3次元別館。

主に観劇の感想です。2.5舞台が多めでその他のミュージカルやストレートプレイも。

【観劇記録】4/18 CASANOVA(宝塚・花組)

 

・多少のネタバレを含む感想です

 

楽しかったー!美の極致と言っても過言じゃないのでは?なビジュアルと、これまた素晴らしい曲の数々に終始目と耳が幸福感に包まれておりました。

音楽は「1789 -バスティーユの恋人たち-」と同じ方が手掛けられたということで、好きな曲を挙げたらきりがないくらい*1、期待を裏切らない名曲揃い。カサノヴァが活躍するシーンではカサノヴァの、コンデュルメルたちのそれでは彼らの登場シーンの、というように、それぞれのテーマ曲(?)がインストゥルメンタルで流れるのも良かった。ストーリーは「一体どうしてそうなった??」という場面や急展開な箇所もあり、突っ込んだら負けな気がするのは否めないものの、全体に幸せな空気が漂い、ラストは少し切なかったりして、何よりビジュアルと音楽の満足度が非常に高かったのでまあいいか!となってました。

生田作品は演出が華やかかつダイナミックなので、そこも毎回楽しみにしており、今回も冒頭の裁判のシーンから惹きつけられっ放しだった。ちなみに衣装で一番好みだったのは馬車ラップ*2ベアトリーチェが着てたドレスです。


主人公のカサノヴァは「1000人を超える女と恋人の関係にあった男」という最低野郎。なのに、今まで愛した恋人たちの幻想に囲まれて高らかにテーマソング「人生には恋と冒険が必要だ」を歌い上げる姿を全く嫌味なく、それどころか魅力的に見せることができてしまうのは、女性が男役を演じる宝塚ならではだし、明日海さんのトップスターとしての力量の成せる技なんだろうな。脱獄して逃亡中に出会ったベアトリーチェに運命を感じてしまうのも、屋敷に忍び込んだ時に女官たちを次々骨抜きにしまくってしまう場面も、冷静に考えれば「なんでいきなりそんな心境に?」「その短時間でどうやってその人数をたらしこんだ?!」とハテナマークが飛び交う。なのに「まあそうなっちゃってるんだからそうなんだろう」と納得させられてしまう説得力があったのは、これまで少年から性悪男性、貴族に奴隷と様々な役を演じられてきた経験の賜物なのかも知れません。
仙名さんも溌剌として思い切りの良いヒロイン、ベアトリーチェを活き活きと演じられており、良く通る澄んだ歌声によるソロ曲も複数あって、彼女の退団公演にふさわしい演目だったかと。宝塚の舞台で拝見できなくなってしまうのは寂しいけれど、歌、お芝居、ダンスと申し分ない実力を兼ね備えているのはもちろん、色っぽいのに同時に可憐でもあり、かつパワフルな娘1に出会えたことはとても嬉しいです。
本公演では珍しく、正統派な悪役の柚香さん*3。演じるコンデュルメルは、黒ずくめの衣装と長髪がそれはそれは美しく、妻との関係をこじらせまくりりつつ時にコミカルな役どころがぴったりハマっておりました。が、何よりもフィナーレの仙名さんとのデュエダンや、続く男役群舞で見せた、弾けるようなキラキラの笑顔に射抜かれたことをここに記しておきたい。

それにしても、コンデュルメル夫人役の鳳月さんが予想を遥かに上回っておりまして……登場した時から強い存在感を放ちながらも、普段は男役だということを忘れてしまうくらい妖艶で美しく*4、女声のソロ曲まで切なく、しかも危なげなく聴かせるって一体何事だろう。脇役の子たちにもちゃんと名前があるのに、彼女だけは「夫人」で名前は明かされないのかな……と思ってたら、最後にああ来たか。あの夫婦、結婚当初はどんな様子だったのか、なぜあんなにこじれちゃったのか、などなど気になってしまう。
カサノヴァと行動を共にするもじゃもじゃ神父の水美さんは、結構アレなこともしでかしてるのにどこか憎めない、というより可愛らしさすら感じる三枚目な役どころ。公演ごとの演じる役の幅が広いなあ。悪サイドと思ってた瀬戸さんのコンスタンティンも、後半のバカップルぶりに笑わせていただきました。お幸せにー!

スターだけでなく若手の見せ場もちゃんと用意されていて、原作なしのオリジナル、かつ座付き作家による当て書きだと、こういうところは手厚いね。個人的にはコンデュルメル夫人のしもべのひとり(1匹?)、音さん演じるベネラちゃんがそれはもうかわいくてお気に入りでした*5

ここ数年の本公演では、「うわぁ……(無表情で天を仰ぐ)」というような演目はそんなにないのですが*6、年明けから三本連続で、それぞれの今のトップコンビ・組子の持ち味を生かした作品を観ることができて嬉しいです。ここ半年くらいの劇団の動き(というか人事)に何も思わないと言ったら嘘になるし、次の本公演で退団される明日海さん*7をはじめ、トップや人気スターの退団が続く寂しさもある。けれども新しくなりつつある体制でどんなものが観られるのか、楽しみにしている気持ちももちろんあります。

 

*1:初見のときに耳に残っていたのはカサノヴァの「人生には恋と冒険が必要だ」と、コンデュルメル夫人の曲でした。で、ライビュの時にああーコンデュルメルたちのもベアトリーチェのもカジノに集う若者たちのも、それ以外の曲もいい!ってなった

*2:確かTwitterで見た「タカラヅカディビジョンのユキとアヤカ」というのがとても好き

*3:金色の砂漠のテオドロスや新源氏の六条御息所は悪役とは少し違う気がするし……今回の役に近いのはカリスタのナポレオンかな?

*4:夫婦で並ぶと絵になる……を超越して、なんというか最強

*5:でもってエトワールの歌声がまた綺麗でな……

*6:ないとは言わないんだな……

*7:って書いてる端から寂しくなってきた……