3次元別館。

主に観劇の感想です。2.5舞台が多めでその他のミュージカルやストレートプレイも。

【観劇記録】2019年5〜8月の観劇まとめ(レミゼ/宝塚など)

 

1〜4月までまとめておいて、その後放置してました(やりがち)。

2019年5〜8月まで、ライビュ含む観劇の記録です。宝塚多め。

 

※多少のネタバレ有

 

5月

劇場で観るのはすごくすごく久しぶりのレミゼでした。初めて観劇した10代の頃にはピンと来ない部分も多かったけれど、年を重ねた今は「夢破れて」で既に落涙してた。リトル・コゼットの歌に「早くこの子を助けてあげてー!」と辛くなりつつも何だかんだ好きな「宿屋の主人の歌」で笑っちゃったり、上原ジャベールの「Stars」や上山アンジョルラスを中心とした「民衆の歌」に圧倒されたり、昆エポニーヌの「オン・マイ・オウン」でまた涙して、三浦マリウスの「カフェソング」で悲しくなって、吉原ジャン・バルジャンはもちろん全編通して素晴らしく……今更も今更ですが名作ですね(ハンカチを取り出しつつ)。

 

  • COCOON』星ひとつ編/月の翳り編

   感想はこちら

 

夢現~」は思ってたより楽しめた。ただ、相思相愛のお通を放ったらかして最後までひたすら剣の道にまい進するのみってどうなのよ武蔵、とは思わんでもない……。こちらが退団公演となった美弥さんの佐々木小次郎は、達人の凄みと静謐の両方を漂わせ、一振りの剣のように美しかったです。「クルンテープ~」では「セ・マニフィーク」の場面で豪快に歌い踊る美園さんに魅了されておりました。

 

  • 宝塚 星組 『鎌足−夢のまほろば、大和(やまと)し美(うるわ)し−』(ライビュ)

評判の良さに急遽ライビュ観劇を決めて良かったです。前年、ほぼ同じ時代を描いた某往年の名作を鑑賞して「ぐええええ……」と苦悶の声を上げていた*1身としては、こちらで救われた思いでしたありがとう。ヒーロー的な格好良さはないけれど、主の仕打ちに苦しみながらも妻の事を愛し続ける鎌足の描き方には好感が持てたし、何より車持与志古娘や皇極帝が「強い意志を持ち、時として怒りの感情も表出する血の通った人間」として描かれていたことに感激したよ……。無論、蘇我入鹿や天智帝も格好いいしな! あと船史恵尺がとても妖しくて良かった。つまり、華形さん*2瀬央さん有沙さん天寿さんへの注目度が更に更に上がりまくった公演でした。

 

6月

   感想はこちら

 

なにげに久々のワイルド真風さん。「愛した日々に偽りはない」は、これはテスも惚れ直すよね、と納得の色っぽさでした。星風テスは新進気鋭の歌姫という説得力あり&メイクも大人っぽく自然。 芹香ラスティは良い塩梅にチャラくて大変よろしい。日替わりで「スキップしながらエデンをかわいく歌う」を披露してくださった桜木ベネディクトを筆頭にこの役はやっぱりこの人だよねーと順当にキメてきた中、歴代で一番少年っぽさがあり、ダニーと年の離れた兄弟のような和希ライナスが新鮮だった。ああいう関係性も実によい。

 

  • 宝塚 花組『恋スルARENA』(ライビュ)

前回のDHとはまた異なる趣で、めっちゃ楽しいコンサートでした! スクリーンに開幕前の横アリが映し出された時点で「あー現地行きたかったなー」と心で呟いておった。新娘役トップ・華さんが可愛いのは知ってたが、ラプンツェルの「輝く未来」のデュエットはガチで可愛過ぎてめろめろになりました。そして明日海さんの「お姉ちゃん」、正直言うと最初出てきた時は「数年ぶりの女装、ですね……」と思ってしまったんだけれど、瀬戸・水美のナイスガイコンビに挟まれるとあら不思議、海外の女優さんを彷彿とさせるゴージャスな美女で全く違和感なしでした凄い。

 

柚香さんが道明寺をやるという段階で既に間違いなしの予感しかなかったんだけど、まさに水を得た魚でした。少尉@はいからさんみたいなキラキラ王子も、俺様野郎で愛すべきバカ・道明寺もどちらも当たり役っていったい何を見せられているんだろう。城妃さん演じるつくしもまた概念そのものが顕現しておりました。少女マンガと宝塚はやはり相性抜群だな。他のキャラクターでは整形美少女・桜子@音さんのインパクトが忘れられない。

 

 7月

  • 舞台『紅葉鬼』

  感想はこちら。 

 

8月

  • 舞台『刀剣乱舞』慈伝 日日の葉よ散るらむ

  感想はこちら

 

観劇当時も今も含め、望海さんは「歌+お芝居の表現力」が圧倒的よな、という、誰もが知っていることを再認識させられました。最後の方、かつての友の屋敷で一人部屋に残されるあたりから涙があふれまくった。そして斎藤一と土方さんがそれぞれ別のベクトルでかっこよすぎて骨抜きになるしかなかったぜ……。

 

多めっていうかここで初めて感想書いたのはほぼ宝塚だった。そんなに間を開けずに9~12月分もアップしたいです。

 

*1:作品として優れていることは否定しないけど、自分には全く合わなかった……

*2:次回星組公演で退団されてしまうのですね……

【観劇記録】12/23 脳内クラッシュ演劇「DRAMAtical Murder」

 

  • 原作ゲームファン(PC版のみ、アニメ未視聴)の感想です
  • 多少ネタバレあり

 

ニトロプラスキラルTwitterで舞台化を知った時は「ドラマダ舞台でやるんだ! しかも攻略対象4人+蓮ルートが日替わり?! 演出が中屋敷さんなら期待できるかな」と純粋にわくわくする気持ちと「いやしかしあれ、がっつりボーイズがラブしている*1のに、舞台でやっちゃうの? マジで?」という不安がせめぎ合い、前売り券の購入は見送っていました。と言いつつも割と評判は良いようなので、ゲームで好きだった、かつ日時の都合のつくノイズの回を当日券で観劇することに。

 

率直に言うと、

・すごく良い!

