3次元別館。

主に観劇の感想です。2.5舞台が多めでその他のミュージカルやストレートプレイも。

【観劇記録】12/23 脳内クラッシュ演劇「DRAMAtical Murder」

 

  • 原作ゲームファン(PC版のみ、アニメ未視聴)の感想です
  • 多少ネタバレあり

 

ニトロプラスキラルTwitterで舞台化を知った時は「ドラマダ舞台でやるんだ! しかも攻略対象4人+蓮ルートが日替わり?! 演出が中屋敷さんなら期待できるかな」と純粋にわくわくする気持ちと「いやしかしあれ、がっつりボーイズがラブしている*1のに、舞台でやっちゃうの? マジで?」という不安がせめぎ合い、前売り券の購入は見送っていました。と言いつつも割と評判は良いようなので、ゲームで好きだった、かつ日時の都合のつくノイズの回を当日券で観劇することに。

 

率直に言うと、

・すごく良い!

・良いor悪くはない

・頑張ってるなあ……

・もうちょっと何とかなんなかったんだろうか……

が同じくらいの割合でせめぎ合う舞台でした。

 

※以下、ネタバレ&少々辛口の意見を含みます

 

演出は全体に良かったです。特に「ライム」という仮想現実空間でのバトルや、相手の脳内に入り込んでいくシーンは、映像、照明、音楽と効果音、役者の演技、アンサンブルの動き諸々によってゲームの世界がそのまま三次元に展開されており、非常に見応えがありました。主人公、蒼葉の相棒であるオールメイト・蓮の立ち位置も違和感なし*2

脚本は、前半はゲームの共通ルートを忠実になぞりつつ、必要なエピソードだけを盛り込んでテンポ良く進んでいました。ただ、出演者が端折られ過ぎ。百歩譲って蒼葉の婆ちゃんが映像だけなのはまだしも、せめて黒幕の東江くらいは映像で済ませずに、アンサンブルの人が兼ねるとかで出てきて欲しかったな*3。後半、つまり2幕からは日替わりで攻略対象キャラクターのルートに入るんですが、蒼葉とノイズのエピソードを余すところなく見せてくれるのはいいものの、そこに集中しすぎて他の重要な部分がことごとく省かれまくっていた。気づいたらオーバルタワーが崩壊してるんだもんよ。なので、他の媒体でストーリーを把握してないと「蒼葉とノイズの一部始終はわかったけど東江や碧島を取り巻く陰謀はどうなって、そしてなぜ全て解決したみたいになってるの?」状態で話が終わってしまう。原作でも、隠し攻略対象にあたる蓮のルートまで終えないと全貌は見えないけれど、周回するのが前提のゲームと異なり、1回しか観劇しない人も少なくないことを考えると潔く切り捨て過ぎじゃないだろうか。

 

蒼葉と、蓮を除く攻略対象4人については、全員が良くも悪くも及第点、というのが正直な感想です。あとミズキも。少なくとも棒読み棒立ちではないし、上手い人が何人かいればそれでカバーできるか、そちらに引きずられて良くなる可能性もあったと思うけど、というくらい。蒼葉役の人はアクションの身のこなしは綺麗だし、台詞回しそのものは悪くないんですが、時々台詞の間がおかしいのが気になった。それとノイズ役の人、立ち姿や醸し出す雰囲気、声のトーン等々は良いので、台詞噛まないようにな……。攻略対象の他3人は2幕ではまた変わってくるのかもだけど、観てないので何とも。蓮役の人は他の舞台で観たことがあり、その時は割と好印象だったものの、今回は無機質な台詞が多く、しかも後半はほとんどストーリーに絡んでこないし、ウイルスとトリップ、悪島は悪くなさそうなんだけど出番自体が少ない上に出てくるのはぶっちゃけそれ程重要な場面でもない*4ので、芝居を締めるまでには至らず。

あとですね。元がR指定ありのBLゲームという事で、舞台上でも絡みのシーンがしっかりあり、それをダンスというかマイムで表現するのはいい。

けど振付もうちょっと何とかなんなかったの?!

特に最初のは、振りが直接的過ぎる上にどうにも中途半端*5で、何を表そうとしているのかは察せるだけにぶっちゃけ笑いそうになった。2回目のは最初ほどおかしくはなかったけど、そんなにわかりやすいマイムで「お互いの服を脱がす」を表現しなくってもな……。どっちが受けか攻めか、ラブラブなのかそうじゃないのがわかる程度に抽象化してダンスっぽくするか、いっそキスシーンの後はフェードアウトして台詞だけ流す、とかで良かったんじゃなかろうか。 

演技等々は、

・2幕のシナリオが日替わりの攻略対象の数だけ、つまり5パターンあり、毎公演ごとに後半の展開が大きく変わる(その回の攻略対象以外は蓮を除いて2幕はほぼ登場しない)

・主人公のみ全公演通して同じキャストで、2幕のメインになる5人は公演ごとに違う

という(おそらく結構特殊な)構成もネックになっているのかも。稽古の時間も分岐の分短くなるだろうし、せめてこの期間はキャラAで次の期間はキャラB、という風に分けられたらまだ切り替えがしやすかったのでは、とも思うけれど、公演期間がそんなに長くないので、平日のみの期間に振り分けられたパターンが割りを食いそうだから難しいだろう……ううむ。

 

ここまで主にマイナス面を書いてきてしまいましたが、それでも怒る気にはなれないでいるのは「原作を大切にしつつ、ルートの分岐も含めてゲームの世界を舞台上に忠実に再現する」という姿勢が感じられたから。先述したように、蒼葉とノイズの重要なシーンは丁寧にやってくれたし、仮想現実空間の再現は、これをリアルで観れただけでも来てよかった、と思えるくらい素晴らしかった。少なくとも原作ファンの一人である自分は、スタッフも出演者も、いろいろ限られているであろう中で精いっぱいやってくれているんだろうな、と思えました。それは、自分がTwitterで検索したとき、原作ファンと思しき複数のアカウントでの反応が良かったということにも表れているんじゃないかな。ただ、舞台・演劇のファンとして見ると、惜しい点が多々見受けられたのは否めません。「原作ファンも舞台好きも楽しめるように」といった趣旨の内容が公式からツイートされていたけれど、両立するのは難しいんだな……と実感した次第です。

 

*1:PC版はR18なのでそういう描写がしっかりある

*2:しかし2幕最初だけ唐突に"あの姿"になってたのは謎

*3:凶悪警官・悪島は役者さんが出てくるのに

*4:少なくとも自分の観た回では

*5:演者と振付のどっちがいかんかったのかは不明