3次元別館。

主に観劇の感想です。2.5舞台が多めでその他のミュージカルやストレートプレイも。

【観劇記録】4/10 カンパニー/BADDY(宝塚・月組)

・自分用メモに近い感想です

・ネタバレあり+所々認識の間違いがあるかもです……

 

(5/8 BADDYについて千秋楽ライビュ後の感想追記) 

 

お芝居の『カンパニー -努力(レッスン)、情熱(パッション)、そして仲間たち(カンパニー)-』は現代の日本の話、ということもあって、正直なところあんまり期待してなかったんですが、バックステージものとして素直に面白かったです。宝塚的な華やかさはあんまりないし、リピートしたいかと聞かれたら考えてしまうんだけど、ストーリーに破綻がなく、涙が出そうになる場面もあったりして、良い意味で安心して観ることができた。

 

・珠城さんのサラリーマンスーツ姿が似合い過ぎ。実直真面目ないい人、という役どころがしっかりハマるなー

ツンデレバレエダンサーな美弥さんありがとうございます無限大

・愛希さんの出番が少なめでちと残念。美波はヒロインのポジションではあっても、役としては紗良や由衣の方がインパクトがあるからなー。ダンスシーンは美しかった。

・今回の公演で退団の早乙女さん。役とご本人の状況を重ねて見てしまうところがあって、最後の方の紗良から美波への台詞でちょっと泣いた

・スポーツトレーナーの由衣はリアルに応援したくなる

・那由多は軽くてチャラい人かと思ってたら、等身大寄りの悩める青年だった

・蒼太@暁さんのバレエシーンが見事!

 

 

で。

『BADDY(バッディ)-悪党(ヤツ)は月からやって来る-』ですよ。

星逢一夜の切なさに涙しまくり、金色の砂漠はマイ嗜好ドストライクで、神々の土地では作品自体のパワーと目を見張る演出の数々に唸らされまくり、最近映像で見た月雲の皇子の世界観と台詞の美しさに感嘆しつつまた泣き……と、つまるところウエクミ作品ファン*1なんですが。

ショー作品に最初から最後までひと続きの明確なストーリーがあるのがそもそも極めて珍しく*2、しかもそのストーリーが、

「全面禁煙の平和な地球に乗り込んできたヘビースモーカーの大悪党・バッディ、対するは正義の捜査官・グッディ!」

……なんぞそれ!?

開幕してみたら海老のかぶり物や銀色フェイスの宇宙人、極め付けは大羽根背負ったトップスターがサングラスに咥えタバコという、予想の遥か斜め上を行くビジュアルと、賛否両論入り乱れる感想の嵐で、期待も不安もパツパツの状態で観劇。 

 

うん。

何だこれ。

めっちゃ面白い。

しかし、口の中に入れてみたもののどう噛み砕けばいいのコレ??

 

無理やり他ジャンルで例えると

「同級生」鉄道少女漫画」の後に「2週間のアバンチュール」の単行本*3を読んだ感じ、というか。

ラクダ使いと王子の夜」収録のアレやソレ*4とか。

「箱の中」「檻の外」の直後にうっかり「鈍色の華*5」読んじゃったとか。

魍魎の匣」と「どすこい。」とか。

それくらいの「えっ、どうしよう」感だと思っていただければと。

 

しかし、最初から最後まで型破りなのに、よくよく考えてみれば見事に宝塚的だったりもするような。禁煙の地球でタバコふかしまくり、性別問わず美人といちゃつき、食い逃げ、パスポート偽造、銀行強盗とやりたい放題だけどどこか憎めない悪党・バッディと、優等生のヒロイン・グッディのあれやこれやに、バッディの相棒の中性的な美人・スイートハートや、グッディの同僚の捜査官・ポッキーも絡んできて……と、ストーリーは王道の少女マンガ的でもある。中詰の盛り上がりも、ロケット(ラインダンス)も、大階段の男役群舞も、トップコンビのデュエットダンスもちゃんとあり、そのどれもが痺れるほどかっこいい。

 

先述の通り、キャラクターは皆魅力的。

バッディは悪党の割にどこか間が抜けていて、もっとオラオラしてるのかと思ったら、グッディの存在に心乱されたりするピュアなところも。

地球の捜査官・グッディは文句なしにキュートでかっこいい。

密かにグッディに想いを寄せるヘタレ捜査官のポッキーは、囮捜査でオマール海老になったり、えっ、それ?!という悪事に手を染めたりと予測不可能だし、公私共にバッディのパートナーで性別不詳の麗人、スイートハートのことが嫌いなオタクなんて果たしているのかしら??