・良いor悪くはない

・頑張ってるなあ……

・もうちょっと何とかなんなかったんだろうか……

が同じくらいの割合でせめぎ合う舞台でした。

 

※以下、ネタバレ&少々辛口の意見を含みます

 

演出は全体に良かったです。特に「ライム」という仮想現実空間でのバトルや、相手の脳内に入り込んでいくシーンは、映像、照明、音楽と効果音、役者の演技、アンサンブルの動き諸々によってゲームの世界がそのまま三次元に展開されており、非常に見応えがありました。主人公、蒼葉の相棒であるオールメイト・蓮の立ち位置も違和感なし*2

脚本は、前半はゲームの共通ルートを忠実になぞりつつ、必要なエピソードだけを盛り込んでテンポ良く進んでいました。ただ、出演者が端折られ過ぎ。百歩譲って蒼葉の婆ちゃんが映像だけなのはまだしも、せめて黒幕の東江くらいは映像で済ませずに、アンサンブルの人が兼ねるとかで出てきて欲しかったな*3。後半、つまり2幕からは日替わりで攻略対象キャラクターのルートに入るんですが、蒼葉とノイズのエピソードを余すところなく見せてくれるのはいいものの、そこに集中しすぎて他の重要な部分がことごとく省かれまくっていた。気づいたらオーバルタワーが崩壊してるんだもんよ。なので、他の媒体でストーリーを把握してないと「蒼葉とノイズの一部始終はわかったけど東江や碧島を取り巻く陰謀はどうなって、そしてなぜ全て解決したみたいになってるの?」状態で話が終わってしまう。原作でも、隠し攻略対象にあたる蓮のルートまで終えないと全貌は見えないけれど、周回するのが前提のゲームと異なり、1回しか観劇しない人も少なくないことを考えると潔く切り捨て過ぎじゃないだろうか。

 

蒼葉と、蓮を除く攻略対象4人については、全員が良くも悪くも及第点、というのが正直な感想です。あとミズキも。少なくとも棒読み棒立ちではないし、上手い人が何人かいればそれでカバーできるか、そちらに引きずられて良くなる可能性もあったと思うけど、というくらい。蒼葉役の人はアクションの身のこなしは綺麗だし、台詞回しそのものは悪くないんですが、時々台詞の間がおかしいのが気になった。それとノイズ役の人、立ち姿や醸し出す雰囲気、声のトーン等々は良いので、台詞噛まないようにな……。攻略対象の他3人は2幕ではまた変わってくるのかもだけど、観てないので何とも。蓮役の人は他の舞台で観たことがあり、その時は割と好印象だったものの、今回は無機質な台詞が多く、しかも後半はほとんどストーリーに絡んでこないし、ウイルスとトリップ、悪島は悪くなさそうなんだけど出番自体が少ない上に出てくるのはぶっちゃけそれ程重要な場面でもない*4ので、芝居を締めるまでには至らず。

あとですね。元がR指定ありのBLゲームという事で、舞台上でも絡みのシーンがしっかりあり、それをダンスというかマイムで表現するのはいい。

けど振付もうちょっと何とかなんなかったの?!

特に最初のは、振りが直接的過ぎる上にどうにも中途半端*5で、何を表そうとしているのかは察せるだけにぶっちゃけ笑いそうになった。2回目のは最初ほどおかしくはなかったけど、そんなにわかりやすいマイムで「お互いの服を脱がす」を表現しなくってもな……。どっちが受けか攻めか、ラブラブなのかそうじゃないのがわかる程度に抽象化してダンスっぽくするか、いっそキスシーンの後はフェードアウトして台詞だけ流す、とかで良かったんじゃなかろうか。 

演技等々は、

・2幕のシナリオが日替わりの攻略対象の数だけ、つまり5パターンあり、毎公演ごとに後半の展開が大きく変わる(その回の攻略対象以外は蓮を除いて2幕はほぼ登場しない)

・主人公のみ全公演通して同じキャストで、2幕のメインになる5人は公演ごとに違う

という(おそらく結構特殊な)構成もネックになっているのかも。稽古の時間も分岐の分短くなるだろうし、せめてこの期間はキャラAで次の期間はキャラB、という風に分けられたらまだ切り替えがしやすかったのでは、とも思うけれど、公演期間がそんなに長くないので、平日のみの期間に振り分けられたパターンが割りを食いそうだから難しいだろう……ううむ。

 

ここまで主にマイナス面を書いてきてしまいましたが、それでも怒る気にはなれないでいるのは「原作を大切にしつつ、ルートの分岐も含めてゲームの世界を舞台上に忠実に再現する」という姿勢が感じられたから。先述したように、蒼葉とノイズの重要なシーンは丁寧にやってくれたし、仮想現実空間の再現は、これをリアルで観れただけでも来てよかった、と思えるくらい素晴らしかった。少なくとも原作ファンの一人である自分は、スタッフも出演者も、いろいろ限られているであろう中で精いっぱいやってくれているんだろうな、と思えました。それは、自分がTwitterで検索したとき、原作ファンと思しき複数のアカウントでの反応が良かったということにも表れているんじゃないかな。ただ、舞台・演劇のファンとして見ると、惜しい点が多々見受けられたのは否めません。「原作ファンも舞台好きも楽しめるように」といった趣旨の内容が公式からツイートされていたけれど、両立するのは難しいんだな……と実感した次第です。

 

*1:PC版はR18なのでそういう描写がしっかりある

*2:しかし2幕最初だけ唐突に"あの姿"になってたのは謎

*3:凶悪警官・悪島は役者さんが出てくるのに

*4:少なくとも自分の観た回では

*5:演者と振付のどっちがいかんかったのかは不明

【観劇記録】11/27 舞台『刀剣乱舞』維伝 朧の志士たち(刀ステ)

 

 

  • いつものごとくネタバレ全開の感想です
  • 台詞などはすべてうろ覚えなので記憶違いがあるかもです…

 

注意:ライビュ・配信などを含め観劇予定の方は、一切ネタバレ無しで臨むことをお勧めします(このエントリーも回避推奨)

 

TDC、3バルのサイドA席での観劇でした。見切れ席程ではないものの、下手側の端の方で高いところにいる人&スクリーンはほぼ見えなかったよ……代わりに客席降りはとてもよく見えた。

 

SNSでは「いつもの刀ステが帰ってきた」と言われており、虚伝から悲伝までの刀ステに近い、という意味ではその通りなんですが、他の話に似ているかというと必ずしもそうでもない気がしました。三日月宗近やまんばちゃん、長谷部といったお馴染みの主要メンバーがことごとく不在なのも大きいですが、ストーリーそのものもこれまでを踏まえつつ、これからを意識した新しい方向を示しているようだった。BGMも聴き覚えのない曲ばかりだったので、ほぼ一新されてるのではないかな。

 

