男士ですもので……

*3:本編開始時にはおそらくとっくにカンストしてる

*4:「右の頬を打たれたら…」のくだりが非常に好き

*5:刀だからそりゃそうなんだけど、幽霊とか妖に近い存在のような雰囲気がある

*6:と言いつつ古今さんのアロマキャンドル買った

*7:科白劇でも多いなあとは思ったけどさほど気にはならなかった

*8:一方でミュのむすはじみたいに、歴史上の人物を華やかかつ濃厚に描き過ぎて本来主役なはずの刀剣男士を完全に食っちゃうみたいな事も起こるから、バランスが難しいんだろう

*9:手で何かのマークを作っていたのは「6」の字を表していたんですね

*10:科白劇の千秋楽で、歌を詠むのは綺伝の時まで取っておきたい、という趣旨のことを仰ってた

*11:話は逸れますが「宝塚は絶対恋愛要素を入れなきゃいけない」なんてことは決してないです……。確かに主人公とヒロインの間に恋が芽生えない作品は少数だけど、珍しいと言うほどでもないです。例えばルパン3世やThunderbolt Fantasyは主人公は原作のままで、ヒロイン格の登場人物と主人公は恋愛しません。前者は全体的に恋愛要素はほぼなかったし、後者は脇キャラの恋愛エピソードはあるけどかなり薄いしおそらく原作に沿ったものだし。第一、禺伝は「宝塚OGの二人が刀剣男士を演じる」のであって宝塚の公演じゃないし!!