そして、傷を負ったバッディの手下の一人と、その手当てをする地球の王女、という、こっちの方が宝塚の王道では?なカップルのストーリーも同時に進行していたりして。

衣装も良かったな。特に中詰の「悪いことがしたい いい子でいたい」のチーム・バッディの黒と、チーム・地球(ちなみにこの場面のがグッディの衣装で一番好み)の白のコントラストや、バッディ一味のえんじ色のスーツの色合いが美しかった。

ダンスシーンで特に印象的だったのは、ロケットとデュエットダンス。通常、軽やかで華やかなロケットの場面で、よりによって怒りの感情を爆発させる、なんて見たことない。しかも歌詞が「私怒ってる、生きてる」という内容でコーラスは女声のみ。どういう種類のものかまでは掴みきれなかったけども、自分の中で強くざわめくものがあったのは事実。いつもは幸福感あふれるはずのデュエットダンスまでもがストーリーの一部で、「許せないのに、嫌いなはずなのに、でも……!」というせめぎ合いが表現されるって何事なんだろう。ラストはいつも通りの大階段のフィナーレかと思いきやそんなはずなかったね。あのオチは笑った。

 

ここまでほぼ絶賛してるけど、一応人生の半分以上宝塚ファンをやってる身としては「面白いけど、でも宝塚でコレなの??」って思う気持ちが全くないかというとそうとも言い切れず、まだ整理しきれない部分がある。ただ、もう一回くらい観ないと自分の中での落とし所がわかんないかも……なんて考えてる時点で、既にこの超異色なんだかそうでもないんだかわかんないショーに何だかんだ魅せられてしまってるのかも知れない、とも思うのです。 

 

(追記)

上のエントリー書いた以降もBADDYのファンアートにいいねをつけまくったり、感想漁りまくったり、「バディスイとスイポキのどっち派?」という某所でのアンケに「あふれる無敵感のバディスイかなー」などとノリノリで答えたりとなんだかんだBADDYが頭から離れず、前日に映画館の座席を滑り込みでゲットして千秋楽ライビュ見ました。

前回はゆっくり観る余裕のなかった部分を楽しみつつ、気づいたら「悪い事がしたい いい子でいたい」のとこでガチで泣いていた……。

未だにこのショーのことを消化しきれていない自分がいる*6のは確かなんですが。

キメるところはかっこいいんだけど、時に情けなくて憎めないバッディ、怒りに燃えているその時に嬉しくてたまらない!という表情を浮かべるグッディ、「浮気は恋のスパイスだけど、近頃悪事のスケールが小さすぎやしませんか?」なんて不機嫌も露わに歌う、妖しい魅力全開のスイ様、情けないを通り越してダメダメだけどだがそれがいいポッキー、台詞もなく静かに展開するクールと王女の恋、要所要所で登場する銀色フェイス宇宙人で銀行員のヤッティなどなど登場する人々のことや、エネルギーに満ち溢れた怒りのロケット、かっこよ過ぎる男役群舞、鬼気迫るデュエダン、やっぱりバッディはこうでなくては!なラスト等々が、今も頭に残って離れない、というのもまた同様に確かだったりするのです。

*1:ある人びとは未見

*2:知ってる限りではノバ・ボサノバくらい

*3:決して嫌いじゃない

*4:決して嫌いじゃない・その2

*5:初出の短編しか読んでないんだけど今ちょっと調べたら続編もあるのね

*6:それなりに長く宝塚を観てきてるから、戸惑っている部分が多いんだと思う