以下、思いついた順に雑感。

※ネタバレ全開&時系列バラバラです

 

  • 慈伝から続投なのは陸奥守のみ。むっちゃんは慈伝ではひたすら陽の部分が前面に出ており、維伝でもそれが踏まえられてました。だからこそ、かつての主をめぐるあれこれがさ……あああああ……。喋り方や声の調子をかなりゲームの声優さんに寄せられてたね。アクションの身軽さに特筆するものがあり、高さのあるセットからひらりと飛び降りたり、戦闘時もアクロバティックな動きが多くて格好よかった! 
  • 今回は階段型で可動式の舞台セットが2つあって、先述のように高さがかなりある上に、人が乗って殺陣の最中でも動くからハラハラした。乗ってる人も動かしてる人も、少しでもタイミング間違ったら大事故になりかねないよね、どうか千秋楽まで怪我などありませんように……。
  • 肥前忠広がとても肥前忠広でした。シルエットはもちろん、血の気配を漂わせつつもどこか小型犬を思わせる雰囲気が、二次元から出てきたようであった。速くて無駄のない、殺傷力の高そうな殺陣なんだけれど、同じくそう称される系統の小夜ちゃんの殺陣とは違い、パンフのクロストークにある「復讐でも恨みでもない」「戦闘マシーン」といった、ドライな印象を受けました。ストーリー中で明かされる岡田以蔵の葛藤を知ってしまうと、それもまたやるせない……。
  • 南海先生は口調が特徴的。穏やかながらもどこか感情に欠けており、それでいて機械的でもない。まさに「顕現してから日が浅いから、刀寄りの存在」という内容の台詞を裏付けていました。下手すると棒読みになってしまうと思われるので、さじ加減が見事。ダンスと共に罠仕掛けまくるwithゲーム本編台詞のところは笑った。言い出したのあなたでしょーが!
  • ゲーム内ではどんな形状だか触れられてなかった罠(材料:時間遡行軍)、あんな形してたんだな……結構怖い。破壊力えぐい。
  • 兼さんはカッコよさを意識しまくりつつも、刀で戦うことにこだわったり仁義を大切にしたりと、武士らしさが漂ってた。アニメの活劇の雰囲気に近いかな。
  • 堀川君は普段はかわいいんだけども、戦闘時(特に後半)はギラギラでした。あれだ、名門高校進学を機に過去を封印してキャラ変したけど、中学時代は地元のヤンキーの元締めだったとかそういうやつだ……。
  • 土方組の二刀開眼、あるかもと思ったらなかった。ちょっとだけ残念。
  • 鶴丸は随所で暴れまくっておりました。「つっさん」は物理的に呼びにくいね、うん。そして渾身のボケを南海先生にスルーされまくる……がんばれ。なんだけど、所々でシリアス差し込んで来るんだよなベテラン刀として。あーもうそういうところだよ(訳:とてもよい)! 27日マチネのログインボイス鶴丸でした。観劇後に調べたら日替わりの部分が結構あったらしい。3年ぶりの染鶴さんは、普段はおちゃらけつつも少し遠くから若い刀たちを見守っている、という方向性は健鶴さんと同じなんですが、より「食えない白じじい」感が強い。
  • ちょっとちょっとー、刀剣男士ー!
  • お久しぶりの小烏丸。相変わらず、あのガチで鳥のような足取りの軽さと三日月とはまた違う人外オーラは何事なんだろうな……。確かに「父」って呼ばれること、滅多にないよね(パンフより)。
  • 前からそんな傾向はあったけど、あの本丸の審神者の血の色は青もしくは緑なんだろうか。
  • 学生時代、キャラメルボックスが大好きで、社会人になっても時々観に行ってたので、坂本龍馬役が岡田さんと知った時はびっくりすると同時に嬉しかったです。まっすぐで若々しい青年そのものでした。陸奥守のことを「むっさん」と呼んだり、会ってすぐ意気投合してしまうんだけど、むっちゃんの心情考えるとその時点で既に苦しい……。実は「偽物」だったけど、それでも愛刀だったむっちゃんが主本人だと思い込んでしまうくらいにはそのものだった訳だからね。ほんっとあの本丸の審神者さあ……。
  • 岡田以蔵の殺陣は、群を抜く速さと勢いに加えて重さまであり、鬼気迫るものでした。龍馬大好きなところは大型犬のようで微笑ましい(そういうところも顕現したかつての愛刀に受け継がれたんだろうな)んだけれど、生きるためには人を斬るしかなかった苦悩も抱えており、痛ましかった。
  • 結局、あの文久土佐藩の龍馬、以蔵、武市半平太吉田東洋とその他の土佐勤王党の人たちは何者だったんだろう。本人たちの人格というか意思を持ってはいるけど、人間では確実にないんだし……というより、南海先生の口ぶりだと彼らを生み出した存在がある、ということ? だとするとなにそれこわい。
  • 何者、と言えばあの謎の時間遡行軍打刀……他の本丸もしくは別の時間軸のまんばちゃんの思念が形になった姿か何かなんだろうか? 彼もまた、三日月宗近を失ったことを悔いているようだった。とすると、あの場所にいた他の時間遡行軍たちも……?  あんま考えたくないなそれ。
  • 座席の位置の関係で下手奥が見切れてたので、かつて戦いを挑んだ本丸のメンバーの半分? がわかってない……取り敢えず陸奥守、伽羅ちゃん、宗三は把握できた。
  • 時間遡行軍新メンバー、物理的にデカい*1大太刀登場。本陣でございと言いたげな。
  • 相変わらずゲーム中の台詞が本編に違和感なく溶け込んでおった、匠の技である。
  • 真剣必殺は陸奥守、肥前、南海先生。舞台が遠かったのと、比較的肌露出が控えめなメンバーなので、いつもよりは目のやり場に困る事なく見ていられました……*2
  • あの「物語を……」って蠢いてた無数の目が怖すぎた件。最初は我々観客の声を暗に示してるのかと思ったけど、いくつかの考察にあったように、刀ステ自体に「物語」というワードがよく登場するんだよな……。
  • ラストのむっちゃんの台詞に不穏さを感じてしまった。考え過ぎかそれとも。
  • エンディングテーマは今までよりしっとりとした曲調でした。物語の内容的には違和感ないものの、ジョ伝、慈伝がアップテンポだったこともあり意表を突かれた。傘は虚伝や悲伝と同じ、白地に黒文字で名前入り
  • パンフの最後近くの見開き2ページ×2のあれ、大変興味深くはある。が、これまた不穏で怖いよう夜中に思い出したらトイレに行きたくなくなるじゃないか……。

 

思い出したり、気づいたことなどあればまた追記するかもですが、まとまってないので取り敢えずはこの辺で。

*1:通常の1.3倍くらいはあった

*2:真剣必殺については、どきどきしたとか腹筋すごいとか筋肉のつき方が綺麗等々ならともかく、もっとデリケートな部分についてSNS含めた公の場で詳細まで言及するのは危ういな、と……演じているのは生身の役者さんだからね

【観劇記録】9/23 舞台『GOZEN-狂乱の剣-』

 

  • 連動している映画の方は未見、舞台のみの感想です
  • 大きめのものは避けますがネタバレありのためご注意

 

観劇の二日前、用事を済ませて池袋駅構内を歩いていたら、突如この作品の巨大ポスターが目に飛び込んで来まして。確か刀ステの鶯丸の人が出てるんだっけ?と近寄ってキャストを見てみたら、主演が薄ミュの初代土方さんで、ルパパトのノエル、刀ステの長義、生執事のマダム・レッド役の各方々、更に少年社中の役者さんたちまで出演されてると。多分慈伝の時にもらったチラシの中にあるよね?と、さっと見てそれきりになってたチラシを帰宅して確認したら脚本演出は毛利さんで、ハムレットの和風アレンジっぽい?のか……で、急遽東京公演の前楽へ。駅のポスターを見て観劇を決めたのは多分初めてだな。ありがとう池袋駅

 

作品の印象を一言で表すなら「エンタメ全開時代劇@オタクの好きなもの全部乗せ(中二風味)」。あ、中二っていうのは役者さんもインタビューの中で言ってるからね! ストーリーがリンクしている映画もあるようなのですが、そちらは未見でも大丈夫でした。ただ、下敷きになっているハムレットのあらすじや登場人物、有名な台詞はざっくり押さえた方がより楽しめるかもです*1。王子が父親の仇を討つために狂ったフリをしてるとか、親友とやたら仲良し*2とか、父親の霊が出てきて「自分は弟に殺されて王位を奪われた」って告げたりとか、王子の彼女が酷い振られ方をした挙句に狂死するとか、元ネタからしてそんな感じなのに、そこに更に中二全開の登場人物が複数名加わって御前試合(と言う名の殺し合い)開始、とか、○杯戦争でも始まりそうな勢い。

前半は下ネタ含むギャグが多かったりもしますが、メインのストーリーはシリアス。テンポ良く飽きさせない展開の中、お亡くなりになる人も多いです。少年社中の過去作品や薄ミュに近いかな。ビジュアルは美しいし、映像を駆使した戦闘シーンやバリエーション豊かな殺陣など、全体に見応え十分でした。てか、甲斐正に仕える侍・蔵人の覆面オンのビジュアルとか、五芒星を宙に描いて臨兵闘者…って唱える陰陽師とか、一幕ラストで正体を現す某お方とか、七月に観た紅葉鬼と微妙に重なるところがあって、変な笑いがこみ上げてきそうになった……。

主人公の八弥斗(はやと)は前藩主の息子にしては幼いし情けない。ラブラブバカップルな関係にある奈奈に結婚を迫られてもなんだかんだ理由をつけてうやむやにしちゃうし、重大な決断を迫られると弱腰になったりもする。けど、弱い部分がとても人間らしいし、迷いに迷ってそれでも運命に立ち向かおうとする姿には叔父や父とは違う強さを感じました。終盤の奈奈との別れの場面は切なかった。

謎の武芸者、流狂四朗は、あーそう来ましたか!という役どころ。中盤まで出番は少なく、正体も明かされないので先に映画見ておくべきだった?とハラハラしていたら……なるほどな。殺陣の速さと重さに目を見張るものがあった。

メインの二人の他には、八弥斗の親友で物理的に弱いけど優しい清順(きよのり)、八弥斗ラブ全開で可愛いが……の奈奈、妹思いの兄・蓮十郎、銀髪赤目に加えて顔の大部分を覆うマスク着用で中二病全開スタイルの侍・蔵人(くらんど)、長髪黒づくめ+敬語で胡散臭さしかない陰陽師・月暗(蔵人との間に因縁有り)、兄を殺して藩主の座と妻を奪ったイケオジ・甲斐正、成人した息子がいても尚妖艶で美しく、愛に生きる奥方・朝霧等が愛憎入り乱れる様を繰り広げておりまして……複数刺さった方には是非ともおススメしたい次第です。

年明けに観た少年社中の舞台は個人的に合わないなーと思う部分があったのですが、こちらはエンタテインメントに振り切った作品として素直に楽しむことができました。

 

しかし。前の週に、同じく公演日直前に観劇を決めて劇場に赴いたのが『リトル・ ウィメン~若草物語~』でして。愛おしくてたまらない四姉妹と、お母様をはじめ周りの人たちの織り成す暖かな世界に涙しまくった翌週にこれって、我ながら振り幅大きいかも知れない……。

*1:自分も主要登場人物の名前と大筋、『To be, or not to be: that is the question.』や、『尼寺へ行け』くらいしか知らないし

*2:かなり昔に音楽劇で観た時、この二人やけに仲良くね? と思った記憶がある

【観劇記録】8/1 舞台『刀剣乱舞』慈伝 日日の葉よ散るらむ(刀ステ)

 

  • いつものごとくネタバレ全開の感想です
  • 台詞などはすべてうろ覚えなので記憶違いがあるかもです…

 

注意:ライビュ・配信などを含め観劇予定の方は、一切ネタバレ無しで臨むことをお勧めします(のでこのエントリーも回避推奨)

あと、過去作を一通り見ておくとより楽しめるかも。

 

これまでの刀ステは初日ライビュを含め、公演期間の割と早いうちに観劇できていたんですが、慈伝は大楽近くになりました。やっと観られたよ!!

 

終わってから頭に浮かんだのは「信頼と実績の刀ステ」でした。だってさ、あの日常アニメの花丸ですら、1クールの間に何度か過去の時代に出陣して敵と戦うシーンがあったのに、慈伝は冒頭の聚楽第出陣を除き(それすら映像だったりする)、ほぼすべてが本丸内で展開されて、舞台上に登場するのも刀剣男士オンリー。殺陣はあるものの模擬戦という形で、「舞台の上で時間遡行軍と戦うシーンがない」という、刀剣乱舞のメディアミックスとしてはかなり異色の物語でした*1。もちろん今回も楽しめたけれど、こういうイレギュラーな作品を外伝などではなく悲伝の続きとして、そしておそらく次回作へと繋がっていく本編として上演できるのは、これまでの刀ステが積み上げてきた信頼と実績の賜物なんだろうな。 

 

以下、箇条書きでつらつらと。

※まとまってません&時系列もバラバラ

 

  • 最初、聚楽第出陣のシーンが映像で展開されて「ええっ?!」と戸惑った…しかも出演者の方々が舞台上でなくスクリーンの中で時間遡行軍とガチで戦ってるので余計に。アンサンブルキャストの発表がなかったことなどから時間遡行軍との戦いがないことは想定内だったものの、洛外からボス戦まで、ダイジェストの映像とは随分思い切ったなあ……。それでもボス戦の音楽が原作と同じだったり、画面もアクションゲームっぽさが感じられてちょっと面白くはあった。
  • 映像が終わると共に始まるオープニングは長義以外全員出演+内番衣装でまたびっくり。曲もポップでほぼ花丸。わちゃわちゃしててこれはこれでかわいい。
  • いつもの一振ずつ名乗っていく場面はナシ。このノリでアレがあったら逆におかしいことになってたよな…。とは言え、新しい男士たちの顕現の名乗りを見てみたかった気持ちも少しだけあったりはする。
  • 初登場の刀がいっぱい。次郎太刀と五虎退の人以外は初めてお名前を聞く方でしたが、もちろん心配など不要でした。特に原作ゲームでお迎えした時からお気に入りの長義! 写真で見た時は悪くはないかなー、くらいの印象だったけど、気位高そうでいて折り目正しいし、同じ刀派の大般若とは割とすぐに打ち解けるし、翻って南泉やまんばちゃんにはあの挑発的な態度。模擬戦の時だったかな、高さのある跳躍には目を見張らざるを得なかった。そんななのに布バサされまくるし、鶴丸に翻弄された挙句に正体を知らないままこっちを向けと迫ってくるまんばちゃんに「ええー……」とうろたえまくったりもして、まさに理想的でした。終演後に個人ブロマイド購入を即決した。
  • 南泉も時に猫っぽくなるところはやり過ぎにならない加減で微笑ましく、でも昔馴染みの長義に対して言うべきことははっきり言っていて、立ち位置に末満作品ぽさを感じた*2。あの本丸にいてくれて良かったなあ……。長義ともども、終演後に個人ブロマイド購入が決定*3
  • 声がゲームそっくりで終始わたわたしてる五虎ちゃんと、礼儀正しい語り手の前田、かわいい……博多と並んだ時の破壊力というか粟田口短刀たちの尊さよ。何気に粟田口の子が三振以上揃うのは初めてだよね。模擬戦での連携プレーは滾った。
  • 落ち着きがあって美しい太郎太刀と、賑やかで綺麗な次郎太刀の兄弟。酒は勧めまくるが下戸とわかれば無理強いはしない、これ重要。風流な唄と舞まで披露して、流石は奉納刀といったところ。途中で着替えた時に大太刀(刀本体)の長さに改めて驚く。これで殺陣やっちゃうんだろうか、と思ってたら兄弟揃ってあの凶悪レベルの長物をガチで振り回しててまさに嵐でした……。
  • 内番姿がヤンキー&ラーメン屋のあんちゃんな三池の刀たちは、戦装束で並んだ時のビジュアルがめっちゃカッコいい。模擬戦時はソハヤの胴の部分の防具や、光世の脚の間の紐が見るからに扱いにくそうで、ちょっとはらはらしたけどな! ソハヤの「コピーでいいじゃねえか」の響きがジョ伝の時とは違って切実さが滲んでるように聞こえたのは、陽気な面しか見せようとしない彼なりに、まんばちゃんのことを案じているからなんだろう。そして終盤の光世に吹いた……そこで真剣必殺の台詞かい!
  • 今回初登場の陸奥守。「山姥切より少し後に顕現した」と言っていた通り、かなり初期の頃から本丸にいるような雰囲気があった。宙返りを華麗に決めてたり、戦闘時に銃を使ってきたりとかなりアクティブ。まんばちゃんに「吉行」と呼ばれてるのが新鮮だった。
  • 会場替わり男士は歌仙。予想以上に終始出番があったので、期間限定の他会場の配信も見たくなるパターン。模擬戦に参加しない理由が「一句したためたいから」みたいなのだったのが雅。大包平と長義について書いた某ツイートを読んでから改めて考えたんですが、歌仙は顕現してからそれなりに経ってるし、義伝の時に前の主に対する感情等々との折り合いがある程度ついてるだろうから、戦うことによって存在意義を示す必要のある仲間たちに場所を譲ったのかもね。
  • 前作までは眉間にしわ寄せて悩んでる場面の多かった長谷部は、盛大にボケつつ突っ込みまくっておりました。山伏と一緒になってまんばちゃんと長義を出会わせまいと奮闘しつつ滑りまくるくだりは盛大に笑わせていただいた……明らかに不自然だからそれ!おはぎ引っ張り過ぎだから*4! 近侍のことを精一杯気遣いつつも、模擬戦では気に食わない相手のはずの長義のチームに自ら加わるあたり、本丸(というか主)第一なところはぶれないなあ。
  • 山伏も長谷部と一緒にコント状態になっちゃってたのは、近くで兄弟の苦しむ姿を見てきたからなのかな。悟っているように見えて、割とテンパりやすいタイプなのかも知れないぶっしーさん。
  • 同田貫のまっすぐさが染みた……ジョ伝の頃を知ってるからこそ余計に。一番わかりやすくストレートにまんばちゃんの味方だったもんね。たぬきがあれだけ本音で長義にぶつかってくれたからこそ、他の仲間たちも「自分の言いたいことはあいつが言ってくれている」と、フォローに回れたのかも。
  • 大包平がずーっと叫びまくってて、酔いが回っているにしても少々うるさ過ぎでは……と思ってしまったんだけど、先述の、大包平と長義についてのツイートに「大包平の『よくわからないが悔しい』『戦いたい(=戦って勝つことによって存在意義を示したい)』というのは、長義の心の叫びでもあるんじゃないか」と言った趣旨のことが書かれていたのを読んで、ちょっと納得。たぬきとは違った形でストレートなんだな。
  • 鶴丸は畳の下から登場したり、布を被って暖を取ってた時に後ろ姿でまんばちゃんと間違えられて、そのまままんばちゃんのフリしてみたりとか、やりたい放題でした……てか後者のは気づけよ長義! でも、模擬戦に参加できないことを悔しがる大包平を見て、じゃあ3チームにしよう、と提案するあたり、本丸全体のことをちゃんと見てもいる訳で、その辺は年の功というか。一見つかみどころのない鶯丸や、終始飄々とした大般若にも同じことが言えるかと。
  • 「偽物くん」なんてさ、普段のまんばちゃんならああまで動じなかったかもだけど、悲伝の後だからね…辛い。はっきりとは語られてなかったけど、多分本丸内では、特にまんばちゃんの前では三日月宗近の名前は暗黙のタブーになってたのかもな、と。近侍のことを気遣ってのことであっても、それが余計に心苦しかったのかな。それと、私が観劇した回では、模擬戦の最中に頭の布が取れてしまう、というハプニングがあったんですが、観劇中は全然気付かなくて、そういう演出だと思ってた…。普段布に覆われてる素顔を戦いの時に垣間見てしまったことが、長義の心境に何らかの変化を及ぼした、みたいな。
  • 五虎退の探し物は義伝のあれだったか。今手元に戯曲が見当たらないので確認できないんだけど、小夜ちゃんがもらってたよね確か。どういう経緯で五虎ちゃんに渡ったのかとても気になる。けど五虎ちゃん、これくらいの大きさの、だけじゃなく、小さい物がたくさん詰まった巾着、とか、中身をはっきり言わないまでももう少しヒント出しても良かったんでは……。あれじゃ流石にわからんだろう、というかそれでも真剣に探し物に付き合う面々、優しい……。
  • 長義は終盤で少しだけ歩み寄る姿勢を見せるけど、依然「偽物」のことを認めてはいない。そして、本丸の男士たちはそのままの彼を受け入れていく、というのが良かった。馴れ合わない大倶利伽羅や、心に闇を抱えたまま極の姿になった小夜ちゃん然り、多少の出来事で簡単に変われない部分もある。そしてその事は仲間として歓迎しない理由にはならない、というのは懐が広いというか、刀として長く人間の営みを見てきたことならではなのかも知れない。
  • しかしこう書いていくと、それぞれにちゃんと役割と見せ場のある脚本なんだなあ、と唸らされてしまう。中盤まではドタバタコメディ→後半に緊迫感を持たせてラストはしんみりさせつつ、次回への期待も持たせる、という流れも自然でした。ちゃんと殺陣もあったし! 本丸でドタバタした日常を繰り広げる刀剣男士たちの様子も楽しいけれど、模擬戦が始まって、やっぱり刀剣男士が一番輝いてるのは戦ってる時だよね、と再認識した。
  • 模擬戦と言えば、今回は久々の一階席、しかも通路近くの席での観劇だったので、下手側通路を駆け上がってハケるたぬきや、暗い中でゆっくりと通路を降りていく大般若を間近で見る事ができて嬉しかった。
  • ラスト、まんばちゃんと陸奥守と歌仙が語らう場面は、初期刀メンバーだ! と原作ゲームファン目線で胸熱。ところであの感じだと、次回のメインはむっちゃんだったりするんだろうか。
  • エンディングが、真っ白な傘に映像で名前を投影する、というようになってたのが面白かった! 曲は今回も期待を裏切らないかっこよさ(ジョ伝っぽいやつ)だったので、また音源欲しくなるじゃないか。

 

千秋楽はこれからライビュで観劇予定なので、見て考え直したことなどあれば、後日追記&修正しようと思います。

 

 (ライビュ後追記)

ライビュ前に書いた部分をちょいちょい直しつつ、新たに感じたことなど。

今回は模擬戦の最中に布が取れてしまうような事もなく、本来の形であのシーンを観ることができまして。布を被ったままだと、よりまんばちゃんのずば抜けた強さや、勝利した後に勝ち誇る気が全くないところが際立っていました。こんなの見せられたら悔しがるしかないよなあ、長義……。

そして、次回は文久土佐藩ってとこまでは何となく予想してたけど、実際に告知映像を目の当りにすると心拍数が。南海先生は春に観たSPECTERのシャドの人だね。しかも兼さんと堀川君来るし、鶴丸は続投かと思ったらまさかの染鶴さんカムバックだし! そして、(おそらく)初めてまんばちゃんのいない刀ステ。これも時期的にあり得るとは思ってたものの、やっぱり寂しいね……。今までお疲れ様でした&また刀ステ本丸に戻ってきてくれたらとても嬉しい。もちろん健鶴さんも長谷部も、次回作には出演しない他の刀剣男士たちも!

*1:らぶフェスは観たことがないのでわからないんだけども

*2:虚伝の長谷部や、他作品だと繭月のジュリオとか

*3:と言いつつ会計を待つ間にあの刀もその刀も、と増えていき最終的には11種類ゲットした

*4:もはや刀ステ長谷部のお約束とも言う

【観劇記録】7/6 舞台「紅葉鬼」

 

  • 2.5次元含む舞台好き、かつ原作ファンの感想です
  • ストーリーなど多少のネタバレあり

 

この『紅葉鬼』は通常の2.5舞台とは少し違っており、『抱かれたい男1位に脅されています。』(以下、だかいち)というBLマンガの「登場人物が出演する舞台作品」が原作となっています*1。コミックスで出てきた時、面白そうだからこれだけ別にマンガ化しないかなー、などと思っていたら、まさかの舞台化。舞台上でお姿を拝見したことのある役者さんが何名か出演しているのもあって興味を惹かれつつも、迷ってるうちに気づいたらチケット発売日を過ぎてしまい……。今からじゃ取れないよなーと諦めてたら当日引換券があるということだったので、ゲットして観劇して参りました。

ちなみにこちらが原作のコミックス。自分は未視聴ですが、アニメ化もされてます。

 

抱かれたい男1位に脅されています。 (ビーボーイコミックスデラックス) (ビーボーイコミックスDX)

メイン2人だけでなく脇キャラも立っており、芸能界モノとしても面白いんだけど、かなりしっかりBがLしてるので苦手な方はご注意。

※紅葉鬼は作中作なので、BLではないです

 

だかいちの作中で描かれる紅葉鬼の内容は、稽古場でのワンシーンとビジュアル撮影風景、カテコの様子くらい*2で、コミックスを読んだだけではストーリーの全容はわからず*3、登場人物もキービジュアルの経若(つねわか)と繁貞以外は不明という状態。なので、2.5次元舞台というよりオリジナルの作品を観ている感覚でした。

クラブeXは今回初めて訪れた劇場(?)で、奥に小さめのステージがあり、そこから少し低くなった所に円形の大きめのステージが広がっている、という構造でした。観劇した席は注釈付で上手側のかなり端、奥のステージ寄りのブロック。場面によっては後ろ姿しか見えないなんてこともあったんですが、ほぼ360度から見られることが前提になっており、逆に正面からではわからない部分を見ることができたりもしたので、それ程気にならなかった。むしろ、前から3列目以内で舞台との距離がとても近く、役者さんの細かい表情がオペラ無しでも余裕で見えたので、注釈付でこの場所ならかなり良いんでは?というくらいでした。ただ、席によっては前の人の頭でステージのほとんどが遮られてしまった、ということもあったらしいです。注釈付ではない席の話のようで、流石にそれは何とかならなかったんだろうか……。

ストーリーはぶっちゃけ割とよくある話で、どこかで見たような設定のキャラクターが多かったのは否めないです。鬼と人間の対立がある中で、人間として育てられているけど実は鬼と人のダブルとか、我が子と引き裂かれ、愛する人に裏切られて怨霊化した鬼女とか、帝を意のままに操る陰陽師(黒幕)とか、血の気の多いオネエ言葉の鬼とか、長年オタクやってればどこかしらで目にしてるよね*4……。話自体はすっきりとまとまっているし、見せ方が工夫されていて飽きることはなかったけど「誰がどの時点でその事を知ったのか」がわかりづらかったり、含みを持たせていると思われた事が単に言葉通りの意味でしかなかったりと、首を傾げてしまう点はちょいちょいあった。

それらを補って余りあったのが、迫力のある殺陣と巧みな演出、役者さんたちの演技でした。

殺陣は薄ミュや刀ステ並に多い上に速さと勢いもあり、広いとは言えない舞台をいっぱいまで使いつつ複数名入り乱れての乱戦もあったりして、見応え十分。オーソドックスな刀の他に、槍、三日月のような形の湾刀、更に素手や呪術で戦う場面があるなど、バリエーションも様々だった。演出も工夫が凝らされており、客席通路にあたる場所を普通の通路並に出入りに使ったり、暗転を効果的に使用して舞台上にいきなり人が現れたように見せたりと、大掛かりな装置やセットがなくてもこれだけ色々なことができるんだなあと感心しきりでした。

役者さんはアンサンブルも含めどの方も身体能力抜群。特に準主役*5の繁貞の殺陣は速さと大きさのあるもので、人間でいる時も見事でしたが、鬼として覚醒してからのそれは更に力を増していて驚くしかなかった。後で確認したら、ハイステで白鳥沢チームのメンバーを演じてた人なのね。道理で。

今回の舞台で主役になっている経若は、作中作では準主役なので、だかいちの主人公が「経若を演じる俳優の、西條高人」だということに合わせてるのかな*6。人間の身でありながら鬼として育てられている関係上、辛いことも多く、複雑な感情が渦巻いているのを抑え目の演技で表されておりました。二幕の衣装もそこはかとなく色っぽくて◎。そして、すごく思ったのが「舞台にいるのは経若を演じている高人」だということ。俳優としての場面は全く出てこないのに、「高人さん」が確かに存在していた。ただ『紅葉鬼』を舞台化するだけでなく、だかいちという作品の一部であるということがちゃんと踏まえられていて、実際に演じている俳優さん(陣内さん)の力量を感じました。

てか繁貞があんなに真っ直ぐでいい奴だなんて思ってなかったよ!作中で繁貞を演じている俳優、綾木はいわゆる当て馬ポジションで、役者としてのセンスはあるものの、裏では結構ゲスい奴なのでね……。とは言え、「初舞台で主演に抜擢された俳優」であることを裏付けるだけの華々しい存在感はちゃんとあった。表に出る時は裏の顔は当然封印してくるだろうし。

あと、「どこかで見たような設定のキャラクター」なんて書いちゃったけどさ、帝を陰で操る陰陽師こと摩爬(するは)、すごく良かった!登場しただけでどことなく不穏な気配を漂わせながら、帝の忠臣かつ陰で実権を握る者として台詞回しや立ち居振る舞いに整然とした美しさがあり、出てくる度にわくわくしてました。派手な出で立ちで血の気の多いオネエ言葉の鬼、すなわち伊賀も嫌いな訳ないし!湾刀の二刀流が力強く豪快で、良いギャップがあった。

それから、怪力少女で経若に憧れる子鬼のおまんが可愛くてね……。カテコの挨拶がこの子だったんですが、まだ9歳という事にも驚きなのに、見事なボケまでかましてくれて恐ろしい子!経若の育ての親で、繁貞の実の母である鬼女の呉葉も、どこかあどけなさを残しつつ美しかったです。

先程もちらっと書いたように「ただ作中作を舞台化しただけではない」ということは、劇場の外でも随所に現れていました。パンフレットの表紙がコミックス作者(桜日梯子さん)の描き下ろしイラストなのって、昨今ではかなり珍しいんじゃないかな*7?表紙をめくった裏側のイラストも思い切り笑ったし。だかいちが割とこういうテイストだからね!普通のパンフレットとしての情報はきちんと押さえつつ、マンガのファンに嬉しいコーナーが表紙以外にもありました。ランダムブロマイドもメイン二人だけとは言え、役としてのそれと、役者、すなわち高人と綾木としてのオフショットの両方が用意されてるし、アクスタなどのグッズが表紙とは別の描き下ろしイラストだったり、劇場ロビーの窓際に、登場人物のイラストがピンで描かれた色紙が全員分飾られていたり。ランブロは3枚購入したら、綾木稽古場ショット、摩爬、経若(足チラ)&繁貞のが来てくれた。わーい。

極めつけはロビーのスタンド花。原作者さんからの他に、高人のお相手*8である東谷准太からのものがしれっと……チュン太、抜かりないな!と、現物を目の当たりにして笑いを堪えられなかった(訳:ありがとうございます)。

何だかんだ言いつつ、こういった形での舞台化もなかなか楽しいものですね。

*1:ガラスの仮面紅天女的な

*2:アニメでは他にもっとあるのかも

*3:原作者さんのTwitterであらすじが公開されてはいる

*4:近いところだと、春に紅葉ならぬ桜の鬼の話を観たばっかりです

*5:原作中の『紅葉鬼』では主人公

*6:書いてて非常にややこしい…

*7:私が知らないだけだったらすみません…

*8:そちら界隈で言うところの左側の人

【観劇記録】6/15 ミュージカル『エリザベート』

 

  • 帝国劇場2019年版の感想です

10代の頃に宝塚版を観劇して以来、ずっと魅せられ続けている作品です。帝劇版は初演と2009年版、2015年版を観ていて、今回で4度目の観劇。この日のキャストは写真の方々でした。

 

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以下、だいたいキャストごとに。

愛希さんの宝塚退団時のエリザはチケットが取れずライブビューイングだったので、やっとリアルで拝見できて感無量。愛希シシィは、逃れることの叶わない場所で悩み苦しみながら、懸命に生きようとした等身大の女性でした。1幕ラスト、真っ白なドレスでフランツの前に現れる場面では、いつもなら美しさと堂々としたたたずまいにため息がこぼれてしまいそうになるんだけど、今回は辛くなってしまった。もちろん美しくはあるんだけれど、その表情は苦渋や諦めを抱えながら必死で矜持を保っているようで、あの登場時の天真爛漫な少女だったシシィはもうどこにもいないんだと思うと悲しかったです。昨年の宝塚版では、というより、今まで見たことのあるどのバージョンでもそんな風に感じたことはなかったので、びっくりした。2幕冒頭の「私が踊るとき」ではトート相手に勝ち誇った表情を見せるんだけれど、続く精神病院慰問では「耐えられず狂いそうになる」と苦しい胸の内を吐露する。そして夫に裏切られて旅に出る頃には笑顔は完全に失われて、ハイネの碑の傍らでやっと安らいだ表情を見せたりと、場面が進むごとに辛さが募るばかり。「キッチュ」で「シシィはものすごいエゴイスト」って歌われてたり、精神病院で自らを皇妃エリザベートだと思い込んでいるヴィンディッシュに対して「跪くのはあなたよ」と窘めるような(観客からするとぎょっとする)台詞があったりするのも、そんな風にならなければ生きていけなかったんだろう、って考えるとすんなりと腑に落ちた。歌は総じて安定していて、危うさはなかったかと。花總さん演じるシシィの高貴さ、気高さが大好きなんですが、愛希さんもまったく異なる魅力のシシィを見せてくれて、これからのご活躍が更に楽しみになりました。

ついに来た!感のあった古川トートは、ポスタービジュアルからもそうなのはわかってたけど実際に舞台に降臨した時の美しさと言ったら……語彙力カモンって感じですよ。天井から降り立ってご登場の時に思ったのは「何て傲慢尊大ナルシストなトート閣下……!」でした。人間なんて下等生物と見下していて、シシィに振られた時も「は? 人間ごときがこの俺を振った?!」と、起こったことが信じられないといったリアクション。で、中盤まではそんな風だったんですが、ルドルフの辺りから変わってきた。「闇が広がる」の後、皇帝への幻想を抱くルドルフをじっと見つめる目は無表情。全てに絶望して死を選ぼうとするルドルフに「死にたいのか」と囁くも勝ち誇ったような色は全くなく、ただそこにある「死」そのもののようでした。それでいて、息子の死を嘆き悲しむシシィの前に現れる時はまた傲慢な顔に戻り、フランツの悪夢に登場した時はそれともまた異なる、圧倒的な力で君臨する黄泉の帝王に。そして、シシィが死を受け入れて旅立つ時には嬉しそうな風ではなく、穏やかな安らぎを与える存在、として静謐ささえ感じる佇まい。場面ごとのこの印象の違いは何なんだろうと考えて、古川トートは「対峙した者の心の在り方によって姿を変える(=その人がイメージする「死」の姿)」トートなのかな、と。宝塚版でも帝劇版でも、トートは特に演じる人によって解釈の異なる役で*1「千年くらい帝王やっていそう」「帝王に就任したばっかり」「割と最近まで人間やってた」「イマジナリーフレンド的」「ドライアイスのような冷たさ」「熱さを感じるが、どこか非現実的でもある」などなど様々なんですが、自分の知っている中でこういうトートは意外と初めてで、こちらも良い意味で意表を突かれました。

成河ルキーニは生理的な不気味さがあった。台詞や態度がおちゃらけていてもなんかこの人怖い、というか、既に人間をやめて人外のものになりつつある(実際「とっくに死んでる」んだけど)ような雰囲気。重要な単語ですっと声の調子を落としたり、あるいは平坦に呟いてみたりと、観客を翻弄して楽しんでいるようでした。2015年の山崎ルキーニにも種類の違う怖さ(裏社会に身を置く人が醸し出すようなそれ)があったので、「なんか怖い」というのは最近の帝劇版のルキーニの傾向なのかな?*2

田代フランツは、終始皇妃への愛にあふれておりました。プロポーズの時から始まって、すれ違いの続く日々の中でも、一夜の過ちを犯してしまったその後も、変わらず妻を愛し続けているのが伝わってきて切なかった。優しく響く歌声が耳に心地よいから更にね……。しかし今回に限ったことではないんだけれど、マダム・ヴォルフの館は王侯貴族も利用する「紳士の社交場」の割に従業員のお姉さんたちの格好がかなりフェティッシュというかそういう意味の女王様っぽいので、あの場所を推薦した重臣のおじ様たち、そしてフランツも結構特殊な嗜好の持ち主なのでは……?

出てきたときにやけにピリピリしてるように感じた木村ルドルフでしたが、闇広の「不安で壊れそう」のくだりで納得。不安とプレッシャーに押しつぶされそうになりながら、精一杯虚勢を張って、手探りで進もうとしている青年でした。「死」に狙われつけこまれたというより、自然と呼び寄せてしまった感あり。彼もまた生きることに必死で、そういうところが母親に似ている。まさに「合わせ鏡」というフレーズがぴったり来る親子でした。

シシィからしたら悪者のゾフィも、(子どもへの体罰云々はよろしくないとは言え)自分の勤めに忠実であろうとしただけで、対話を試みることすら無理なくらい立場は異なっていたし、そもそもの価値観が全く合わなかったんだよなあ……とやるせなくなる。脚本自体はほぼ変わらない作品でも、長い事観ていると自分のとらえ方が変化してくる部分もあるんだよね。最初の頃は舞台全体の美しさやトートの妖しさにばかり目が行っていたけれど*3、段々とシシィの苦しさも身に染みるようになってきて、「夜のボート」での夫婦の姿に涙が出るようになったのは30代になってからだし。

*1:宝塚では髪の色や質感まで違ってて、ウェーブがかった銀髪だけでなく黒髪や金髪、ストレートロングといろいろ。

*2:自分が観た回のみの印象ですが

*3:今ももちろんそこに目は行く